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公開日: |更新日: パニック障害専門療法

パニック障害の治療

【目次】
認知再構成
不安階層表を作ろう(少しずつチャレンジしよう)
苦手な状況を克服しよう
再発を防ぐために

はじめに

今回はパニック障害の治療の流れをご紹介します。
あらたまこころのクリニックでは、この治療プログラムをパニック障害専門集団認知療法(グループ療法)として実施しています。
興味のある方は、医師にご相談ください。

認知再構成

考え方が不安を引き起こします

 パニック障害の人は、苦手な広場恐怖の状況に対して、「逃げられない」「死んでしまう」など、破局的に考え、不安になってしまいます。例えば、パニック障害のある人は、混雑した映画館に行くと、「パニック発作になって外へ出られなかったらどうしよう!」と考え、不安になってしまいます。一方、パニック障害のない人は、状況は同じにもかかわらず、不安になっていません。パニック障害の人が不安になるのは、状況を破局的に捉えてしまうからなのです。

考え方の幅を広げる

 広場恐怖の状況や身体感覚に対して、破局的に考え不安になったとしても、不安を和らげるような別の考え方が出てくるようになると、少しずつ不安は下がっていきます。このように、考え方の幅を広げていく治療法を、認知再構成と言います。
ただ、別の考え方を出すというのは簡単なことではありません。そもそも、自分がどんなことを不安に感じているのかを整理することも、また大変なことです。
当院では、認知債更生法をグループで行っていきます。一人では大変なことでも、スタッフや同じ悩みを抱える参加メンバーと一緒に、意見を出し合いながら身に着けていきましょう。

不安階層表を作ろう(少しずつ、チャレンジしよう)

 目標をより簡単で小さな段階に分け、少しずつ目標を達成できるようにステップを作っていきましょう。ステップは不安の低いものから高いものまで、段階的に作ります。あなたの不安の程度を0~100(0:全く不安がない、25:不安だが生活の妨げにはならない、50:中等度の不安があるがその場にとどまることができる、75:不安が強くその場にとどまることができない、100:最高の不安)で表し、不安な順番を100点満点の階層でつけてみましょう。以下の例を参考に自分自身の不安階層表を作ってみましょう。

※ステップ分けをするとき、自分にとっての変数を見つけるのがポイントです。何が変われば、あなたの不安は変わりますか?

①誰:誰と一緒か(人と一緒に行うのは最初の段階までにしましょう)
②何:どんな行動をするか
③時間:いつ実行するか
④場所:どこで実行するか
⑤長さ:どれくらいの時間実行するか

苦手な状況を克服しよう

 恐怖・不安で避けていた状況にあえてチャレンジし、恐怖・不安に自分を慣らしていく治療を、状況曝露と言います。苦手なものの中でも、不安の低い課題から始め、徐々により不安の高い課題へと曝露していきます。曝露では、不安が一気に高まった後に、徐々に不安が下がっていくその不安の変化を最後まで体験することが大切です。

段階的曝露療法のステップ

1.曝露課題を決める
できそうな自信が75%の課題に取り組みましょう。75%は、やればできそうだけど簡単ではない課題、あるいは、恐いけど頑張ればなんとかやれそうな課題です。合わせて、どの安全保障行動をやめるか決めておきましょう。

2.曝露課題を実行する。
不安が30%に下がるまで、逃げ出さず不安場面にとどまりましょう。不安は30~90分で自然に減少します。呼吸法や3コラムを使ってもかまいません。不安が30%まで下がったら次の課題に進みましょう。

曝露を効果的に行うために・・・

□一人で毎日できるものにしましょう
毎日継続することで効果が上がります。また、日常生活の中でやりやすいもの、お金がかからないものを選択すると毎日取り組みやすくなります。
□不安な時こそトライ!
不安が出てきた時は、それを乗り越えるチャンスです。不安が強いものほど、長時間、繰り返し曝露しましょう。
□自分を褒めましょう
曝露後は、自分をほめ、自分にご褒美をあげましょう(美味しいケーキを食べる、ちょっとした買い物をするなど)。

曝露療法は、パニック障害の治療に非常に効果がある反面、無理にチャレンジすると、逆に症状が悪化してしまう恐れがあります。曝露に取りくむ際には、専門の治療機関とよく相談しながら進めてください。

再発を防ぐために

身体感覚過敏(これが、パニック障害が完治するかどうかの最も大切なポンイトです)

 パニック障害の方は、動悸やめまい、はきけなどの身体感覚に不安を感じやすいと言われています。不安や緊張を覚えたときや運動をしたときなどに動悸、めまい、はきけなどは正常な反応として起こりますが、パニック障害の方は、これらを実際以上にはるかに危険と考えてしまいます(破局的認知)。身体感覚に対する破局的認知が進むと、身体感覚を恐れるようになり、自分の身体に注意を向けるようになり、その結果、ささいな身体感覚にも敏感に気づくようになります。

身体感覚曝露の練習(これを続けると、徐々に完治に向かいます)

 身体感覚曝露では、パニックのときと同じ身体感覚を意図的に再生することにより、不安が自然に落ち着くのを体験し、身体感覚に不安になっても自分は安全であるということを学びます。また、身体感覚曝露を行うことにより、再発も起こりにくくなります。
ただ、状況曝露と同じように、パニック障害の治療に非常に効果がある反面、無理にチャレンジすると、逆に症状が悪化してしまう恐れがあります。身体感覚曝露に取りくむ際には、パニック障害の専門の治療機関(実際に身体感覚曝露の治療実績のある医師や心理士)とよく相談しながら進めてください。

まとめ

パニック障害の認知行動療法は以下のステップで進みます。

  1. 認知再構成(不安になるときの考え方の癖を知ろう)
  2. 不安階層表(不安な状況を細かく分けよう)
  3. 曝露療法(苦手な状況を克服しよう)
  4. 身体感覚曝露(苦手な身体感覚を知り、不安が自然に下がるのを体験しよう)

あらたまこころのクリニックでは、この治療プログラムを集団認知行動療法(グループ療法)として実施しています。
興味のある方は医師にご相談ください。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市からアルコール依存症専門医療機関、日本精神神経学会から専門医のための研修施設などに指定されている。