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できるだけ薬に頼らない治療。あらたまこころのクリニックオフィシャルブログ

日本うつ病学会から表彰、下田光造賞のお祝い多くの患者様からお祝いとお花を頂きました!!

カテゴリー: うつ病と躁うつ病, 研修・学会, 院長のつぶやき | 投稿日: 2019-07-04


写真:加藤正院長先生とスタッフ一同

この度、小生、あらたまこころのクリニックの院長の加藤正が、日本うつ病学会から下田光造賞を受賞することになりました。7月5日(金)の日本うつ病学会総会(下田光造賞受賞講演ならびに表彰式)に参加するため、あらたまこころのクリニックの診療は勝手ながら休診となります。そのことを、通院されている患者様にお伝えしたところ、大勢の患者様からたくさんのお祝いのお言葉やお花を賜りました。面映ゆいやら照れるやら、恥ずかしいやらですが、ご厚意に甘え、いただいたお花をスタッフ一同で囲み記念写真を撮らせていただきました。受賞もさることながら患者様からお祝いをして頂いたことが、何よりもうれしいです。

このような機会に際し、今回行った研究の概要(簡易的な概要)や研究と通ずる当院の治療理念を勝手ながらご紹介させていただきます。なお、学会、研究内容と難しい内容になってしまい、読みづらいこともあるかと存じます。何卒、ご容赦いただけますと幸いです。

 

日本うつ病学会ならびに下田光造賞とは?

 詳しくは、下記のURLよりご確認ください。

日本うつ病学会ホームページ

下田光造賞

 

今回の研究について(SUND研究)

 今回行った研究は“SUND研究(サンディー研究)”というものです(SUND研究について)。京都大学大学院医学研究科健康増進行動学分野教室のホームページにオープンで公開されています)。うつ病治療において、うつ病治療ガイドラインというものがあります。中等度以上の大うつ病治療において、特に急性期にはうつ病に対する薬物治療が治療の大きな柱となりますが、このガイドラインでは“うつ病の薬物療法は副作用に注意しながら最大量まで増量すること”が推奨されています(日本だけではなく、アメリカ、イギリス、カナダなどでも)。

しかし、実際の臨床現場にてガイドライン通りに増量したとしても、患者さんの立場からすると【薬剤は増えるばっかりで改善しない】【副作用も出ることがあるし、つらいことが多い】という印象を持たれ、うつ病治療から脱落してしまうことがあります。特に、急性期に脱落すると、患者様へのご負担はより大きいものとなります。

 こうした問題を日頃から疑問に思っていた「同志」がいました。そこで、京都大学の古川教授を中心に、東京大学、東邦大学、北海道大学、名古屋市立大学、広島大学、高知大学、久留米大学、熊本大学の9つの大学を拠点として、その周辺でうつ病治療に積極的に取り組んでいるクリニックと病院48カ所で、2010年から2015年の6年間に渡り、この問題を少しでも改善すべく調査を行いました。

6年間で、延べ2011人(世界第3位の大規模調査となりました)の患者様にご協力いただきました。また、投薬開始25週間後に、現状を教えて頂いた患者様が94.9%にも上りました。大うつ病治療においては、6ヶ月間は治療を続けることが大事です。これだけ多くの患者様とうつ病治療という協働作業を25週に渡って続けられたことは、当然、治療効果も良くなるので、うれしい限りです。このこと自体が、大うつ病治療のモデルになるのではないか?と期待しています。

 そして調査結果から考えられる結論は、「うつ病の薬(セルトラリン)最大量の量とその半分の量とでは、効果に差はない、つまり、半分量で効果がないなら、やみくもに増量しないで次の一手に移った方が良い」というものです(世界3位の大規模調査かつ25週の追跡率から、統計的にも、かなり重要な結論であると考えます)。

 

SUND研究と当院の治療理念

あらたまこころのクリニックは、「薬に頼りきらない治療」を進めています。「薬に頼り切らない治療」とは、どうしても薬を使わないといけない場合には、最低限の量で適切にうつ病(中等度以上の大うつ病など)の治療に効果的なやり方で、戦略的な薬物療法で乗り切り、改善まで行って、後には認知行動療法などで、慢性化や再発予防を防ぎ、「薬に頼らず」暮らしていくということを目標とする治療です。「薬に頼り切らない」というポリシーは、まさにこの度のSUND研究の目的や結論と一貫して通じるものがあると考えます。あらたまこころのクリニックはこの治療理念のもと、さまざまな活動をこれまでも行ってまいりました。

日本うつ病学会でも、2011年に「認知行動療法に基づく復職支援プログラム(リワーク)の取り組み―個人の課題に合わせたプログラム作り―」を発表。お仕着せのワンパターン化されたリワークプログラムではなく、うつ病で休職されている人が本当に必要とする役立つスキルを高めて、うつ病の改善と復職、再発予防、就労継続を図るというものです。

2014年には、名古屋市瑞穂区医師会休日診療所で、加藤が名古屋市の開業医向けに、「メンタルな病気と抗不安薬・睡眠薬との関係~何故ベンゾジアゼピン系の薬剤を手放せないのか?~」を講演しました。パニック障害や社交不安障害、不眠症の方が、安定剤や睡眠薬の依存になりやすいので、その予防と薬以外の認知行動療法など対策の啓蒙活動をしております。

2018年には、愛知精神医療フォーラム(日本精神神経学会や愛知県内の重鎮の先生も出席される)で、「うつ病、社交不安障害などを持続、増悪させる考え込み(反すう)を改善するチーム医療-「薬に頼りきらない」治療をもとめて」というテーマで講演させて頂きました。

これからも「薬に頼りきらない治療」を治療理念とし、患者様と一緒に治療を進めていきたいと思います。

今後の注目点 ~次の一手を考える、
セカンドライン(切り替え)を上手く工夫する~

 現実には、中等度の大うつ病の人の場合には、役に立つと思われる薬を適正に服用していても治らない患者様もいらっしゃいます。例えばジェイゾロフト、レクサプロ、イフェクサーなどがあげられます。その時々の流行がありますし、確かに役に立つ薬だとは思いますが、それだけ服用していれば治るというわけでもないようです。例えば、アメリカのNIMHが30億円かけて実施したSTARD研究では、最初の薬(ファーストライン)で寛解(うつ病症状の半分改善した状態)するのは、多くても半分と言われてきました。このような場合、次の一手(切り替え、セカンドライン)が必要になってきます。しかし、薬剤を増量するのか?他の薬剤に変薬、または増強するのか?そのタイミングはいつが良いのか?といった疑問が残ります。これらの点は大うつ病治療戦略では、極めて重要です。それは、大うつ病治療において、急性期の治療が後々とても重要になるからです。この点に関しては、また今後お話させていただきたいと思います。

 

まとめ

・MANGA(マンガ)研究で、2010年当時、有効性と忍容性のバランスで最適のうつ病薬とされたジェイゾロフト(セルトラリン)で1日50mgと100mg使用しても、治療効果に差はない。50mgが適正量である。

・最初のジェイゾロフト(セルトラリン)が効果不十分である場合、3週間でミルタザピン(レメロン、リフレックス)に増強又は変薬すると、効果が10%改善する。ミルタザピンもMANGA研究で、有効性は最も高いとされているが、忍容性にやや劣る。

・切り替えは9週よりも3週の方が、治療効果は高い。切り替えは早い時期の方が良いかもしれない。

 

大うつ病の治療における薬物療法において、うつ病の治療ガイドラインよりも低用量で高用量と同等の効果が実証され、改善されない場合には、薬剤を増量するのではなく、切り替え(セカンドライン)を工夫することが副作用を減らし治療効果を高めることが実証されました。これらは、一貫した「薬に頼りきらない」治療戦略を支えるに研究となりました。

 

                                     院長:加藤 正

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