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薬に頼り切らない治療は何がいい?

薬に頼り切らない治療は何がいい?

【目次】
精神科・心療内科の治療はどのように進むの?
薬に頼り切らない治療ってなに?
薬に頼り切らない治療がなぜ重要なの?
今回のまとめ

はじめに

うつ病・パニック障害・社会不安障害などの不安障害・不眠症では、まず薬での治療、次に心のメンテナンスをすることが大切です。
あらたまこころのクリニックは「薬に頼り切らない治療」の実現を理想とし、日々診療を行っています。しかし、この文言を目にした患者様の中には「薬に頼り切らないってどういうこと?」「薬は全く飲まないの?」と疑問にもたれるかたもいらっしゃるかもしれません。
そこで、今回はあらたまこころのクリニックが大切にしている「薬に頼り切らない治療」について詳しく解説していきます。

精神科・心療内科の治療はどのように進むの?

最初に精神科・心療内科の治療について簡単に触れたいと思います。
(各医療機関や医師によって治療の流れや選択肢が異なるため、詳しくは来院予定の医療機関へ確認してください。)

大きく分けて、

①薬物療法(お薬を使った治療)

②その他の治療(精神療法など)

に分かれます。

最初に受診した際に、医師と今の状態や困りごとについてお話をしていきます。
その後、医師が判断し、患者様と相談したうえで、お薬を使った治療やその他の治療を併用しながら治療をすすめます(医師の診察の前に、医療スタッフと事前にお話しする医療機関もあります)。

特に治療初期は、お薬を使った治療によって、眠れない・気持ちが沈むなどのつらい症状をやわらげ、日常生活を過ごしやすくしていきます。

“薬に頼り切らない治療”ってなに?

治療初期ではお薬を使った治療により症状の緩和を目指します。つまり、あらたまこころのクリニックで実施している「薬に頼り切らない治療」でもそこは変わりません。薬に頼り切らない治療は、薬を全く使わない治療ではありません

それでは、“薬に頼り切らない治療”とは何か?

上の図をご覧ください。薬に頼り切らない治療の流れをイメージにしたものです。
①「病気・ストレス・環境などの悪影響」が、「自分の対処スキル・周りからのサポートなどの生きていく力」より大きいときに、人のこころは不調に陥ります。

②治療の初期では、そこにお薬の力を借りて、症状を落ち着かせていきます。必要な方には医学的見地から休養を指示することもあります。

③そして、症状が落ち着き、元気が出てきたところで、集団精神療法や個人面接を通して、対処スキルを学んでいきます。同時に、環境(職場や家庭など)との調整を進めてもらい、環境・ストレスからの悪影響も小さくしていきます。

④対処スキルを学び、環境の調整を進めていく中で、ストレスが減り、患者様自身が力をつけていきます。そうしているうちに、病気もよくなり、お薬も減っていきます。

薬に頼り切らない治療とは何か、もうお分かりだと思います。
このようにして、患者様が生きていく力をつけ、同じような苦境に陥りそうになった時に、また、同じようにこころの不調を呈するのではなく、上手に乗り切っていけるようになることを目指す治療です。

“薬に頼り切らない治療”がなぜ重要なの?

お薬をつかった治療のみよりも、お薬を使った治療と心理療法を併用した治療のほうが再発を予防する効果がある実証されているからです。
お薬を使った治療は大切ですが、「お薬が無くなったら、また症状や困りごとが出てくるのではないか」と不安になって、お薬を止められない方もいます。
「お薬なしでは不安」というスタンスでは、患者様はいつまでも症状にとらわれたままで、自信をもって日々の生活を過ごすことができないでしょう。(精神疾患の中には、再発予防のために、継続してお薬を飲む必要があるものもあります。)

かすかな症状の兆候や体の不調に気が付いても、「自分で対処できる」という、自信がつくことで、症状にとらわれず生き生きと暮らせるようになるのです。そうすれば、お薬も最小限で済みます。
薬に頼り切らない治療は、そのような治癒の姿を目指しています。

今回のまとめ

今回は“薬に頼り切らない治療”の概要について、説明しました。“薬に頼り切らない治療”とは、“薬を全く使わない治療”ではありません。“薬に頼り切らない治療”とは、“薬以外の方法で自分の症状や困りごとを克服する/対処する方法を身に着け、最終的に薬が減ったり、無くなったとして独力で乗り越えることを目指す治療”と言えるかもしれません。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。