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公開日: |更新日: 社交不安障害(あがり症)

あがり症、社交不安障害は後と先のことを考えてつらくなる

あがり症、社交不安障害は後と先のことを考えてつらくなる

目次
あがり症、社交不安障害は苦手な場面が終わった後が、つらいのはなぜ?
あがり症、社交不安障害は、「事後の反すう」が、治療のポイントになる
苦手場面を乗り越えても、自信がつかず、不安が高まる悪循環

あがり症、社交不安障害、社会不安障害のつらさ

 あがり症、社交不安障害、社会不安障害では、「事後の反すう」と呼ばれる症状が起きているからです。反省会と予習で、ますます頭の中がいっぱいになり、疲れてしまいます。

 例えば、職場の会議でプレゼンをしたり、友人たちと雑談をした後、終わってホッとしたかと思ったら、帰り道や家に帰ってから、「もっとこう言えばよかった」「もしかしたら悪く思われたかもしれないなどといった考えが浮かんでくることはありませんか

 ここが、誰でにもある「あがる」ということとあがり症、社交不安障害との違いです。

 あがり症、社交不安障害、社会不安障害になると、このように、苦手な場面が終わってから、その場面のことを思い出してあれこれ考えてしまうことが多くなります。これを「事後の反すう」といいます。いわゆる「一人反省会」です。特に、夜に布団の中であれこれ考えてしまうので、「布団の中の反省会」と言ったりします。

 この1人反省会では、自分のダメだったところばかりが目につき、「また失敗してしまった」「なんでこんな当たり前のことができないんだ」と自分を責め、落ち込みます。「ビデオを見るように自分が恥をかいている姿が浮かんで、ビデオのスイッチが切れず、浮かんでくるのを止められない。ますます、自分が、みじめに思える」と話す人もいます。

 あがり症、社交不安障害の方は、自分のことを「落ち込みやすい性格」や「クヨクヨ考えてしまう性格」とおっしゃることがありますが、これは性格ではなく、あがり症、社交不安障害、社会不安障害の症状です。

そのため、治療可能です。

 思い出したくて思い出しているわけでも、考えたくて考えているわけでもないのに頭の中をグルグルと否定的な考えがめぐってしまいます

また「失敗」しないように先のことを、あれやこれやと考えることも多いです。「明日に会議があるから、あがって、緊張しすぎて挙動不審にならないようにと」予行演習を頭の中で繰り返します。これも布団の中で、予習をしています。

つまり、苦手の場面のことが、終わっているのに、夜や休日など休息の時に頭が予習復習で、いっぱいになりますこうなると頭が24時間365日間、動きっぱなしになるので疲れてしまい、不眠うつ病になってきます。

あがり症、社交不安障害、社会不安障害にうつ病が合併しやすいのは、このことが大きく関係しています。

せっかく乗り越えられたのに、自信にならず、不安が高まる悪循環

  事後の反すうは、社交不安障害(社会不安障害・あがり症)の方に必ずといっていいほど見られる症状です。考えれば考えるほど、ダメなところばかりが目につき、自分の振る舞いについて自信がなくなります。このような思考がぐるぐると頭を巡り、次の社交場面への不安が、グーンと高まって、苦痛になります

 例えば、友人たちとの雑談の後、「あんなことを言わなきゃ良かった」「きっと変な人に思われた」という後悔、考えが浮かんできたとします。そして、また数日後にその友人たちと会う機会があるとします。また会うのが楽しみに感じられるでしょうか?いや、きっと、前回より一層不安に感じるでしょう。次に会うのを避けてしまうかもしれません(回避)。

 このように、せっかく苦手な場面を乗り越えられたとしても全く自信にならず、むしろ不安や苦痛が強くなって、場合によっては回避が生じてしまいます。回避をすると、どんどん不安が高まるため、先ほどの例でいうと、どんどん友人に会うのが不安になり、また避けて、また苦痛や不安になる、という悪循環を作り出してしまうのです。

まとめ

 あがり症、社交不安障害、社会不安障害になると、苦手な場面が終わってから、その場面のことを思い出してあれこれ考えてしまうことが多くなります。これを「事後の反すう」といい、自分のダメだったところばかりが目につき、「また失敗してしまった」「なんでこんな当たり前のことができないんだ」と自分を責め、落ち込みます。これは性格ではなく、社交不安障害の症状です。

 事後の反すうが強いと、せっかく苦手な場面を乗り越えられたとしても全く自信にならず、むしろ不安が強くなって、場合によっては回避が生じてしまいます。

回避をすると自然と不安が下がる体験ができないため、どんどん不安が高まる悪循環を作り出してしまいます。これが、社交不安障害(社会不安障害・あがり症)が人生に長きにわたり続く理由の1つです。

治療は可能ですので、「性格だから」と諦めず、事後の反すうに気づき、治療を受けることをお勧めします。

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<社交不安障害(あがり症)についての記事はこちら>

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社交不安障害・社会不安障害・あがり症から考える、薬に頼り切らない治療。

【ガイダンス】あがり症・社交不安障害を正しく知って治療を計画的に進めましょう(入門記事の目次あり)

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。