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2022.05.25 社交不安障害(あがり症)

社交不安障害の治療に使用される薬と、薬に頼り切らない治療について

社交不安障害の治療に使用される薬と、薬に頼り切らない治療について

社交不安障害は、ある特定の場面や人前になると、過剰な緊張や不安から、ふるえや冷や汗、動悸や吐き気などの身体症状があらわれます。

「会議やプレゼンなど、人前で話すと緊張で手足のふるえが止まらない」
「周りからどう思われているのか気になり、言いたいことが言えず落ち込む」
「人前で電話をすると、話し方が変に思われるのではないかと不安になり、冷や汗が出る」

こうした状況を繰り返す恐れから、しだいに回避する行動を取るようになり、社会生活にも影響が出てきてしまいます。

社交不安障害は、場数をこなせば慣れるというものではないため、症状の改善には適切な治療が必要となります。社交不安障害の治療には、薬を使う治療法と、薬を使わない治療法がありますが、まずは症状の改善のために薬を使用することが一般的です。

今回は、社交不安障害の治療にはどんな薬を使用するのか、また、薬を使わない治療方法はどんなものがあるのか、それぞれ解説していきます。

社交不安障害の治療に使われる薬とは

社交不安障害の治療には、不安や緊張をやわらげてくれる下記の3つの薬が主に使用されます。

  • SSRI
  • 抗不安薬
  • βブロッカー

一般的にSSRIが治療によく使われますが、併用することもあります。どの薬をどのように使用するかは、患者さんの症状や状況、薬との相性などによって総合的に判断されます。

SSRI(エスエスアールアイ)

SSRIは、セロトニン再取り込み阻害薬といって、抗うつ薬として使われる薬です。脳の中のセロトニンという物質を調整し、扁桃体の活性を抑えるため、恐怖や不安をやわらげる効果が期待できます。

SSRIは即効性に欠けるため、効果が出てくるまでに2〜3週間ほどかかることがあります。一定期間、毎日飲み続ける必要があるため、焦らず、自己判断で量を減らしたり、服用を中止しないことが大切です。

抗不安薬

抗不安薬で代表的な薬は、「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」です。扁桃体の活性化を抑え、不安感をやわらげるだけでなく、動悸や赤面、発汗などの身体症状も抑えることができます。

即効性もあるため、SSRIの効果があらわれるまで、併用して使われることも多い薬です。抗不安薬は効きやすい反面、飲み続けると依存を引き起こしやすい薬でもあります。主治医と良く相談して、適切に服用しましょう。

βブロッカー

緊張で交感神経の働きが活発になり、手足や声のふるえ、動悸、発汗が出る場合に、交感神経の働きを抑えて身体反応をやわらげてくれる薬です。

βブロッカーは、眠くなったりぼんやりすることがないため、プレゼンや発表の前など、緊張の場面の30分〜2時間前に服用するように処方されます。社交不安障害の症状が、特定の場面に限定されている場合に有効とされています。

薬を使わない治療方法の「認知行動療法」とは

社交不安障害は、薬を使わない「認知行動療法」も効果的です。社交不安障害が起こる背景には、「相手からどう見られているか」といった、過剰な自意識が関わっています。

認知行動療法では、ものの考え方や捉え方にアプローチし、苦手や不安な場面に直面しても適応できる行動パターンを獲得していきます。

人は状況に応じて、「気持ち」「考え」「体」「行動 」の4つの側面から、互いに影響し合ってさまざまな反応を起こします。

「気持ち・体」は自分の意志では変えられませんが、「考え・行動」は自分の意思で変えることができます。この、考えや行動を変えることで、気持ちや体を変えていくのが認知行動療法です。

認知行動療法は、考えを変えていく認知的技法と、行動を変えていく行動的技法を用います。

具体的には、イギリスのウェルズによるニンニクとドラキュラの話が参考になります。

ニンニクとドラキュラ

昔は、ドラキュラの対策として、寝る際にニンニクの首飾りや玄関にニンニクを吊るしておく対策が行われていました。ただ、実際にドラキュラを見たことがある人はいませんでした。ここでは、全員の人がドラキュラはいるものだと信じ、安全保障行動として寝るときにはニンニクの首飾り、玄関にはニンニクを吊るすということを行っていました。

そこでウェルズは、ニンニクを外して寝てもドラキュラは来ないということを伝え、実際に行動実験として行いました。

現代の社交不安障害の治療もこれと全く同じで、実際に周りの人はそこまで気にしていないということを少しずつ行動実験を行いながら進めていきます。最初は怖いかも知れませんが、徐々にその環境に慣れていくことで少しずつ良くなっていきます。

 

再燃しないための「薬に頼り切らない治療」とは

あらたまこころのクリニックは、“薬に頼り切らない治療”を、さまざまな疾患でお困りの方を対象に実践しています。社交不安障害は、薬だけで治るケースもありますが、完全に症状がなくなることが少なく、考え方のパターンから再熱のリスクもあります。

緊張の場面を薬に頼り切って乗り越えていると、「薬がなくなったらどうしよう。」と、新たな不安があらわれるという悪循環が生じてしまうこともあります。

このような悪循環を防ぎ、より良い生活を送くるためにも、薬を最小限に使用しながら認知行動療法で自分で乗り越える力を身につける、「薬に頼り切らない治療」がおすすめです。

まとめ

社交不安障害の治療には、薬を使う「薬物療法」と、薬を使わない「認知行動療法」が効果的です。

薬物療法の薬には、不安や緊張をやわらげてくれる、下記の薬が使用されます。

  • SSRI
  • 抗不安薬
  • βブロッカー

認知行動療法では、ものの考え方や捉え方にアプローチし、苦手や不安な場面に直面しても適応できる行動パターンを獲得していきます。
薬だけで治るケースもありますが、再燃のリスクもあるため、薬を最小限に使用しながら認知行動療法で自分で乗り越える力を身につける、「薬に頼り切らない治療」がおすすめです。

人の目を気にする、人前での失敗を恐れる、などの社交不安は、誰しもが抱く感情です。“社交不安を無くす”ことは難しいため、あらたまこころのクリニックでは、社交不安が生じても自分の能力を発揮できることを治療の目標としています。社交不安障害でお悩みの方は、ぜひ、一度ご相談ください。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市からアルコール依存症専門医療機関、日本精神神経学会から専門医のための研修施設などに指定されている。