あらたまこころのクリニック「症状別のよくある質問」ページ

症状別のよくある質問 DISEASE FAQ

女性のうつ病

FEMALE DEPRESSION

HSPは適応障害に関係しますか?

適応障害を治療するときに感受性の違いを考えることはとても大事です。

特になかなか適応障害が治らないなあと思ったときには一度,検討して見ても良いかもしれません。

 HSP(Highly Sensitive Person)というのは,アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱し、4つの特性が強い人のことを言います。

①深く考える、②周りの刺激に反応を強く受ける、③他人の気持ちなどの影響を受けやすい、④他の人が気づかないような音、光、臭いなどの刺激に気づくなどDOES(ダズ)とまとめられています。あらたまこころのクリニックのHSPのブログにも書きましたので、興味のある方はそちらをご覧下さい。HSP尺度で判定すると世界で人口の15-20%の人がHSPだろうと言われています。アメリカの映画で、2019年にドキュメンタリー映画(繊細なあなたが恋に落ちるとき)、冒頭で「私が変だと思われずに、相手に自分の繊細さを分かってもらう方法がありますか?」とHSPの女性が必死の面持ちでエレイン・アーロン博士に質問するシーンがあるそうです。そうなんです。ここなんです。HSPの人が社会、職場、夫婦関係で困るのは、「性格」や「努力」「やる気」「愛情」などの問題ではなく、生まれた時から感受性が違う少数派で、周りは自分とは違う7-8割の大多数派の人の中で暮らしていく、ということで生じる問題です。社会や周りは「引っ込み思案」「消極的」「怖がり」などネガティブな性格とレッテル貼りをし、成長していくうちに自分でも自分はそういうネガティブ性格だと信じて、自己評価が低くなってしまう。自信がなくなってしまうのです。そうすると、人との関係で2つ困ったことがあります。

1つは、自分の気持ちや考えを言えない。相手の無理を受け入れてしまう。するとストレスや怒りが溜まってくる。普段はガマンしているが,抑えていた怒りが爆発して自己嫌悪になる。周りに適応できないとウツになったり、人と関わるのが怖くなる。適応障害の陰に隠れていて、適応障害が治らなくて、うつ病や社交不安障害になることもあります。

2つめは、相手も自分と同じ感受性を持っていると無意識に考えている。生まれたときから感受性が高すぎるのですが,鈍感な人たちを相手にしたとき、特に夫や子供など愛情の深い近い相手に「自分ならこうするのに」「相手にこうしてあげるのに」と思うのは誰でも当然のことです。しかしHSPの場合、相手の行動が「鈍感」、「配慮がない」と思え、ひいては「自分への愛情が足りない」「自分はこんなに思っているのになんて自分勝手な人」と親しい人の愛情を疑ったり怒りが出てきます。そのことで「自分が愛する人を傷つけてしまった」とまた自分を責めます。もともと心の優しい人ですから、これはつらい。あらたまこころのクリニックではアサーションという認知行動療法の1つの治療法をしています。「自分のことを相手に伝えても大丈夫なんですね」「自信が持てた」「相手とのコミュニケーションが客観的に捉えられるので嬉しい」と言った感想を頂くことがあり、お役に立っているようです。もともと,人に優しい人ですので、自分のことを伝え,相手に受け入れてもらえるととても嬉しいですよね。感覚の問題については、最近はマインドフルネスストレス低減法、自分へのいたわりにはマインドドフルネス・セルフ・コンパッションという治療法が進んできています。

 

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。