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2020.12.19 うつ病女性のうつ病新型うつ病

うつ病の薬をいつまで、どれを、どれくらい飲むのが良いでしょうか? 近年の研究を参考に

うつ病の薬をいつまで、どれを、どれくらい飲むのが良いでしょうか? 近年の研究を参考に

【目次】
MANGA研究~どのお薬にするか~
古川らの研究(2019)~どれくらいの量にするか~
治ってから、抗うつ薬はいつまで続けるのか
抗うつ薬はどの重症度に効果があるのか
おわりに

はじめに

 2020年12月5日、名古屋市瑞穂区薬剤師会で、院長加藤が、「あなたなら目の前のうつ病の患者さんに、どのように治療しますか? 世界規模のうつ病研究から学ぶ」というテーマで講演しました。好評だったので、ブログでも紹介していきます。海外の研究と院長加藤も参加し、2019年日本うつ病学会で、最高賞を受賞したうつ病の薬物療法の研究(SUN☺D)から日本人を対象とした研究なども参照しながら、今回も考えていきたいと思います。

 先日の記事では、うつ病治療において、①完全寛解が再発を予防すること、②1~3週間での早期改善が、完全寛解において有効であること、③よって、最初にどのお薬を、どれだけ処方するかが、重要であることをお伝えしました。

 今回は、抗うつ薬のどれを/どれくらい/いつまで飲むのが良いのか?について、近年の研究(MANGA研究:2008、SUN☺D研究:2018、古川教授らの研究:2019) を参照しながら考えていきます。

   今回は、うつ病(大うつ病性障害)の治療が、どんな経過を辿るのか?について、そのことについて、詳しく述べてみようと思います。

MANGA研究 どのお薬にするか

まずは、10種類以上ある抗うつ薬をどれから最初に投与するかについてのヒントとなる、MANGA研究(2009年)を取り上げます。

 上の図をご覧ください。様々なうつ病の薬を、メタアナリシスと言う方法で、許容性(忍容性)と有効性で図表で表したものです。

有効性は、うつ病の症状に有効、許容性(認容性)は、副作用など困る状況だが、患者さんが耐えられるという意味です。副作用が低く患者さんが十分耐えられるなら認容性が高い、副作用が重くて耐えられないなら認容性は低いとなります

許容性(忍容性)は、副作用の程度を表しています。上に行くほど許容性が高く(副作用が少ない)、右に行くほど効果が強いお薬と言えます。この研究からは、レクサプロ(エスシタ)、ミルタザピンレメロンリフレックス)が有効性と忍容性のバランスが取れており、最初の薬として選択しやすいことが分かります。その次のGRISELDA 研究、2018年の研究からは、トリンテリックスボルチオキセチン)もバランスがとれていることが分かりました。

しかし、元の研究の条件が日本とは違っていて、メタアナリシスと言う手法なので、実際の治療場面とは少し違っていることもありますので、あくまで1つの目安です。この通りとはいきません。

SUN☺D研究(2018)、古川らの研究(2019) どれくらいの量が最適なのか?

 次は、SUN☺D研究(2018)を見ていきます。

 下の図をご覧ください。縦軸がうつ症状の重さ、横軸が時間を示しています。

セルトラリンによる薬物療法を受けた患者さんは、時間の経過とともに、症状が軽くなっているのが分かります。

注目してもらいたいのは、線の色です。オレンジの線も、青の線も、同じような軌道を描いているのが分かりますね。

これはどういうことか?

オレンジはセルトラリンを50mg服薬した患者さん、青はセルトラリンを100mg服薬した患者さんです。

セルトラリン50mgでも、セルトラリン100mgでも、効果に変わりがなかったということです

このような研究を参照しながら、いたずらに服薬量を増やさない努力(患者様を薬漬けにしない治療)が必要だと、院長加藤は考えています。

 これは、治療ガイドラインや薬の説明書で常識とされていたことが覆った、とても画期的な発見でした。

次に、投与量による有効性・忍容性(副作用)の変化をみた古川らの研究(2019)を見ていきます。

 これは、SSRIの代表格のフルオキセチン(日本では発売されていないうつ病の薬)の投与量による有効性・忍容性の変化を見たグラフです。

有効性のグラフをご覧ください。有効性は40mg以上投与しても、効果量が上がらないことが分かります。一方で、忍容性(副作用)は順調に上がっていき、20mgと40mgの間には大きな差があることが分かります。

以上のことから、フルオキセチンでは40mgを超える投与に意義が乏しいことが分かります。

 次は、イフェクサー(ベンラファキシン)の投与量による有効性・忍容性の変化を見たグラフです。不安やうつ、意欲の改善に働くとされるです。非定型うつ病、新型うつにもよく使われています。

有効性のグラフをご覧ください。イフェクサーは、37.5mg→75mg→150mg→225mgと用量を増やすほど効果が上がることが分かります。

が、一方で、忍容性のグラフを見ればわかるように、副作用も上昇することが分かります。加えて、黄色の範囲が非常に広く、副作用の出かたに個人差が非常に大きいことが分かります。

以上のことから、イフェクサーは、37.5mg→75mg→150mg→225mgと容量を増やすほど効果は上がるものの、副作用も大きくなり、その副作用の出方は、非常に個人差が大きいという特徴を持っています。

 その人がたまたま、有効性が高くて、認容性が高い体質なら、37.5mg→75mg→150mg→225mgと量を増やせば増やすほど、福作用も少なく、うつ病への効果は高くなります。

 しかし、たまたま体質が、薬を増量しても有効性が上がず許容量が低い体質だとしたら、効果が出ずに副作用ばかり出やすくなるので、増量しない方が良いと言うことになります。37.5mg→75mgくらいにするか、他のうつ病の薬に変えるか、または増強療法にした方が良いかもしれません。あらたまこころのクリニックでは、37.5mg→75mg→112.5mgの範囲内が殆どです。

 次は、ミルタザピン(レメロン、リフレックス)で、パワーのある薬で、睡眠や食欲を改善するので、よく使われます。高齢者のうつ病にもよく使われます。

ミルタザピン(レメロン、リフレックス)の投与量による有効性・忍容性の変化を見たグラフです。日本では添付文書では45mgまで処方するように書かれていますが、有効性は30mgを超えると効果が下がっています。、一方で、忍容性は30mgを超えても上昇し続けることが分かります。

以上のことから、ミルタザピン(リフレックス、レメロン)は30mgを超えて投与する意義が乏しいと言えます。

治ってから、うつ病のうつ薬はいつまで続けるのか

 上の図は海外データになりますが、治ってからも①お薬を続けたグループと②お薬を減らし他グループに分けて、再発リスクを比較した研究です。急性期と同用量を継続すると、1-3年間のうつ病再発は1/3になることが分かりました。4年目/5年目以降は再発リスクに大きな差がないことも分かりました。

よって、データ的には、3年間は同じ量のお薬を続けると良いようです。

ですが、実際には患者様と話し合います。もし、過去に3回以上うつ病になっていて、再発率が90%と予想される人なら服薬を続けるのはマストです。しかし、初発のうつ病で再発率が30%と低いと予想される人なら服薬を継続して1/3になるなら10%です。30%と10%をどう考えるかで選択は変わってくるかもしれません。「服薬治療のメリットをさほど感じない」と言う人や「絶対、再発したくない」と言う人もいらしゃるでしょう。結局は、その人の価値観になってくるかもしれません。一番良いのは、薬だけに頼らず、認知行動療法のような「自分でうつ病をコントロールするスキル」を身につけることです。

うつ病の薬は、どの重症度に効果があるのか

上のグラフは、治療開始時のうつ病の重症度と、お薬を服用したのちの改善度を見るグラフです。

 うつ病の重症度に関係なく、全体的に点数は低下する傾向があり、軽症・中等症・重症とも、うつ病の薬の効果があることが分かります。特に中等症~重症には効果があることが分かります。

 軽症のうつでは、海外の治療ガイドラインでも意見が分かれていますしかし研究レベルで「軽症」といっても、患者自身は、実は希死念慮やつらさを抱えていらっしゃることが多く、やはり、うつ病の薬を使った方が良いと言う研究も出てきました

おわりに

いかがでしたでしょうか。

あらたまこころのクリニックでは、このような研究も取り入れながら、患者さんに合ったお薬を、適正な量で処方することを心がけております。

「薬を最小限にする」と言っても、うつ病の薬の効果の科学的な医学的根拠に基づき効果があり、しかも短期ではなく長期的な視野で薬物療法を計画しないと、うつ病の治療はうまく行きません。その場しのぎの薬の処方では、慢性的な経過をたどるうつ病治療は手強いものとなってしまうでしょう。うつ病がダラダラと続くのはつらいです。

当院の理念である“患者様を薬漬けにしない治療”を目指して、日々、研鑽を続けていきたいと考えております。

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