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2021.04.27 働く人の発達障害

ADHDか自閉スペクトラム症(ASD)か迷うことはありませんか

ADHDか自閉スペクトラム症(ASD)か迷うことはありませんか

【目次】
自閉スペクトラム症とADHDの判別は難しい
実際の症状や困り事から見分ける
そもそも合併する
ADHDと自閉スペクトラム症の併存が起こると→困り事が強まる
背景にある社会性の障害に注目して見分ける
おわりに

はじめに

 インタネーット上のチェックリストで、「自分は自閉スペクトラム障害じゃないか?」「ADHDじゃないか?」と思われた方からの相談を受けることがあります。こういったチェックリストは注意が必要です。ひょっとしたら、実は別の疾患や困りごとだったり、他の疾患が合併、一緒に隠れていたりするかもしれません。重ね着症候群という見方もあります。今回は、ADHDと自閉スペクトラム症の合併の際の困りごとに役立てばと思い、その見分け方などについてお伝えします。

 精神疾患の診断基準がDSM-ⅣからDSM-5になりました。

そこでの大きな変化の一つとして、

自閉スペクトラム症とADHDの併存診断を認める

 というものがあります。今までは、両方の症状が見られてもADHDかASD(自閉スペクトラム症)か、どっちか1つの診断名しか付けられなかったので、とても画期的なことです。アスペルガー症候群は、自閉スペクトラム症の中に含まれました。診断書などの書類手続きの更新時に戸惑われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

なぜそのように変わったのでしょうか、

  1. 実際に自閉スペクトラム症とADHDが合併することが非常に多いため、
  2. ADHDに合併するASDが見過ごされることが多かったため、

といった理由があります。

 実際、ADHDに自閉スペクトラム症の併存が疑われる場合は、特に自閉スペクトラム症の特徴を踏まえて、対応の方針を考える必要があり、この変更は治療現場の要請に即したものと言えるでしょう。

しかし、ADHDと自閉スペクトラム症を見分けること、ADHDに隠れている自閉スペクトラム症を見抜くことは、時として難しくなることもあります。

 

自閉スペクトラム症とADHDの判別は難しいこともある

自閉スペクトラム症? ADHD?

自閉スペクトラム症の診断基準を満たす行動の背景にADHDが、

ADHDの診断基準を満たす行動の背景に自閉スペクトラム症がある場合があり、

注意が必要です。

例:しばしばしゃべりすぎる(ADHD)

  • ADHD→多動性/衝動性(行動の抑制が効かない)
  • 自閉スペクトラム症→限局された興味関心(好きな事の知識ならいくらでも話すことができる)
  • 二次障害→双極性障害(躁状態になっている)の可能性も…。

社会上の問題がよく似ている

 社会生活上で直面する問題も実はよく似ています。が、その由来が違うのです。一見ADHDと思われる困り事にも、自閉スペクトラム症の症状でも説明がついてしまうものがありますし、その逆もあります。いくつか例を挙げて考えてみます。

例①:「コミュニケーションが上手くいかない」と訴えるAさん

コミュニケーションと聞いて安易に自閉スペクトラム症を疑ってはいけないケースです。コミュニケーションとは何で、どんな時に、どのように上手くいかないかをしっかりと聞いていく必要があります。

  • 言われたことを忘れたり、つい余計な事を言ってしまう結果のために会話が上手く成立しないのであればADHD、
  • 考え方や物の捉え方が独特なために齟齬が生じ、周囲に理解されないのであれば自閉スペクトラム症でしょう。
例②:会議に参加し議事録をまとめるように依頼されたBさん。

後で上司が議事録を確認すると、大切な情報がすっぽり抜け落ちていて、会議の話の流れが上手く負えない文章になっていました。この場合も、安易にADHDを疑ってはいけません。

  • 集中力が途切れて、不意に会話の内容が抜けてしまうのであれば、ADHDの不注意ですが、
  • 全体の流れをつかめない。何が重要な話かどうかの判別がつかない。会議室のクーラーの音が参加者の声と同じくらいの大きさで聞こえてきて音が混じる。などが理由であれば自閉スペクトラム症でしょう。
例③:授業中につい思い付きで発言してしまうC君

これも、ADHDと思ってしまいがちですが、衝動性or場面理解で見分ける必要があります。

  • 思いついたら、考えるより先に口が動いてしまうのであればADHD。
  • 発言しても大丈夫な状況かどうかの判断ができないのであれば自閉スペクトラム症でしょう。

これらの例からわかる事は、同じ言動でも自閉スペクトラム症を背景とする可能性とADHDを背景とする場合、両方が考えらえるということです。

ADHD由来か自閉スペクトラム症由来かは薬物療法の選択にも関係するため、非常に重要なポイントです。

実際の症状や困り事から見分ける

実際の困り事をいくつか挙げながら、同じ困り事にも、自閉スペクトラム症が背景としてある場合と、ADHDが背景としてある場合があることを示していきます。

毎回忘れる、毎日見ていても気付かない

ADHD→不注意

自閉スペクトラム症→重要なものを見分ける能力が低いことがある

話が飛ぶ

ADHD→一足飛びに説明・せっかちなため、結論に飛躍

自閉スペクトラム症→相手も同じことを知っているという前提で話してしまう

なれなれしい

ADHD→人懐っこさ・あどけなさ

自閉スペクトラム症→人との距離感が上手くつかめず、初対面で近づきすぎたり、距離を置きすぎたりする

懲りない

ADHD→目の前の楽しさに飛びついてしまう。

自閉スペクトラム症→改める社会的必要性を感じていない。

そもそも合併する

ADHDの症状が強い人では、自閉スペクトラム症の傾向も強いという研究があります(Reiersen ey al.2007)。

知的障害を伴わない自閉スペクトラム症の27%にADHDが併存し、自閉スペクトラム症傾向が強いほど併存率が高いという研究もあります(十一、義村、先濱)。

つまり、ASDをみればADHDの可能性を、ADHDをみればASDの可能性を疑った方が良いのです。

ADHDと自閉スペクトラム症の併存が起こると→困り事が強まる

 例えば、ADHDの特徴の一つに多動性・衝動性というものがあります。落ち着きがなく常に動き回っている・急にしゃべり出す・待てない・他人のやっていることに唐突に介入する、などと言った行動として現れます。

ここに自閉スペクトラム症の“場面の状況が理解できない・場に合わない言動をしてしまう”と言った特徴が重なってしまうのです。その結果、「こんなことしたらまずいのではないか?」「こんな事したら怒られるのではないか?」と言ったストッパーが働きにくいので、多動性・衝動性が目立ちやすくなるのです。図式にすると…。

待てない(ADHD)+“今は待つ場面”と言うことが分からない(自閉スペクトラム症)=もっと待てない…

 見分けるのも難しい上に、併存すればお互いの特性の相乗効果で困り事を強めます。

それでは、医師はどのような視点で発達障害の困りごとを見ていけばいいのでしょうか?

背景にある社会性の障害に注目して見分ける

 そのポイントは社会性(対人相互性)です。

 自閉スペクトラム症の場合は「相手がどう思っているか?」「自分の行動が社会的にどうか?」などを見分ける視点が弱いことが分かります。このような“社会性(対人相互性)”に注目していきながら、語りを聞いていくことが、自閉スペクトラム症を考える際に必要になります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

インターネット上には、様々なチェックリストが溢れており、「自分は自閉スペクトラム症じゃないか?」「ADHDじゃないか?」と思われる方もいらっしゃると思います。

が、チェックリストの文言に当てはまるだけでは、自閉スペクトラム症なのか?ADHDなのか?は、はっきりしない場合もあることをお伝えしました。

加えて、うつ病の重度の時、強迫性障害・あがり症(社交不安障害)・愛着障害などの精神疾患も一見、発達障害に見えるような行動を示すことがあります。

自分がチェックリストに当てはまると感じた場合は、一度医療機関などの専門家に相談してみることをおすすめいたします。

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監修

加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長/名古屋市立大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医
所属学会 / 日本精神神経学会、日本うつ病学会、日本嗜癖行動学会理事、厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
クリニック/名古屋市からアルコール依存症専門医療機関、日本精神神経学会から専門医のための研修施設などに指定されている。