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2020.05.29 社交不安障害

社交不安障害・社会不安障害・あがり症④ 安全保障行動と回避について

目次
社交不安障害・社会不安障害・あがり症でみられる「安全保障行動」や「回避」とは?
なぜ安全保障行動や回避が社交不安障害・社会不安障害・あがり症を維持してしまうのか
まとめ

社交不安障害・社会不安障害・あがり症でみられる「安全保障行動」や「回避」とは?

苦手な場面が控えている時、「何とかして不安を下げたい」「逃げてしまいたい」という気持ちになることはよくあることです。社交不安障害でも、こうしたパターンが見られます。

例えば人前で話す場面では、社交不安障害の患者さんは、「緊張しているのがばれて小心者と思われてしまうのでは」「変なことを言っておかしな人と思われるのでは」などと他の人からの評価が気になり、強い不安を感じることが多いです。そして、その不安を何とかして下げたり、あるいは自分が不安になっていることを周りの人に知られないようにしたりします。この時に取りがちな行動が「安全保障行動」です。

代表的な安全保障行動には、以下のようなものがあります。
・人前で話す時に、頭が真っ白になってもよいくらいに細かく原稿を書いて持っていく
・始まる前にどのように振る舞い、何を話すかを過剰にリハーサルする
・表情が隠れるようにマスクやサングラスをする
・分からないことがあっても分かったふりをする(質問をしたり自分から話したりしない)
・緊張を隠すために平静を装ったり、愛想笑いをしたり、他のことをして気を紛らわせる
・どもるのを避けるために特定の言葉を避ける
・沈黙にならないように矢継ぎ早に話す
・汗をかかないように薄着をしたり、汗が目立たないような色の服を着る
・下を向いたり、髪の毛を伸ばすなどして顔を隠す
・震えないように体に力を入れたり、体を押さえる
・あえてぶっきらぼうな態度を取る

また、安全保障行動の他に、社交不安障害の患者さんが陥りがちなパターンに、「回避」があります。「回避」は、苦手な場面を避けてしまうことです。避けたくて避けているというよりは、不安が強すぎて避けざるを得ない、という状態です。

なぜ安全保障行動や回避が社交不安障害・社会不安障害・あがり症を維持してしまうのか

安全保障行動は、例えるなら「つえ」です。つえは足を怪我した時に歩いたりする時に、私たちが前に進むのに力を貸してくれます。つまり、安全保障行動をしていれば、不安が強い場面でも、何とか乗りきることができるでしょう。

しかし、本当はつえが必要ない(足が怪我をしておらず何ともない)時に、つえをついてばかりではどうでしょうか。足の筋肉は衰え、つえがなくては歩けないような気持ちになり、ますますつえが手放せなくなるでしょう。つまり、安全保障行動は、確かに不安を和らげてくれますが、毎回安全保障行動をしていると、安全保障行動なしでは不安な場面に直面できなくなります安全保障行動がなくても、「自分が不安に感じているようなことは起こらないんだ」という体験ができなくなってしまうのです。

回避も安全保障行動と同様に、一時的には不安を減らしますが、回避のパターンが繰り返されると、社会生活に大きく支障をきたす場合があります。例えば、大事な会合に参加できない、子どものイベントが見に行けない、仕事を休むなどです。これでは、いつまでたっても自信がもてないどころか、どんどんと自信がなくなってしまう悪循環です。

また、安全保障行動や回避は、周りから見ると奇妙に映ってしまうこともあります。例えば、いつも愛想笑いをして自分のことは全然話さなかったり、周りは原稿を作っていないのに自分だけ非常に丁寧に原稿を作って読んだり、いつもマスクをしたり、いつも大事な場面を休んでいると、周りは「あれ?変だぞ?」と思うことがあるわけです。

こうしたことで、ますます不安が高まってしまう悪循環になります。

まとめ

社交不安障害・社会不安障害・あがり症の方は、人前で話す場面などで、不安を何とかして下げようとしたり、その不安を隠そうとしたりします。これらは「安全保障行動」や「回避」と呼ばれます。
安全保障行動や回避は、一時的には不安を減らしますが、周りから見ると奇妙に映ったり、心配していたことが「実際には起こらないこと」に気付けなかったりします。
安全保障行動や回避の結果、どんどんと自信がなくなってしまう悪循環になり、長期的にみると社会生活に大きく支障をきたす場合があります。
この悪循環を断ち切るために、少しずつ行動を変えていく工夫が必要です。一人では大変なので、是非、医師やスタッフ、仲間と一緒に取り組んでいきましょう。