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2020.05.15 パニック障害

パニック障害で苦手な場所が増えていく  広場恐怖とは?

パニック障害で苦手な場所が増えていく   広場恐怖とは?

目次
パニック障害で苦手な場所が増えていく(全般化) 広場恐怖とは
パニック障害で苦手になりやすい場所や状況

広場恐怖の心理(コントロール不能)

広場恐怖症を克服するには
今回のまとめ

パニック障害で苦手な場所が増えていく 広場恐怖とは

 パニック障害の治療を希望され受診された方の中で多いのは、「電車やバスに乗ることが怖い」という困りごとです。パニック障害は、突然起きるパニック発作だけでなく、このような「静かな」広場恐怖や慢性的な身体症状といった様々な症状が絡み合ってきます。パニック障害の1つの症状である広場恐怖を知って頂くことはとても重要です。

 今回は、広場恐怖回避について詳しく解説していきます。パニック障害で困るのは、パニック発作は何とかSSRIや長時間型の抗不安薬で封じ込めることができますが、広場恐怖、回避と、安全保障行動慢性的な身体的な不調などについては薬の効果が低くく服薬を続けているだけでは「パニック発作は起きなくなったが、まだ漠然と不安は続く」状態が続き、苦手な場所が広がり日常生活や活動が狭くなります。不安が広がる全般化汎化になってくると「自分ではコントロールできない」という思いになり、さらに不安の中に飲み込まれて身動きできなくなることもあります。重度の場合は、「あの怖いパニック発作が起きなければ、後は何とか耐えていける」といった諦めた思いで、日生活の不自由さは、それほど苦痛と意識していないもおられます。それくらいパニック発作は強烈な恐怖で「それさえなければ何とかこれで暮らしていける」と思わせてしまうのでしょうか。ですが、治療法があるので、それでは人生の楽しみも狭まってしまうので、もったいないなあと思います。

 そもそも広場恐怖とは何でしょうか?漢字で「広場」と書くために、広い場所を怖れる病気と思われることがよくあるようです。広場恐怖は、英語でagoraphobia(アゴラフォビア)といいます。「アゴラ(agora)」のもともとの語源はギリシア語で、古代ギリシャでは、城壁で囲まれて人が集まる「市場」という意味だそうです。それが広場と訳されてしまったため、広場恐怖は広い場所を怖れる病気と誤解を受けてしまうようです。空間恐怖と呼ぶこともあります。広いショッピングモールでは「大勢の人に囲まれた」と考え怖い人やエレベーターや自宅のお風呂、トイレなど狭い場所だと「人が助けに来てくれない」と考え鍵がかけられないもいます。物理的には、何も制約はないのに行列に並ぶ、パチンコで当たった時が怖いと言う人もいらっしゃいます。

 広場恐怖は、広い場所を怖れる病気ではなく、逃げられない、発作が起きたときに助けを求められない場所・状況を怖れ、避けることをいいます。

パニック障害で苦手になりやすい場所や状況 回避

 例えば、広場恐怖で多く見られる例としては、知らない大勢の人の中が苦手、地下鉄、バス、飛行機などの乗り物にに乗れない、、高いビルのエレベーターが怖い、高速道路、トンネル、橋の上、渋滞、映画館、ショッピングモール、美容院、歯医者に行けない、人混み、行列に並ぶこと、家に一人でいることが怖いなどがあります。
また、同じ「電車に乗れない」でも「各駅停車は大丈夫だけれども、急行や特急はダメ、トイレの付いていない車両はダメ」、バスのなかでも「市バスは大丈夫だけれども、トイレがついていない高速バスはダメ」というように、人それぞれの恐怖に感じる状況が異なることがあります。このように 広場恐怖のために日常生活で避けること(回避)が多くなり、社会生活が制限され活動範囲も狭くなっていきます。なかには、混んでいる電車が怖いため、会社に出勤のために家を出る時間が、通常の時間よりも1~2時間早く家を出て、混んでいる電車を避ける人もいます。歯医者さんが怖いため虫歯の治療を受けられない、MRI検査が怖いため精密検査ができない、高速道路が怖くて家族で遠出の旅行ができなかったり、地下鉄が怖くて通勤できず休職を余儀なくされた人もいます。。こんな風に生活に支障が出てくると非常につらいですが、自分での力ではコントロールできないという無力感が強くなってしまうのが何より困ります。

広場恐怖の心理(コントロール不能)

 多くの患者さんはパニック発作が起こるかもしれないという状況を予期して不安になります。それはその状況が本当に危険だからというのではありませんそういう状況でパニックが起これば困る、人前で恥ずかしいことになると考えてしまう心理から生じます。飛行機、列車、バス、エレベーター、エスカレーターは、パニック発作 が起こると困る場所と考えられることが多いのは、それらが止まるまでは降りることが出来ない場所 だからです。銀行や店で列を作って待つことも同じ心理です。もしパニック発作が起きたら助けに来てくれる人がいないと考えると怖くなります。夜、1人で家にいること、淋しい道路を一人で運転すること、浜辺や広場で人っ子一人いない場所にいること、携帯電話が繋がらないのが怖いことも同じ心理です。一人で車を運転することや交通渋滞に巻き込まれる状況では、これらの両方の問題があります一人ぼっちで助けてくれる人もいないのに、万が一パニックが起こっても逃げることができないからです。このようにパニック発作が起きる状況をどのように考えるかで苦手や回避する場所が違ってくるのです。

広場恐怖を克服するには

 広場恐怖は、専門的な治療として段階的曝露療法という技法を行うことがあります。 これは、不安で避けていた状況に計画を作り、できる範囲の不安な状況のことに少しずつチャレンジし「不安だけれども大丈夫だ」「自分の力でコントロールできる」という体験を少しずつ積み上げ、コントロール感をとり戻していく治療方法のことです。患者さんの中には、以前は広場恐怖で、外出がほとんどできなかったけれど、薬(SSRI)+認知行動療法などの治療を行って克服し、今は元気に働いている人もいらっしゃいます。安全保障行動のチェックをしながら馴化モデルに基づいて状況曝露、身体感覚曝露を進め行きます。続けていけば効果は期待できます。グループ療法なら難しくはありません。先輩の後を付いていく感じでやっていけば良いのですから。今は、広場恐怖で悩んでいらっしゃる方も、広場恐怖を克服し、また以前のような生活に戻れるといいですね。

今回のまとめ

広場恐怖とは、ある場所や状況が「もしパニック発作が起きたときに逃げられない、助けを求められない」とが恐怖になること、回避とは避けることです。日常生活や社交上で大切な場所や状況もあるので、克服するためには、専門的な治療計画のもと不安で避けていた状況に少しずつ不安に慣らしていくことが大切です。

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<パニック障害についての記事はこちら>

パニック障害のグループ療法のご案内

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パニック障害治療を妨げる3つの誤解について

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監修

加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長/名古屋市立大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医
所属学会 / 日本精神神経学会、日本うつ病学会、日本嗜癖行動学会理事、厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
クリニック/名古屋市からアルコール依存症専門医療機関、日本精神神経学会から専門医のための研修施設などに指定されている。