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2020.04.27 パニック障害

パニック障害が治るとはどういうこと? 前編

パニック障害が治るとはどういうこと? 前編

目次
パニック障害の症状のおさらい
「パニック発作」がなくなったら治った?
まとめ

はじめに

どのような状態になったらパニック障害が完治したといえるのでしょうか?当院の治療グループでもよく話題になる、重要かつ難しいテーマです。
「最近、全く症状は出ていません。だからもう大丈夫だと思います」と安心される方がいらっしゃる一方で、発作が起こり、「悪化してしまった!」と不安になられる方もいらっしゃいます。

今回は、パニック障害が治るとは、ということについて、解説していきたいと思います。

パニック障害5つの症状

パニック障害には、大きく分けて5つの症状があります。①パニック発作、②予期不安、③広場恐怖、④うつ症状、⑤慢性的な体の不調です。

①パニック発作

パニック発作とは、あるとき突然、激しい不安・恐怖感とともに、心臓がドキドキ、過呼吸、発汗、震え、呼吸困難、胸の圧迫感、吐き気、めまい、ふらつき、手足のしびれなどの身体症状が起こる症状のことをいいます。パニック発作は突然に起こり、10分以内にピーク達して、通常、20~30分くらいで治まります。

②予期不安

パニック発作を繰り返し起こすと、多くの場合、「またパニック発作が起きるのではないか」「パニック発作のせいでコントロールを失ってしまうのではないか」などと不安になります。これを、予期不安といいます。

③広場恐怖

広場恐怖とは、広い場所が怖いということではなく、「パニック発作と関連がある」「もしここでパニック発作が起こると、すぐに逃げ出せない」と思える場所や状況が怖くなり、避けるようになることです。パニック障害の全ての方に広場恐怖があるわけではなく、広場恐怖を伴わない方もいらっしゃいます。

④うつ症状

パニック障害の方の中には、抑うつ状態やうつ病が合併する方もいらっしゃいます。これは、広場恐怖により、生活や行動に制限が生じ、「自分のせいで家族と旅行ができない」「出張を断らなければならなくなり、会社に迷惑をかけた」など、自責し落ち込むことから起こるもので、本来のうつ病とは違います。パニックの症状が改善するにつれて、抑うつ状態も改善していきます。

⑤慢性的な体の不調

一度パニック発作を経験すると、その強烈な体験から、発作に近い身体感覚(動悸、めまい、吐き気、のどが詰まる、息が苦しいなど)を恐れるようになります。通常は見逃されるような小さな感覚にも敏感になり、運動などを避けるようになります。これを身体感覚過敏といいます。身体感覚過敏はパニック発作が起きやすくなる土壌でもありますが、慢性的な体の不調の原因になることもあります。

脈が飛ぶ、不整脈、心臓がドキドキ、動悸が続く、息ができない、息苦しい、胸が痛くなる、吐き気、のどが詰まる、肩こり、頭痛、お腹の感じが変、体がふわふわする、ボーとするなどの、ちょっとした体の不調を無視することができなくなり、不安が高まり、身体症状が悪化する悪循環に陥ります。

一般的には自律神経失調症、身体表現性障害、心身症、過敏性腸症候群と言う病名がつくこともあります。

「パニック発作」がなくなったら治った?

発作はなくならない

多くの方は、パニック発作が減っていくことで、「回復してきた」「治った」と感じるのではないでしょうか。あれだけ自分を苦しめていた発作が減ったり起こらなくなったりするのですから、そう考えるのは自然なことだと思います。

しかし、それでは十分ではないと私たちは考えています。

まず、パニック発作自体は、決して珍しいものではなく、健康な人でも約30%は経験すると言われています。発作自体は、自然な自律神経の反応ですから、いつ何時も誰に対しても起こりうるのです。

頓服薬が結果として不安を高める

ベンゾジアゼピン系抗不安薬を服用することで発作は減少します。正しく使えば、とても効果がありますが、パニック障害の治療では問題になります。

その理由は2つあります。

①離脱症状

1つは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の特徴です。飲み心地(効果が出る速さ)と持続時間と離脱症状で依存性になりやすいかどうかは決まります。

このように、服用したときは,たちどころに効いて不安はなくなりますが、時間が経てば,切れてきて離脱症状が出てきます。離脱症状は、軽い不安や軽いパニック発作が出ているような状態です。つまり、頓服を飲んだ直後は、安心しますが,時間が経つと不安が出てくるということです。大事なことは、この不安は、薬が切れた薬理作用で不安になるのであってパニック障害の病気が悪化したのではないと言うことです。しかし、パニック障害の人は「病気が治っていない,悪化した」と思って、ますます頓服の薬に頼ってしまいます。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は一時的に薬にしてくれる「魔法の薬」です。しかし、デパス、エチゾラム,アルプラゾラム、ソラナックスなどは、
①急速に効果が表れ、持続時間が短いので切れてくるのが速いため→
②離脱症状がおこり→
③その離脱症状を和らげるためにまた薬を飲み…
となって、手放せなくことが多いのです。
(その悪循環が続いて、うつ病などを発症することもあります。)

さらに、服薬を続けていくと、薬の魔法も薄らいできて、何回も量も多く服用しないと、不安は和らぎません。結局,不安に耐える力は弱くなって、パニック障害に悩むことになります。

(デパス、エチゾラム,アルプラゾラム、ソラナックスなどの短時間型高力値ベンゾジアゼピン系抗不安薬)

上のグラフは、頓服薬で使われる短時間作用型の抗不安薬の時間に沿った効果を表した図です。作用時間が短いため、一気に不安が低減した後に、離脱症状が起っているのがわかります。

(長時間型高力値ベンゾジアゼピン系抗不安薬)

一方、こちらの図は長時間作用型の抗不安薬のグラフです。効果が半減するまでの時間が長いため、定期的に服用すれば、短時間作用型のような離脱症状が現れないことがわかります。

では、頓服薬による依存が形成されてしまった場合はどうすればよいのでしょうか?
その答えが上の図になります。短時間作用型と長時間作用型を一緒に使い、離脱症状が現れないように様子を見ながら、短時間作用型のほうを先に減らしていき、
短時間作用型の服薬を中止し、今度は長時間作用型を徐々に減らしていきます。
併用置換といって、離脱症状を最小限に抑えて、減薬していく方法です。

②頓服薬に頼ると、自己効力感が育たず、不安はなくならない

2つめの理由は、学習です。

「薬を飲んだら楽になる」を繰り返すと、「飲まなかったら怖いことになる」「自分の力ではダメだ」と脳が学習してしまいます。
その結果、①怖い場所や状況がますます怖くなり避ける。②どうしても避けられないときには頓服を使う。といった、スタイルが定着します。

上の数式を見てください、不安は自己効力感が高まるほど小さくなることがわかります。上記のようなスタイルを続けると、いつまでも、自分の力で乗り越える経験が得られず(自己効力感)、不安は小さくなりません。その結果、パニック障害は続いてしまうことはお分かりですね。

これが最も需要です。パニック障害などの不安障害は,「学習」のエラーなので,頓服を飲むだけでは、「学習」が修正されず、いつまでも治療は終了しないのです。

まとめ

前編では、パニック発作の5つの症状(①パニック発作②予期不安③広場恐怖④うつ症状⑤慢性的な体の不調)についてお伝えしました。
また、“お薬を使って発作を抑えること”と“治ること”が一緒ではなく、むしろ、離脱症状や自己効力感の低下から、不安が小さくならず、パニック障害が続いてしまうことをお伝えしました。
それでは何をもって、パニック障害が治ったといえるのか?
後編では、そのことについ
てお伝えします。