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公開日: |更新日: 心の整理面接

困りごとを整理して、こころの地図を作ろう

困りごとを整理して、こころの地図を作ろう

目次

自分で自分のこころのケア・メンテナンスができるようになろう

こころの病には特徴がある

「こころの整理面接」は何に役に立つの?

迷路から抜け出すこころの地図を作ろう

まとめ

 

 

自分でこころのケアやメンテナンスができるようになれば、薬などに頼り切らなくても良い

   5人の1人が一生に一度は、うつ病や適応障害、パニック障害、不安障害、不眠症などこころの病気、精神科の病気にかかると言われています。医学的な治療が必要なレベルではなくても普段の暮らしで、悩みを抱える人はもっとたくさんいらっしゃいます。仕事、家事育児、人間関係などで落ちこんだり不安になったりするなどストレスを感じることは多いのではないでしょうか。

 また、こころの病は再発しやすいとも言われますが、自分で自分をケアできるようにしておくと、薬に頼らなくても、再発を防ぐだけでなく、仕事のパフォーマンスも上がり日常の生活がより良いものとなるでしょう

 こころをメンテナンスするための基になるのが、「こころの整理面接」です。今、自分はどんな状態なのか?どんな病気なのか?この先どんな風になっていくのか?どんなことをしたら良くなるのか?などを知る基本となります。これは、「こころの地図」を作っていくことです。地図があれば、道に迷った時には心強いことでしょう。

 

 

こころの病気には特徴がある

 自分はなぜ悩んでいるのか?私たちが悩みをもつには理由があります大切な人とケンカをしてしまった、上司に怒られた、会社に行くのがつらい、思いがけないミスをした・・・など、その理由は様々です。こんな時、こころの中はつらい気持ちでいっぱいになり、潰されそうになります

 

 

困り事の悪循環

 

 私たちはストレスを感じると、どうしても悲観的に考えがちになります。すると視野が狭くなり問題を解決できない状態に、自分を追い込んでしまいますこうした状態がこじれるとうつ病や不眠症、パニック障害をはじめとした不安障害など、こころの病気になることもあります。

 

 

 

 このように、ストレス状態が続くと考えや気分、行動が悪い影響を受け、こころの病を発症・悪化させます。そして今度は、こころの病が、考えや行動を極端にします現実からかけ離れてきます友人からメールの返事がすぐに返ってこなかっただけで、「あの人に嫌われた」「自分はダメな人間だ」と考え、気持ちがつらくなり引きこもることもあります。さらに心の病を悪化させる悪循環になるという性質を持っているのです。

 こうした状態が続くと、自分の力だけでは中々抜け出せなくなります。

 こうした悪循環になったときには、もう一度、健康だったとき、良かったときの状態がどうだったかを振り返ることが必要になります。まず、これまでの状況や悪循環を整理することが必要になるのです。

 

「こころの整理面接」は何に役立つの?

 考え方や気分、行動が悪循環になっている時は、あれこれ考えたりやってみてもうまくいかず、ますます悲しくなったり不安になってしまいます。そうしたときには、ちょっと立ち止まって、自分が直面している問題を考える必要があります。そのために、当院では、治療のなかで、「こころの整理面接」をご案内することがあります。この「こころの整理面接」では、患者さんの今の状態を整理し、これからの治療をよりよく進めていくための、いわば「こころの地図」を作成していきます。

「こころの整理面接」で役立つこと

  • 困りごとの全体像を把握し、悪循環に気づく
  • 自分に合った治療法を見つける
  • 先々、自分のケアが自分でできる

 例えば「気分が落ち込んで、やる気が出ない」「眠れない」といった症状があって受診をされた場合でも、うつ病、社交不安障害、躁うつ病など、さまざまな病気や発達障害の可能性があり、さらに周りの環境や病気の背景も一人ひとりの人によって違います。これはなぜかというと、私たちの症状や悩みごとは、単に1つのきっかけで生じるものではなく、さまざまな要因(例えば、小さい頃からの環境、その人が生まれつきもっている傾向(特性)、その人の考え方のクセ・・・など)が絡み合って出てくるからです。

 

 

 

 

 この全体像が分からないまま治療を進めていくと、治療がなかなかうまくいかなかったり、再発を何度も繰り返したりしてしまうことがあります。せっかく勇気を出して治療に取り組むのに、治療がうまくいかなかったり、再発を繰り返すのはつらいことです。ですので、こころの整理面接では、困りごとの水面下(一見分からないこと)にある患者さんのこれまでの経験なども含めて、まずは全体像を一緒に整理し、治療プランをたてていくための「こころの地図」を作成するのです。いわば「治療の設計図」と言うべき治療計画です。

 

迷路から抜け出す「こころの地図」を作ろう

 うつ病や不安障害をはじめとしたこころの病気になると、多くの患者さんは、自分がどうしてこうなったのか、今自分がどんな状態なのか、どうすればよくなっていくのかということが、よくわからない状態になってしまいます。これは、旅先で地図がなく、どうすればいいかわからなくなっているような状態です。

 しかし、よりよい治療を進めていくためには、「こころの地図」(専門的には、「ケースフォーミュレーション、概念化」といいます)が必要です。患者さんと医師やスタッフが、一緒に地図を見て、一緒に進んでいく必要があるのです。

 では、この「こころの地図」とはいったいどんなもので、どんな風に作っていくのでしょうか?

 

 こころの地図には、以下のような情報が必要になります。

  • 診断名と症状
  • 小さい頃からの体験やその影響
  • 現在の状況や対人関係
  • 体のことや生まれつきの傾向
  • 長所や強み
  • よく浮かんでくる考えや行動のパターン
  • 根底にある考え方の傾向

こういったことをお話いただくことは勇気のいることだと思いますが、「こころの地図」の作成のために、教えていただけると治療に役立ちます。

具体的にどのように「こころの整理面接」を進めていくのかについては、次回のブログでご紹介します。

 

まとめ

 私たちが悩んだり、こころの病気になったりした時、今、自分はどんな状態なのか?どんな病気なのか?この先どんな風になっていくのか?どんなことをしたら良くなるのか?などを知ることは大切です。当院では治療者と一緒にこれらを「こころの整理面接」で整理して、「こころの地図」を作っていきます。

 よりよい治療を進めていくためには、患者さんと医師やスタッフが、一緒に地図を見て、一緒に進んでいくための「こころの地図」が必要です。次回のブログでは、具体的にどのようにこころの地図をつくっていくのか、「こころの整理面接」の進め方についてご紹介します。

 

 

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市からアルコール依存症専門医療機関、日本精神神経学会から専門医のための研修施設などに指定されている。