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気分障害とはどんな病気?特徴や治療法について解説

気分障害とはどんな病気?特徴や治療法について解説

人生のなかでうれしいことがあれば気分が良くなり、悲しいことはあれば気分が落ち込むなど、気分の波は日々移り変わっていくものです。

しかし、こうした気分の波が激しく変動したり、一定期間沈んだ状態が続いて普段の生活に支障を感じると、「気分障害」というこころの病気にかかっているかもしれません。今回の記事では、気分障害とはどんな病気なのか、特徴や治療法などくわしく解説します。

気分障害とは

気分障害は感情障害とも呼ばれ、気分が過度に落ち込んだり高揚する状態が一定期間続き、日常生活に支障が出る病気です。

気分障害はうつ状態だけが続く「うつ病」と、躁(そう)状態とうつ状態が繰り返しあらわれる「双極性障害」に分けられます。

この2つは同じ気分障害に分類されますが、病気の性質も治療も異なります。しかし、どちらも再発リスクが高い病気といえますので、病気の特徴をよく知り、適切に対処していくことがとても大切です。

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うつ病の特徴

うつ病は、日本人の15人に1人はうつ病を経験するといわれるほど誰にでも発症し得る病気です。男性よりも女性に多くみられ、約2倍なりやすいとも言われています。

うつ病での「うつ状態」は、“強い気分の落ち込みや、物事に無関心になり何もする気が起こらない状態が一日中ずっと、ほとんど毎日、2時間以上にわたって続いた状態”をさします。

人間関係がうまくいかず落ち込んだり、大切な人やペットとの別れによってつらく悲しい気持ちになるなど、日常生活の中で感情の波が起こることは誰にでもあることです。しかし、一時的で日常生活に支障をきたさない気分の落ち込みはうつ病とは言いません。

うつ病の原因はまだはっきりとは分かっていませんが、ストレスや過労が引き金となり、感情や意欲に関係する脳のはたらきに何らかの異常が起きることで発症すると考えられています。

うつ病の症状

うつ病になると、物事の捉え方が否定的になり必要以上に自分を責めるなど、気分や思考、行動パターンに悪循環がうまれます。気分の落ち込みや不安感などの精神症状が注目されがちですが、うつ病の症状は人によってさまざまで「精神症状」と「身体症状」があります。

精神症状

うつ病の精神症状は、物事の捉え方が否定的になります。「楽しい」「うれしい」といったポジティブな感情が抱きにくくなるため、焦りや不安、イライラなどのストレスをさらに抱え込んでしまいます。

うつ病の症状が悪化すると、死や自殺について考えるようになったり、なかには実際に行動に起こすケースもあります。うつ病の代表的な精神的な症状には以下のものがあります。

  • 何をしても楽しめなかったり、集中できない
  • 気分が沈んで気が重い
  • 憂うつで涙が出る
  • 些細なことでイライラすることが多い
  • 自分はダメだと責めたり、「死にたい」と思う

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身体症状

うつ病の身体症状は、不眠や食欲の減退だけでなく、頭や首、腰や関節など、痛みとなって体にあらわれることがあります。精神症状に注目されやすいうつ病ですが、「ケガをしたわけでもないのに体が痛む」「痛みが長い間続いているけど原因がわからない」など、慢性疼痛が続く場合があります。

これは体が痛みを感じるのではなく脳が体の痛みを感じるているため、3ヶ月以上痛みが続く場合はうつ病の可能性があります。その他、うつ病の代表的な身体的な症状には以下のものがあります。

  • 寝つきが悪い、夜中に目が覚める、早く目が覚めるなど不眠が続いている
  • 何を食べても美味しく感じず、食欲が湧かない
  • 頭痛や肩こり、体のだるさを感じる
  • 息詰まりや胸の苦しさを感じる
  • 体がだるく疲れやすい

うつ病の治療法

うつ病の治療には「薬物療法」と「精神療法」があります。うつ病は段階や症状に応じて治療が異なりますが、まずは十分な休養と薬物療法から開始することが一般的です。

うつ病は、回復の過程で症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に改善していくため、「もう大丈夫」と自己判断で治療を中止しないことがとても大切です。

また、うつ病は再発しやすい病気のため、症状が落ち着いても再発を予防するために治療をつづける必要があります。一般的にうつ病の治療期間は数ヶ月〜半年ほどですが、人によっては1年以上かかることもあります。

薬物療法

うつ病の薬物治療には、主に抗うつ薬が使用されます。少量から開始し、効果と副作用を確認しながら徐々に量を増やして最適な量を決定します。症

状が安定してからも、同じ量の薬を飲み続ける必要があるため、自己判断で薬をやめたり減らさないことが大切です。また、患者の症状によっては抗不安薬や睡眠導入薬、気分安定薬などがあわせて用いられることがあります。

精神療法

うつ病の治療は、薬物療法と精神療法を組み合わせると、治りも早く再発を予防することができるといわれています。うつ病になると悲観的に物事を考えたり、自分を必要以上に責めるなど考え方に偏りが生じるため、その悪循環を断ち切ることが大切です。

精神療法には、自分の思考や行動パターンを見直し偏りを修正していく「認知行動療法」や、ストレスを抱えやすい対人関係の問題を改善するための対処法を身につける「対人関係療法」などがあります。

双極性障害の特徴

双極性障害は、気分が落ち込むうつ状態と気分が高まる躁(そう)状態を繰り返す病気です。双極性障害1型と双極性障害2型があり、双極性障害1型は躁の症状がはっきりわかるほど激しく、社会生活に支障をきたすことがあります。双極性障害2型は躁状態が1型よりも軽く短いことが特徴です。

しかし、1型のように激しい症状が表面にあらわれないため、双極性障害2型は本人も周囲もなかなか気づけないことが少なくありません。また、軽躁状態の後にはうつ状態があらわれるため、うつ状態が長引きうつ病と診断されてしまうことがあります。

うつ病と診断された患者さんの10人に1〜2人は、最終的に双極性障害に診断が変わるといわれるほどうつ病と見分けが難しい病気です。双極性障害の原因もまだはっきり分かっていませんが、脳内の情報伝達の乱れにあるとされ、遺伝的要因も関与していると考えられています。

双極性障害の症状

双極性障害の症状には「うつ状態」の症状と「躁状態」の症状に分けられます。気分の波の周期には個人差があり、治療をしないでいるとだんだん周期は短くなっていきます。

躁状態は、本人にとっては「絶好調」と感じるため自覚がないケースが多く、うつ状態になった時に症状を自覚し、「うつ病かもしれない」といって受診する傾向があります。

うつ状態の症状

うつ状態にある時は、一日中ずっと、何週間も憂うつな気分が続きます。朝早くに目が覚めてしまい嫌なことが頭に浮かんだり、食欲が減退し体重が減ってしまう場合もあります。

うつ病の症状と同じように、何をしても楽しめず、興味が湧かなかったり、自分には価値がないと自分を否定したり責めてしまうことがあります。重症になると、「破産した」「恐ろしい罪をおかした」などの妄想が出ることもあります。精神的に追い詰められると、生きていても仕方ない、と自殺を考えてしまう人もいます。

躁状態の症状

チェックシート

躁状態では、やる気に満ちエネルギーに溢れているため、どんどんアイデアが生まれたり新しいことを始めます。基本的にはとても上機嫌ですが、すぐ気が変わってしまったり、ちょっとしたことでひどくイライラして怒りっぽくなります。

あまり眠らなくても元気なため休まずに行動したり、ひどい場合には浪費や暴力などによってトラブルを引き起こしたり人間関係を悪化させる場合があります。躁状態の場合、本人は「これが本来の自分」と感じて病気の自覚がないため、なかなか受診しません。

躁状態とうつ状態を何回か繰り返すうちに客観的に捉えるようになりますが、長い時間がかかるためその間にさまざまな問題や困難を経験し、最悪なケースになると生活や人間関係が破綻してしまうまでに至ることがあります。そうなる前に治療に結びつけるためには、病気について理解をしておくことがとても大切です。

双極性障害の治療法

双極性障害の治療法も「薬物療法」と「精神療法」があります。うつ病は「うつ状態を改善する」ことが治療目標ですが、双極性障害では「躁とうつの波をどのようにコントロールするか」が最大の治療目標になります。双極性障害1型(特に初めての躁状態)の場合は、躁の症状により本人や周囲に不利益を与える可能性があると、専門医療機関での入院治療が勧められます。

薬物療法

薬物治療には、主に気分安定薬や抗精神病薬が使用されます。双極性障害も再発リスクが高い病気のため、症状を安定させ再発を防ぐために長期間の服用が必要となります。不眠の症状がある場合には、一時的に睡眠薬を処方することがあります。

双極性障害の治療は処方薬が多剤多量になりやすいため、しっかりと治療方針を立てることが大切です。

精神療法

双極性障害の精神療法では、本人が自分の病気を受け入れ、コントロールできる力を身につけることが大切です。

考え方や認知の歪みを修正する「認知行動療法」や、人間関係を良好に回復させる「対人関係療法」のほか、社会リズムを規則的に整えて対人関係ストレスを減らし、社会的役割の変化にスムーズに適応するための「対人関係社会リズム療法(IPSRT)」などがあります。

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さいごに

気分障害は、気分が過度に落ち込んだり高揚する状態が一定期間続き、日常生活に支障が出る病気です。うつ状態だけが続く「うつ病」と、躁(そう)状態とうつ状態が繰り返しあらわれる「双極性障害」に分けられ、病気の性質も治療も異なります。

うつ病での「うつ状態」は、“強い気分の落ち込みや、物事に無関心になり何もする気が起こらない状態が一日中ずっと、ほとんど毎日、2時間以上にわたって続いた状態”をさします。

うつ病になると、物事の捉え方が否定的になり必要以上に自分を責めるなど、気分や思考、行動パターンに悪循環がうまれます。そのため治療では、十分な休養と薬物療法のほか、考え方に偏りを修正する「認知行動療法」や「認知行動療法」などの精神療法が有効とされています。

うつ病も双極性障害も再発率の高い病気です。少しでも社会生活に支障を感じたら、早めに精神科や心療内科を受診することが大切です。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市からアルコール依存症専門医療機関、日本精神神経学会から専門医のための研修施設などに指定されている。