パニック障害の診断方法とは?チェックリストを活用した診断テストをご紹介
100人に1〜2人が経験しているというパニック障害。息切れやめまいなど、体に異常がないのに突然起こったら、それはパニック障害かもしれません。
気になる症状がある方は、パニック障害診断チェックシートでセルフチェックしてみましょう。
パニック障害とは
パニック障害とは、何の前ぶれもなく、突然、呼吸困難や動悸、吐き気などの発作を引き起こす病気です。内科を受診しても体に異常はみられず、発作の不安から外出が制限されるなど日常生活にも支障が出てきます。強いストレスや、肉体的な疲労が発作の引き金となるケースが多いですが、原因はまだはっきりとは分かっていません。
パニック発作を繰り返すと「また発作が起こるのではないか」と不安や恐怖が大きくなり、さらに発作を誘発するという悪循環が起こります。人によっては、発作を引き起こした関連のある場所を避けるようになり、一人で外出できなくなるなどの症状があらわれます。パニック障害の症状は人によってさまざまです。具体的には、以下のような症状がある場合があります。
パニック障害の診断基準
呼吸困難や動悸、吐き気などのパニック発作が起きただけではパニック障害と診断されません。DSM-5というアメリカ精神医学会の診断基準では、13の症状のうち、4つ以上あらわれるとパニック発作としています。
さらに、これらの発作が繰り返し起こり、「また発作が起こるのではないか」という不安や、発作に関連する行動を避けるようなことが1ヶ月以上続くと、パニック障害と診断されます。
パニック障害診断チェックシート
パニック障害は、以下のチェックシートで重症度を診断することができます。7つの質問に対して、それぞれ該当する回答の点数を合計しましょう。
診断内容(チェック項目)
<1>1週間以内に、突然はじまり10分以内にピークに達する以下の症状を何度経験しましたか。4つ以上をパニック発作とし、3つ以下を症状限定発作とします。
- 動悸・心悸亢進
- 発汗
- 震え・身震い
- 息苦しさ
- 窒息感
- 胸痛・胸部の不快感
- 吐き気
- めまい・気が遠くなる感じ
- 体がしびれたり、ジンジンするといった異常感覚
- 熱感・冷感
- コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
- 死ぬことに対する恐怖
0点:全くなし
1点:パニック発作はなく、症状限定発作が1日1回以下である
2点:パニック発作は1~2回起き、または症状限定発作が1日に数回起こる
3点:パニック発作が3回以上起こったが、平均して1日1回以下である
4点:パニック発作が週の半分以上の日で、1日1回以上起こる
<2>この1週間で、パニック発作や症状限定発作を起こしたときに、不快感や苦痛はどの程度のものでしたか?
0点:発作はない、もしくは、苦痛ではない
1点:軽度の苦痛(さほど感じない)
2点:中等度の苦痛(集中や活動を続けられる程度)
3点:重度の苦痛(集中力がなくなり活動が続けられないが、その状況にとどまることは可能)
4点:極度の苦痛(活動を中止せざるを得ず、その状況にとどまれないほどの苦痛)
<3>この 1週間に、いつパニック発作が起こるだろうかという心配や、次にパニック発作が起こったら身体的・精神的にどうなるだろうかという恐れについて、パニック発作が起きていない時にどの程度不安に感じましたか?
0点:全くない
1点:ときどきある
2点:しばしば感じるが、不安は手に負える程度
3点:もっぱら不安に感じ、集中力が続かない
4点:ほぼ常に不安に感じ、何も手につかなくなる
<4>この 1 週間、パニック発作が起こることが心配で、恐れたり避けたりした場所や状況はありますか?(例:バス、電車、トンネル、ショッピングセンター、映画館、混雑した場所など)
0点:全くなし
1点:軽度の恐怖(ときどき怖くなったり避けたりするが、そのために生活習慣を変えることは全くないか、ほとんどない)
2点:中等度の恐怖(はっきりとした恐怖や回避があるが、コントロールは可能。生活習慣に多少の変化がある)
3点:重度(恐怖症に対応するための重度の回避がある。生活習慣をかなり変更することが必要で、通常の活動が困難)
4点:極度(全般的に機能を損なうような恐怖や回避がある。生活習慣の大きな変更を必要とし、重要な活動ができなくなる)
<5>この1週間に、パニック発作のときに似た不快な身体感覚が生じるかもしれないと思い、回避したり止めたいと思う活動がありましたか?
0点:不快な身体感覚のために避ける状況や活動はない
1点:軽度(身体感覚を引き起こすような不快な活動や状況に対して、恐怖や回避がときどきみられるが、普段はその状況に直面し、苦痛なく耐えることができる。そのために生活習慣の変更はほとんどない。
2点:中等度(はっきりした回避があるが、コントロール可能が可能。生活習慣への影響は明らかであるが、限定されているため全般的な機能に障害はない)
3点:重度(広範囲にわたる回避がある。生活習慣にかなりの変化があるか、あるいは機能障害がある)
4点:極度(重症で広範囲な回避があり、全般的に機能障害がある。広範囲にわたる生活習慣の変更を必要とするため、重要な仕事や活動を行うことができない)
<6>この1週間に、次の症状(パニック発作・症状限定発作・発作に関する心配・発作が原因となった状況や活動に対する恐怖)は、仕事や家庭での役割にどの程度、支障をきたしましたか?
0点:全くなし
1点:わずかな支障
2点:繰り返し支障を引き起こしているが、するべきことはなんとか出来た
3点:かなりの支障により他の人にも気づかれるほど。出来なかった重要な事柄が多数ある。
4点:症状のために何も出来なかった
<7>この1週間に、パニック発作、症状限定発作、発作に対する心配、発作が原因となった状況や活動に対する恐怖は、社会生活(交友関係)にどの程度支障をきたしましたか?
0点:全くなし
1点:社会的活動はすこし支障を受けたが、社会機能そのものはまだ十分であると感じている
2点:社会的活動ははっきりとした支障を受けたが、努力してほとんどのことは出来ている
3点:社会的活動にかなりの障害を受け、人と接することが困難だったり出来ない社会的活動が数多くある
4点:症状のために、ほとんどなにも社会的活動が出来なくなる
診断結果
それぞれ7つの質問の点数を合算することで、パニック障害なのかそうでは無いのかが分かります。具体的には以下の点数を参考に自分の点数の合計点を出してみましょう。
- 合計点が5点未満:ごく軽度のパニック障害
- 合計点が5点~9点:軽度から中等度パニック障害
- 合計点が10点~14点:中等度のパニック障害
- 合計点が15点以上:重度のパニック障害
まとめ
パニック障害は、発作を繰り返すことで重症化していく病気です。自力で治すことは難しいため、パニック障害診断チェックシートで状態を確認し、軽度であっても気になる症状がある場合は、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。
早期に治療すれば、パニック障害は治る病気です。発作の不安を抱えながら日常生活を送ることはとても辛いことです。「このくらいの症状だからたいしたことない」と抱えこまず、ぜひ、病院でご相談ください。
関連記事:パニック障害になりやすい人の特徴とは?性格傾向や年代、性別での傾向までご紹介
関連記事:パニック障害を治したいと思ったら最初に読んで下さい。治療法や治し方から治療プログラムの流れまで
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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