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ADHD(注意欠如・多動症)とは?具体的な症状や特徴、診断の流れなど網羅的にご紹介

ADHD(注意欠如・多動症)とは?具体的な症状や特徴、診断の流れなど網羅的にご紹介

ADHDは、「発達障害」のひとつです。不注意や落ち着きのなさ、衝動性が特徴ですが、単なる個性ととらえられ、ADHDと気づかないまま大人になって初めて気づくこともある障害です。

ADHDの子どもが社会とうまく関わっていくためにも、周囲のサポートや早期の治療が大切です。

今回は、ADHDを知っていただくために、ADHDの症状や診断、治療から接し方のポイントまでADHDの概要を解説していきます。

ADHD(注意欠如・多動症)とは

ADHDは、「Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder」という英語の略語で、日本語では「注意欠如・多動症」と呼ばれています。ADHDはかんたんに言うと、「不注意」や「多動・衝動性」を特徴にもつ、発達障害のひとつです。

ADHDを持つ子どもは、「忘れ物をよくする」「じっとしていられない」「おしゃべりが過ぎる」などの行動があらわれるため、日常生活や学校生活で様々な困難を抱えることがあります。

そのため、ADHDの子どもの特性について十分に理解し、接することが大切です。症状の状態によっては、困りごとを軽減するための行動の介入や、こころの発達を支援するための早期の治療が必要なケースがあります。

ADHDの原因

ADHDの原因は、神経系の脳のはたらきがうまくいっていないと考えられていますが、はっきりとは分かっていません。

注意を持続させたり、行動をコントロールするための脳の機能に、何らかの異常や偏りがあることで症状が生じるため、ADHDの特徴である不注意や多動・衝動性は、育て方やしつけの問題ではありません。

遺伝的要因や、環境の影響など、さまざまな要因が互いに影響しあっていると考えられています

ADHDの症状と特徴

ADHDの特徴

ADHDの症状は、「不注意」と「多動・衝動性」に分けられます。「不注意」は、集中力が続かない、忘れっぽい、順序立てて行動できないといった特徴があり、「多動・衝動性」は、じっとしているのが苦手、思いつきで発言や行動するといった特徴があります。具体例については以下にまとめました。

「不注意」の特徴の例

  • うっかりミスが多い
  • 気が散りやすい
  • 忘れ物が多い
  • 片付けが苦手
  • 遅刻が多い

「多動・衝動性」の特徴の例

  • 授業中に席を立つ
  • 順番が待てない
  • 人の話が最後まで聞けない
  • しゃべり過ぎる
  • 突発的な発言や動きが多い

ADHDには、「不注意」の症状が強くあらわれるタイプと、「多動・衝動性」の症状があらわれるタイプ、どちらの症状もあわせ持つタイプと、3つのタイプがあります。

症状については、以下の記事で詳しく解説しております。合わせてご覧ください。

関連記事:ADHDの特徴とは?不注意、多動、衝動性それぞれに見られる具体例とADHDの3つのタイプを紹介

ADHDの診断

ADHDの診断は、DSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)の診断基準がよく使われます。「不注意」と「多動・衝動性」の症状について、以下の条件を満たしているかチェックします。

  • 症状が6つ以上、6カ月以上持続したことがある
  • 発達の水準に不相応
  • 12歳になる前から症状が存在している
  • 2つ以上の状況(例:家庭、学校など)でみられる
  • 家庭や学校での機能を妨げている

ADHDの症状と似た精神疾患は多いため、診断基準だけでなく、親子との面談や行動観察、検査結果などを踏まえて総合的に判断し、診断が確定されます。

ADHDの診断テストについては、以下のブログ記事で解説しております。合わせてご覧ください。

関連記事:【ADHDの診断テスト】DSM-5を元にした診断基準を解説

ADHDの治療

ADHDの治療は、下記の2つがあります。

  • 心理社会的治療
  • 薬物療法

ADHDは疾患ではなく「障害」であるため、「完治」を目標としませんADHDという特性から起きる周囲の環境とのズレから起きる困りごとが障害です。問題の解決に取り組み、充実した社会生活を送るためにも、症状のコントロールや、困りごとに対処する工夫や力を身につけることが大切です。

ADHDと診断されると、まず「心理社会的治療」が検討されますが、症状によって日常生活に支障が出る場合は、早期に「薬物療法」が行われることもあります。

心理社会的治療

心理社会的治療には、「環境調整」をはじめとするさまざまなアプローチや支援があり、対人関係能力や、社会的スキルを身につけていきます。保護者への心理社会的治療には「ペアレントレーニング」があり、ADHDの理解や具体的な対処法を学びます。

<心理社会的治療の例>

  • 環境調整:生活環境を工夫し、生活しやすくする
  • ペアレントトレーニング:保護者が子どもの特性を理解し、関わり方や対処法を知るプログラム
  • ソーシャルスキルトレーニング:社会とうまく関わっていくための、必要なスキルを学ぶプログラム

薬物療法

薬物療法は、環境への働きかけや行動療法的アプローチだけでは改善が困難な場合に、心理社会的治療と並行して行います。ADHD治療薬は下記の4つがあり、ADHD特有の症状を和らげてくれます。

  1. コンサータ
  2. アトモキセチン(ストラテラ)
  3. インチュニブ
  4. ビバンセ

ADHDの薬は6歳から処方することができますが、副作用があらわれることもあるため、薬が必要かどうかは慎重に見極めなければなりません。

4つの治療薬にはそれぞれに特徴があり、患者さんの状態に合わせて使い分けていきます。薬はあくまでも補助的な役割なため、薬で症状をやわらげながら、心理社会的治療でトレーニングを重ね、薬の助けを借りなくても大丈夫な状態を目指します。

ADHDは子どもに多いのか?

DSM-5によると、ADHDは、子どもの約5%、成人の約2.5%にみられるとされてますが、あるいは、もっと多いのではないかと言われています。ADHDは大人になってから急に発症するものではなく、小児期に気づかなかったADHDが、大人になってから気づくケースもあります

ADHDは、年齢とともに症状が軽減されたり、成長の中で症状とのつき合い方を工夫していくことで、症状が目立ちにくくなるのも特徴です。

ADHDの子どもへの接し方やサポートのポイント

ADHDの不注意や多動・衝動性は、脳の障害によるものと考えられているため、本人の努力の問題ではありません。厳しくしつけても症状は改善されないため、まずは子どもの特性を正しく理解することが大切です。

ADHDによるふるまいによって、友だちとトラブルになったり孤立することもあるため、状態に応じて早期からの適切なサポートが重要です。ADHDの特性は、「創造性が豊か」「好奇心旺盛」「人なつっこい」など長所でもあります。良いところや頑張っているところ、できたことをほめて、やる気や自信を与えましょう。

大人のADHDについて

大人になると、子どもの時にみられた「多動性・衝動性」は、一見目立たなくなります。しかし、内面での落ち着かなさは残っているため、待つことにイライラしてしまったり、人の話を最後まで聞けず、さえぎって一方的に話してしまうといった現れ方をします。

「不注意」は、仕事でのケアレスミスや物忘れ、遅刻などで現れるため、仕事に支障をきたし社会生活がうまくいかなくなることがあります。大人のADHDの場合は、「不注意」の方が多くなる傾向にあります。

マインドワンダリング(さまよう心)と言って、「考えがまとまらない」、話の要点が絞れないので、「相手に話が伝わらない」などコミュニケーションで困り適応障害になったり、うつ病と間違えられたりすることもあります。、適応障害、うつ病、不安障害などを合併することもあります。

こうした問題から、ストレスを抱えたり自己否定が強くなることで、適応障害、うつ病やパニック障害など、二次障害を発症するケースも少なくありません女性の場合に多い。ADHDの現れ方は、男性と少し違い、グレーなADHDのため悩みを心の内に抱えて困りごとが増えストレスが悪化することがあります。ADHDの傾向によって生きづらさを感じた場合は、早期に専門医による診断をおすすめします。

まとめ

ADHDは、「注意欠如・多動症」とも呼ばれ、「不注意」や「多動・衝動性」を特徴にもつ、発達障害のひとつです。

  • うっかりミスが多い
  • 気が散りやすい
  • 遅刻が多い
  • 順番が待てない
  • 人の話が最後まで聞けない

上記のような症状から、日常生活や学校生活で様々な困難を抱えることがあります。

ADHDの治療は、「心理社会的治療」と「薬物療法」があり、生活をしやすくする工夫や、社会とうまく関わっていくための、スキルや対処法を身につけることを目標としています。

ADHDの不注意や多動・衝動性は、脳の障害によるものと考えられているため、決して本人の努力や、しつけや育て方の問題ではありません。ADHDの良い面を引き出すためにも、まずはADHDの特性を正しく理解し、状態に応じて早期からの適切なサポートが重要です。

もしも、子どもがADHDかもしれないと思ったら、一人で抱え込まずご相談ください。周囲が連携して、取り組んでいくことが大切です。

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。