あらたまこころのクリニック「症状別のよくある質問」ページ

公開日: |更新日: うつ病女性のうつ病

女性のうつ病のケースのご紹介

女性のうつ病のケースのご紹介

【目次】
ケース1
ケース2
まとめ

ケース1

  職場で異動があり、これまでよりも忙しい部署で働くことになったAさん。業務量が多く、残業が増えて疲れている中、ちょっとしたミスをして、上司から叱責されてしまい、次第に、落ち込みや不安が強くなっていきました。

Aさんは、夫と2人暮らしで、夫も仕事が忙しく、食事や洗濯はこれまでも基本的にAさんがやっていました。忙しい部署になったといっても、夫よりは早めに帰ることができるので、家事の分担は変わらずAさんが多くを担っていました。「仕事で怒られることなんてよくあることだし、こんなことで落ち込んでいる自分が弱いんだ」「みんな家事と仕事をやっているんだから、自分だけが弱音を吐いてはダメだ」Aさんはそうやって、これまでも自分を奮い立たせて乗り越えてきたのです。

Aさんが、心の整理面接を通してこれまでのことを振り返っているうちに、一見ささいな、ちょっと気になったことが、積もり積もってストレスになっていたことを発見しました。そして、夫と根気強くコミュニケーションをとり、自分の気持ちを伝えたり、相手の考えを聞いたりしました。どうやって伝えたらいいかわからないことは、アサーションのロールプレイで伝え方の練習をしてから、実際に伝えてみるようにしました。はじめは、あまりコミュニケーションに積極的でなかった夫も、Aさんが一生懸命に自分の気持ちを伝えようとしている姿を見て、家事や仕事のことについて真剣に話を聞いてくれるようになりました。

Aさんは以前、仕事や家のことがうまくいかないのは、自分が人間としてだめだからとか、自分の感じ方が変なんだと思っていました。しかし、相手は自分とは考え方や感じ方が違う人であって、そういう人とのコミュニケーションの問題なんだと思えるようになっていきました。コミュニケーションを通して、相手は本当はどう思っていたのか、どうして欲しいと思っているのかということを確認し、また、自分が感じていることや思っていることを伝えることによって、お互いについての理解が深まり、ストレスと感じることが減っていきました。

ケース2

 育児や家事の悩みをきっかけに来院されたBさん。結婚を機に仕事を辞め、出産。その後しばらくしてから、イライラや落ち込みが強くなったようです。

仕事はある専門職で、仲間たちとバリバリ働き、責任のある仕事を任されたりもしていました。そんな中、夫と出会い、1年ほどで結婚が決まり、仕事を辞めることになりました。それから1年ちょっとで、Bさんを取り巻く環境はガラリと変わりました。仕事を辞めてすぐに妊娠し、出産。知らない土地で、ほとんど子どもと2人の生活になりました。協力的な夫ではありましたが、仕事が忙しく、家事や育児は実質ほとんどBさんの役割でした。

そんな中、子どもがなかなか泣き止まなかったり、ちょっとした夫の一言で、自分でも驚くほどイライラしたり、落ち込んだりするようになりました。そんなBさんに対して、冷静に「何を怒ってるの?」なんて言ってくる夫にさらに腹が立ち、言い争いになることが増えていきました。そして、上手くやれない自分にますます腹が立ち、自分を責める悪循環となっていたのです。

 治療

 まず、バタバタと自分の環境が変わって、それについていくのに必死だったことを振り返りました。そして、その変化の中で、実は「自分にとって大事なことを、夫にきちんと伝えられていなかった」ことに気づきました。夫は「話せば分かる」タイプの人だったのですが、お互い忙しい毎日で、知らず知らずのうちに、Bさんは夫に対して「大変なのは見れば分かるでしょう、察してよ」と感じるようになっていました。夫は本当に悪気なく、「なんでイライラしているんだろう」「言ってくれればいいのに」と思っていたのですが、その時の夫婦のコミュニケーションは、お互いを傷つけるようなものになってしまっていたのです。

 Bさんは、夫の気持ちを聞き、自分の気持ちを落ち着いて夫に伝える練習を始めていきました。すると、結婚してから少しずつ見えなくなっていた、「夫の良いところ」にも目が向くようになっていきました。「夫も私も完璧な人間じゃない。だからこそ、お互いに率直に気持ちを伝えあって、理解しようとする努力をやめないことが大切だ」と感じるようになりました。

まとめ

 特に女性のうつ病の場合、その背後には、環境の変化や、それに伴う対人関係の変化が、症状に関連していることがあります。対人関係を整理し、コミュニケーションを改善していくことによって、自分の気持ちが整理され、症状が改善することもあります。
 うつ病は、自分や相手の悪いところに目がいきがちになり、また、「どうせ言ってもダメだろう」「私ばかり大変な思いをしている」と感じて、孤独感も感じやすくなり、ますますコミュニケーションがうまくいかなくなる悪循環に陥ってしまいがちです。この悪循環から一人で抜け出すことは大変ですので、医師やスタッフと一緒に、少しずつ、取り組んでいきましょう。

:::::::::::::::::::

<心の整理面接についての記事はこちら>

心の“整理”面接が役立つのはなぜ??

“整理”上手は治療にプラス!?~整理の仕方をご紹介~

自分に合った治療法を見つけるために~問題を整理しよう~

::::::::::::::::::::

:::::::::::::::::::

<アサーションについての記事はこちら>

アサーショングループのご紹介~自分も相手も大切にするコミュニケーションの方法を学ぶ~

アサーション~自分も相手も大切にするコミュニケーション法~

自分も相手も、大切にするためには?~アサーションの実際~

アサーショングループ療法のご案内

::::::::::::::::::::

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。