あらたまこころのクリニック「症状別のよくある質問」ページ

公開日: |更新日: パニック障害

パニック障害の症状とは?パニック障害のパニック発作や予期不安、広場恐怖について解説

パニック障害の症状とは?パニック障害のパニック発作や予期不安、広場恐怖について解説

  • 「満員電車で突然心臓がドキドキし、呼吸が苦しくなった」
  • 「人混みでめまいや立ちくらみがし、冷や汗が出た」
  • 「エレベーターで過呼吸になった」

このような症状に繰り返し悩まされているとしたら、それはパニック障害かもしれません。パニック障害は決してめずらしい病気ではなく、適切な治療をすることで改善することができます。まずはパニック障害の特徴を知り、正しい対処法を見つけていきましょう。今回はパニック障害の症状について触れていきます。

パニック障害とはどんな病気?

パニック障害とは、とくに体の病気がないのに、突然、動悸や発汗、呼吸困難、胸の圧迫感、吐き気、めまいなどの発作を引き起こし、発作への不安から外出が制限されるなど、日常生活に支障がでる病気です。パニック障害の原因は、まだ明確には分かっていませんが、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが関係していると言われています。

多くの場合、強いストレスが発症の引き金となっており、もともと不安や恐怖心が強い人や、真面目で完璧主義な人、人間関係のストレスを感じている人などが、パニック障害になりやすい傾向にあります。心理的なストレスだけでなく、疲労や睡眠不足など、肉体的な疲労といった身体的なストレスも関係しています

。一生のうちパニック障害を経験する人は、100人のうち1~3人といわれており、めずらしい病気ではありません。パニック障害になりやすい人については「パニック障害になりやすい人の特徴とは?」の記事で解説しているので合わせて読んでみてください。

パニック障害の症状とは

パニック障害は、以下の3つの症状があらわれます。

  • パニック発作
  • 予期不安
  • 広場恐怖

パニック障害はパニック発作からはじまり、再び起こることへの不安や恐怖がさらなる不安をよび、発作を誘発するという悪循環が起こります。パニック障害には、広場恐怖を伴う場合と伴わない場合があり、人によって段階もさまざまです。

それぞれ解説していきます。

パニック発作

パニック発作は、次のような症状が予期せず突然あらわれます。

身体面の症状
  • 心臓がドキドキする
  • 汗が出る
  • 手足や全身に震えが出る
  • 息がつまり、呼吸が速くなる
  • 窒息するような感じがする
  • 胸に痛みや不快感がある
  • 吐き気や腹部の不快感がある
  • めまいやふらつく感じがする
  • 感覚が麻痺する
  • 冷えたり、のぼせたりする
精神面の症状
  • 自分が自分でない感覚に襲われる
  • 発狂するのではないかと恐れる
  • 死ぬのではないかと恐れる

あまりに激しい症状が何度も繰り返し起こるため、「このまま死んでしまうのではないか」という強い不安や恐怖に襲われますが、パニック発作で死ぬことはありません。10 分以内をピークに、発作は徐々に収まっていきます。心筋梗塞などの症状に似ていますが、パニック発作の場合、病院で身体的な検査をしても異常は見つかりません。しかし、発作が繰り返し起こります。

予期不安

発作を繰り返すと、「また発作が起きるのではないか」「発作のせいでコントロールを失ってしまうのではないか」などと不安が強くなっていきます。パニック発作は不快で死を連想させる怖い体験となるため、またあの発作が起こるのではないかという不安を常に感じるようになります。これが予期不安です。

広場恐怖

パニック発作を繰り返すうちに、以前パニック発作を起こした関連のある場所や、パニック発作が起こると困る状況を恐れ、避けるようになります。そして、地下鉄やバスなどの逃げられない場所や、人に助けを求められない状況など、発作に対処できないと感じる場所や状況が、苦手になっていくのが広場恐怖です。

こうした症状により、外出などできることに制限がうまれ、日常生活に支障が出てきます。

パニック障害の症状例とその治療例

ここからはあらたまこころのクリニックに実際にご来院いただいた方の症状例と治療例についてご紹介していきます。

40代女性のご相談事例

40代の日本人女性

20年前、高速道路の運転中、めまい、動悸などのパニック発作が初めて起きた。以降、仕事前にも動悸が起きるようになった。精神科に通院し、薬(頓服)を飲むようになり、頓服をのむと、パニック発作がおきないため、症状としては落ち着いていったが、頓服を手放せなくなった。

次第に、一人の外出の際にも、「パニック発作が起きてしまうのではないか」と不安になり、頓服をのむようになった。一人の外出も難しくなっていった。そのため、薬以外での治療をしてパニック障害を治していきたいとのことでご来院。

治療の経過

薬物療法をつづけながら、グループ療法に参加。まずは、パニック発作への対処方法である呼吸法を習得。パニック発作が起こったとしても、呼吸法を行えば次第に収まっていくことを体験。=パニック発作は、正常な体の反応であり、危険なものではないことを体験。

対処方法を学んでもらった上で(パニック発作が起こっても大丈夫、呼吸法で対処できる)、その後、頓服を飲まなくても、行くことができる程度の不安な場所から、段階的曝露療法を行っていった

仕事前に飲まなくても大丈夫なことを経験した。以降、薬をのまず買い物、美容室にいくなどできるところから挑戦していった。徐々に頓服を飲まなくても大丈夫だという自信をつけていき、様々な不安を感じる場所へ挑戦していくことで、生活の幅が広がっていった。

今では、パニック発作が起こるのが怖く、行けていなかった趣味の舞台鑑賞なども行けるようになっている。徐々に、薬も減らしていっている。

20代男性のご相談事例

5年前、病院でMRIを使った検査中に、過呼吸や動悸などのパニック発作が初めて起きた。これまで、1度もパニック発作は経験したことがなく、それ以来、強い恐怖と不安を感じるようになった。次第に、通勤に使うバスに乗ることや休日に楽しみだった映画へ行くこともパニック発作が怖く難しくなった

身体的には問題がなかったため、精神科に通院しはじめ、薬物療法を受ける。お薬を飲むと症状が和らぐため、パニック発作がおきそうだと感じる場所へ出かける時には、お守り代わりとして頓服を手放せなくなった。これ以上、薬に頼りきりになりたくないと薬以外の治療を希望して当院を受診。

治療の経過

薬物療法と並行で、グループ療法に参加。まずは、パニック発作に対する自分でできる応急措置である呼吸法を習得。パニック発作が起こったとしても、呼吸法を行えば次第に収まっていくことを体験。パニック発作は、正常な体の反応であり、危険なものではないことを学ぶ。

対処方法を学んだが、強い不安がいまだ残っていたため、不安を生じさせているパニック発作などに対する破局的な考えに対して、認知再構成法を行い、症状からくる強い不安感を日常生活が送れるレベルに近い不安の程度まで和らげた

その後、頓服を飲まなくても、行くことができる程度の不安な場所から、段階的曝露療法を行っていった。曝露を行っている過程で、時折不安感が出現することもあったが、認知再構成法を行いながら、階段を上がったり、下がったりするように徐々にお出かけできる範囲が増えていった。

現在では、頓服はほとんど使用せずに過ごすことができており、徐々に、減薬をすることができている

まとめ

ここまで、パニック障害の症状について解説をしてきました。パニック障害には、ドキドキしたり、震えが出たり目眩がしたりなどの身体的な症状もあれば、「死んでしまうのではないか」という精神的な症状もあります。

パニック発作がおきてもその発作だけで死ぬことはありません。そのため、まずはパニック発作がおきた際の呼吸法(対処療法)をしっかりと学ぶ必要があります。

また頓服薬は一時的に症状が治ることから、頓服薬を手放せなくなる方が多いですが、治療のためにはグループ療法で段階的な曝露療法などを行い不安を払拭していく必要があります

当院では、パニック障害の方のためのグループ療法を行っており詳細については「パニック障害のグループ療法のご案内」で紹介しているためぜひ合わせて読んでみてください。

また、パニック障害の治療方法や治し方については「パニック障害の治し方・治療法とは?」の記事で紹介しています。こちらも合わせて読んでいただくことでよりパニック障害への理解が深まると思います。

関連記事:パニック障害の診断方法とは?チェックリストを活用した診断テストをご紹介

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。