不眠の原因はさまざまでもメカニズムは一つ?不眠症の対処法と治療薬。
皆さん、毎晩ぐっすり眠れていますか?
夜眠れないとお悩みの方は多いと思います。
しかし実際には不眠は「眠れない」という夜間の症状だけではありません。日中の眠気、だるさ、集中困難など、こころとからだに様々な影響を及ぼします。
不眠症は日常生活や心身の健康に大きな影響を及ぼします。たかが「不眠」と侮ることはできません。
今回は「不眠症かも?」と不安に思われている方へ、実際に治療をするとなるとどんな方法があるのか、対処法や治療薬の基礎知識をお伝えします。
不眠症の原因とメカニズム
そもそも不眠症の原因ですが、実に様々で複数の要因がからむこともあります。
睡眠リズムの乱れ・ストレス・精神疾患・生活習慣病・脳神経疾患・呼吸器疾患・アルコール・お薬の影響・・・など。
一見、沢山あるのですが、その結果起こるメカニズム自体は非常にシンプルです。
それは、“睡眠と覚醒のバランスの乱れ”です。
眠りたいときに何らかの理由で、“身体を覚醒させる機能”が“睡眠を誘う機能”よりも上回ってしまった場合、眠れなくなるのです。
不眠症の治療①~生活習慣の改善~
ではどのようにしてこのバランスを正していくのか、対処法としてまずは生活習慣から見直してみましょう。
生活習慣の改善
①まずは自分にとって適正な睡眠時間を知ることから始まります。5時間で良いショートスリーパーなのか、8時間くらいのロングスリーパーなのか……。
実は、適正な睡眠時間というものは、年齢、性別、個人によって決まっています。
②次に睡眠環境を「眠れる環境」にします。案外、眠れない環境の中で不眠で悩んでいる人は多く、睡眠環境を変えるだけで眠れるようになることも多々あります。
③そしてそれを1日の生活の時間に組み込みます。同じ7時間でも、床に入り時間帯によって睡眠の質は変わってきます。
最初は不眠の原因となる生活習慣を見直し、それらを改善するセルフケアを行うことから始めます。
質のいい睡眠のための生活習慣(の一例)
上の図をご覧ください、質の良い睡眠のための生活習慣の一例です。
時間帯ごとのポイントを見てみましょう。
温度(体の深い所の体温)と光、音がポイントです。
・朝
毎日同じ時刻に起床し、朝の光を浴びる。
・昼
昼寝をするなら20分程度。
・夕
夕食前に軽い運動をする。
就寝4-5時間前からはカフェインやアルコール、胃にもたれる食事はとらないようにする。
・夜
就寝前に熱いお風呂は避ける。
スマホ、動画、SNS、タバコは避ける。
就寝時間にこだわりすぎずに眠くなってから布団に入る。
寝室の環境を整え、寝る以外のことに使用しない。
睡眠中は騒音、光、極端な温度変化を避ける。
こうした生活習慣に組み入れることで質の良い睡眠が期待できます。
自分の睡眠の環境を見直すことは必ず必要で、これだけでも効果がある人もいらっしゃいます。
不眠症の治療②~薬物療法~
服薬は一時的なものとして考える。
次に睡眠薬を使った治療についてです。生活習慣を整えても症状が改善されず、医師が必要と判断した場合はお薬による治療をお勧めする場合があります。
「睡眠薬には頼りたくない」「睡眠薬なしで眠れなくなりそうで怖い」など薬にあまりよくないイメージを持つ方も多いかもしれません。
ご懸念はごもっともですが、医師の正しい処方のもとで正しく服用していれば、睡眠薬は安全なお薬です。
また、眠れるようになってからは、医師と相談しながら、徐々に薬を減らして、最終的にはお薬なしで眠れるようになっていく事を目指す治療が主流になってきています。
当院(あらたまこころのクリニック)の治療理念も「薬に頼り切らない」です。
院長の加藤正は睡眠薬などの依存を防止する啓蒙活動に力をいれており、名古屋市医師会において患者様が薬を手放すための医師向け講演や論文執筆を行なっています。
睡眠薬の正しい服用方法については、「睡眠薬の正しい服用方法とは?服用の方法から、よくある睡眠薬の質問について」をぜひ読んでみてください。
3つの不眠症治療薬
治療薬についてもう少し詳細にみていきましょう。
不眠症治療薬の種類には代表的なものが3つあります。
①GABA(ギャバ)受容体作動薬
脳全体の活動を鎮静化させて眠りに導く。
ゾルピデム、エスゾピクロンなどのZ薬と呼ばれる睡眠薬もここに含まれます。
②メラトニン受容体作動薬
体内時計の働きをつかさどるメラトニンの作用を高めて、睡眠リズムを整えて眠りに導く。ロゼレム(ラメルテオン)と言う名前で処方されます。
③オレキシン受容体拮抗薬
起きている状態を保とうとする物質「オレキシン」の働きを弱め、脳を眠りの状態に切り替える。
いずれも依存性の少ない睡眠薬で処方されやすい種類なのですが、実はこれらの睡眠薬以外の薬を、うまく使うのがコツです。
他にトラゾドン、ミアンセリンなど本来はうつ病の薬ですが、弱すぎて使われないけれども、睡眠の質を改善する作用があり、睡眠薬の代わりに使います。依存性が低く、生活習慣の改善をしながら服用することで役に立ちます。
睡眠薬は実に多種多様です。
効果的で安全性の高いものもある一方、依存しやすく不眠と服用の悪循環を生むものもあります。
自己判断で服用を中止したりなどせず、医師の指導のもとで、適切に使用することでお薬はより安心して使用することが出来ます。
あくまでも医師の正しい処方とそれを守った正しい服薬を大切にしてください。
不眠症の治療プロセス
では、さいごにこれまでのおさらいをしましょう。
不眠症は以下の4つのプロセスで進んでいきます。
①日常生活を見直し、不眠の原因となる生活習慣を改善する。
不眠の症状や状態を医師に伝え、睡眠衛生指導をもとに不眠の原因となる生活習慣を改善する。
②症状に合わせてお薬を服用する。
生活習慣の改善と同時に、必要に応じてお薬を使って治療する。
③生活習慣が是正され、症状が改善したら、お薬を減らす。
良い睡眠のための生活習慣が定着し、症状が安定して、4~8週間ほど続いたら、医師と相談して、薬を減らしていく。
④お薬をやめても状態が安定していることを確認し、治療を終了する。
医師の指示に従って、治療を終了する。良い睡眠のための生活習慣は続ける。
このようなプロセスで、安全に不眠症は治療することが出来ます。
あらたまこころのクリニックの治療理念である、「薬に頼り切らない治療」についての詳細はこちらをご参照ください。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、不眠の症状とメカニズム・質の良い睡眠のための生活習慣・不眠症の薬物療法についてご説明しました。
あらたまこころのクリニックでも、これらをパッケージ化した短期睡眠行動療法と医師による薬物療法の2本柱で治療を行っております。詳しくはこちら(①②③④)をご参照ください。
本記事を読んで、ご自身の不眠症が気になる方は早めにご相談くださいますようお願いします。
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<不眠症についての記事はこちら>
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関連する情報
監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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