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公開日: |更新日: パニック障害

広場恐怖とその対処法。パニック障害で苦手な場所が増えていく方へ。

広場恐怖とその対処法。パニック障害で苦手な場所が増えていく方へ。

【目次】
1.パニック障害で苦手な場所が増えていく(全般化)広場恐怖とは
2.広場恐怖とは?恐怖となる場所は人それぞれ
3.広場恐怖を回避することで起こる日常生活の支障とは
4.広場恐怖の心理(コントロール不能)
5.広場恐怖を克服するには
6.まとめ

パニック障害で苦手な場所が増えていく?広場恐怖とは

パニック障害の治療を希望され受診された方の中で多いのは、「電車やバスに乗ることが怖い」という困りごとです。パニック障害は突然起きる「派手な」パニック発作だけでなく、このような「静かな」広場恐怖や慢性的な身体症状といった様々な症状が絡み合ってでてきます。パニック障害の1つの症状である広場恐怖を知って頂くことはとても重要です。

なぜならパニック障害の症状である目に見えやすいパニック発作はSSRIや長時間型の抗不安薬で何とか封じ込めることができますが、広場恐怖や慢性的な身体的な不調などについては薬の効果が低い傾向にあるのが困りどころだからです。

「薬が効いて発作は治り、日常生活も薬を飲めば何とかやり過ごせる」と自分を納得させながらも漠然と不安は残り、苦手な場所や状況を避けて暮らす・・・。これで何十年と過ごしてこられた方もいらっしゃいます。
服薬を続けているだけでは「パニック発作は起きなくなったが、まだ漠然と不安は続く」状態が続き、苦手な場所が広がり日常生活や活動が狭くなります。不安が広がることが常となってくると「自分ではコントロールできない」という思いになり、さらに不安の中に飲み込まれて身動きできなくなることもあります。

しかし、「不安」というには不思議なもので、本当に不安の渦の中に埋もれているときは「今、自分は不安だ!」とは中々気がつかないのです。多分、脳がデフォルト・モード・ネットワークになっているからでしょう。
「あの怖いパニック発作が起きなければ、後は何とか耐えていける」といった諦めた思いで、日生活を送っている人もおられます。それくらいパニック発作は強烈な恐怖で「それさえなければ何とかこれで暮らしていける」と思わせてしまうのでしょうか。ですが、治療法があるので、人生の楽しみを狭めてしまうのは、もったいないなあと思います。

広場恐怖とは?恐怖となる場所は人それぞれ

そもそも広場恐怖とは何でしょうか?漢字で「広場」と書くために、広い場所を怖れる病気と思われがちですがそれは間違いです。

エレベーターやまつげエステ部屋など「狭い場所」が怖い人もいらっしゃいます。広場恐怖は、英語でagoraphobia(アゴラフォビア)といいます。「アゴラ(agora)」のもともとの語源はギリシア語で、古代ギリシャでは、城壁で囲まれて人が集まる「市場」という意味だそうです。

大勢の人に囲まれて自分の自由にならない場所です。それが広場と訳されてしまったため、広場恐怖は広い場所を怖れる病気と誤解を受けてしまうようです。

空間恐怖と呼ぶこともあり、場所は人それぞれ違います。

<広場恐怖が起こる例>

「公共交通機関の利用」
・バス、列車、船、航空機など

「大勢の人に囲まれた」と考え怖くなる
・満員電車
・広いショッピングモール
・駐車場

「人が助けに来てくれない」と心配して、鍵をかけられない
・エレベーター
・自宅のお風呂、トイレ

このほかにも物理的には、何も制約はないのに「行列に並ぶ」「パチンコで当たった時」が怖いと言う人もいらっしゃいます。他の人からは不思議に思われるかもしれないですが、本人の考えでは、「離れることができない」→「もし、パニック発作が起きたら逃げられない」→恐怖なのです。

広場恐怖は、広い場所を怖れる病気ではなく、逃げられない、発作が起きたときに助けを求められない場所・状況を怖れ、避けることをいいます。

広場恐怖を回避することで起こる日常生活の支障とは

上記であげた以外にも広場恐怖で多く見られる例としては、知らない大勢の人の中が苦手、高いビルのエレベーターが怖い、高速道路、トンネル、橋の上、渋滞、美容院、歯医者に行けない、家に一人でいることが怖い・・・などがあります。

また限定的な条件がつくこともあり、例えば同じ「電車に乗れない」でも「各駅停車は大丈夫だけれども、急行や特急はダメ。トイレの付いていない車両はダメ」、バスのなかでも「市バスは大丈夫だけれども、トイレがついていない高速バスはダメ」ということも。

このように 広場恐怖のために日常生活で避けること(回避)が多くなると、社会生活が制限され活動範囲も狭くなっていきます。

混んでいる電車が怖いため、会社への出勤を通常の時間よりも1~2時間早く家を出る。
歯医者さんが怖いため虫歯の治療を受けられない。
MRI検査が怖いため精密検査ができない、高速道路が怖くて家族で遠出の旅行ができない。
地下鉄が怖くて通勤できず休職を余儀なくされる。

・・・こんな風に生活に支障が出てくると非常につらいですが、何より自分での力ではコントロールできないという無力感が強くなってしまって自信を持って自由に暮らしていけないというのが、困ります。

広場恐怖の心理(コントロール不能)

多くの患者さんはパニック発作が起こるかもしれないという状況を予期して不安になります。それはその状況が本当に危険だからというのではありません。そういう状況でパニックが起これば困る、人前で恥ずかしいことになると考えてしまう心理から生じます。

飛行機、列車、エレベーター等でパニック発作が起こりやすいのは、それらが止まるまでは降りることが出来ない場所 だからです。銀行や店で列を作って待つことも同じ心理です。
もしパニック発作が起きたら助けに来てくれる人がいないと考えると怖くなります。このようにパニック発作が起きる状況をどのように考えるかで苦手や回避する場所が違ってくるのです。

広場恐怖を克服するには

広場恐怖は、専門的な治療として段階的曝露療法という技法を行うことがあります。不安で避けていた状況・場所に計画的に身を置き、できる範囲で不安な状況のことに少しずつチャレンジする療法です。「不安だけれども大丈夫だ」「自分の力でコントロールできる」という体験を少しずつ積み上げ、コントロール感をとり戻していくのです。

―段階的曝露療法のステップ

1.曝露課題を決める

できそうな自信が75%の課題に取り組みましょう。75%は、やればできそうだけど簡単ではない課題、あるいは、恐いけど頑張ればなんとかやれそうな課題です。合わせて、どの安全保障行動(座り込む、退出するなどの回避行動)をやめるか決めておきましょう。

2.曝露課題を実行する。

不安が30%に下がるまで、逃げ出さず不安場面にとどまりましょう。不安は10分程度、長くても30~90分で自然に下がります。不安が30%まで下がったら次の課題に進みましょう。

3,苦手な場所や状況に留まり、不安が下がってくるのを体験する。

こんなことを書き出すと、今、まさにパニック障害で困っている方は「とても、そんな怖いことはできない」と思われるかもしれませんが、パニック障害グループでは、大抵の方はできるようになります。水泳を習い始めの人が、水泳教室で他の人が泳いでいるのを見て「自分だけでない」「人の体は水に浮くんだ」「あんなふうにすれば、できるんだ」と気づくことが多いのと似ています。

―曝露を効果的に行うために・・・

□一人で毎日できるものにしましょう

毎日継続することで効果が上がります。また、日常生活の中でやりやすいもの、お金がかからないものを選択すると取り組みやすくなります。

□不安な時こそトライ!

不安が出てきた時は、それを乗り越えるチャンスです。不安が強いものほど、長時間、繰り返し曝露しましょう。

□自分を褒めましょう

曝露後は、自分をほめ、自分にご褒美をあげましょう(美味しいケーキを食べる、ちょっとした買い物をするなど)。

―曝露療法は専門の治療機関と相談しながら行う

曝露療法は、パニック障害の治療に非常に効果がある反面、無理にチャレンジすると、逆に症状が悪化してしまう恐れがあります。曝露に取りくむ際には、専門の治療機関とよく相談しながら進めてください。

当院(あらたまこころのクリニック)でも治療理念の「薬に頼り切らない」をもとに曝露療法に積極的に取り組んでいます。

患者さんの中には、以前は広場恐怖で、外出がほとんどできなかったけれど、薬(SSRI)+認知行動療法などの治療を行って克服し、今は元気に働いている人もいらっしゃいます。

安全保障行動のチェックをしながら馴化モデルに基づいて状況曝露、身体感覚曝露を進め行きます。続けていけば効果は期待できます。グループ療法なら難しくはありません。先輩の後を付いていく感じでやっていけば良いのですから。

今は、広場恐怖で悩んでいらっしゃる方も、広場恐怖を克服し、また以前のような生活に戻れるよう一緒に取り組みましょう。

今回のまとめ

広場恐怖とは、「もしパニック発作が起きたときに逃げられない、助けを求められない」という考えからある場所や状況にて強い恐怖を感じることです。

それが日常生活や社交上で大切な場所や状況ということもあります。克服するためには、不安で避けていた状況に少しずつ慣らしていくことが大切です。

克服のための曝露療法は専門的な治療計画が必須です。あらたまこころのクリニックでも取り組んでいる治療ですので、お困りのかたはぜひご相談ください。

 

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。