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2022.04.01 働く人の発達障害

ADHDの治療薬の種類から使い分け、処方までの流れを解説。

ADHDの治療薬の種類から使い分け、処方までの流れを解説。

あらたまこころのクリニックには、大人の発達障害の患者さんが来られます。「発達障害かどうか知りたい」とおっしゃられる方もいます。お話を聞くと、毎度の失敗に対人関係トラブルのお話がチラホラ。さらに詳しく聞いていくと、抑うつや不安といった、二次障害の存在も明らかになります。

今回は、そんな大人の発達障害の患者さんの中でも、大人になってから問題になりやすい、「不注意型」のADHDに対する薬物療法について、お伝えいたします。 薬価も高く少し特殊なお薬なため、患者様の中には「自分はどんな薬を飲むのか」と、不安になる方もいらっしゃいます。

ADHDのお薬について、あらたまこころのクリニックで考えている薬物療法をご説明します。患者様の不安が少しでも軽くなれば幸いです。

ADHD治療の薬物療法の位置づけ

ADHDは、「不注意」と「多動・衝動性」を症状とする発達障害の1つです。原因はまだ明確にはわかっていませんが、脳のなかの細胞と細胞の伝達を助けるお薬を使用することで、症状が軽減することが分かっています。

薬物療法は治療全体の中の一部で、環境への働きかけや、行動療法的アプローチといった「心理社会的治療」と、組み合わせておこなっていきます。一般的にADHDの治療は、心理社会的治療が優先して検討されますが、これらの取り組みだけでは生活が改善しない場合、薬物療法を行なっていくとされています。

関連記事:ADHD(注意欠如・多動症)とは?具体的な症状や特徴、診断の流れなど網羅的にご紹介

お薬を使う基準とは

ADHDの薬物治療は、日常生活を暮らすうえで、本当に薬が必要かどうかを慎重に見極めなくてはなりません。そこで、お薬を使うかどうかの1つの基準として、GAF(機能の全体評定)尺度があります。GAF(機能の全体評定)尺度とは、精神症状の重症度や、社会的・職業的機能を点数であらわし、評価します。

この尺度で機能の状態が、60以下の中等度(例:友達が少ない、仲間や仕事の同僚との葛藤)の場合に、薬物療法が検討されます。

ADHD治療薬の種類は4つ

医療法人和心会あらたまこころのクリニック

ここからが、この記事の本番。ADHD治療薬について、お話していきます。ADHDに使用するお薬は下記の4種類があります。

  • コンサータ
  • アトモキセチン(ストラテラ)
  • インチュニブ
  • ビバンセ

あらたまこころのクリニックでは、主にアトモキセチン(ストラテラ)・インチュニブ・コンサータを使用しています。どビバンセは、依存性があるかもしれないので、使用していません。大体、この3つで何とかやっています。

れもADHDの症状を改善するという点で共通ですが、若干の違いがあり使い分けが必要なため、それらについてご説明します。

コンサータ

コンサータの効果としては、脳内のドーパミンという物質を増やすことで、脳の覚醒度を上げ、ADHDの症状を改善します。不注意や頭の中の雑音、モヤモヤに強い効果を発揮しますが、脳の興奮を高めるため、不安を強めたり、躁状態を導く可能性がまれにあります。双極性障害や不安障害がある場合には、使用しないのが無難です。

認められた医療機関でしか処方できない、処方のたびに登録する必要があるなど不便さは少しあります。効果は、すぐに表れます。仕事の日の朝だけ服用して、休日は服薬しないで過ごすといった利用の仕方も可能です。

アトモキセチン(ストラテラ)

アトモキセチン(ストラテラ)の効果としては、脳内のノルアドレナリンという物質を増やすことで、症状を改善します。特に、過集中に対して視野を広げる効果があると言われています。不安症状の軽減や、双極性障害やうつ病を併存する患者さんにもADHD症状への効果を認める研究があるため、併存疾患がある患者さんに対しても使用することができます。

服薬を始めた時期に、吐き気や食欲低下がみられることがあるので少量から始め、ゆっくり増やしていきます。効果が表れるまでに1-3カ月間と時間をかけてゆっくり効果が出てきます。

インチュニブ

イニチュニブの効果としては、α2Aアドレナリン受容体を刺激することで、症状を改善します。多動性や衝動性や多集中に効果があると言われています。前頭葉の働きをよくするだけでなく情動を安定させる働きもあるため、イライラ・癇癪・衝動性・ルールが守れないなどが強い場合には優先されるお薬です。つい、余計な一言を口に出してしまって人間関係、夫婦関係でトラブルが起きるようなときに効果があることもあります。

効果はすぐに表れますが、飲み始めは眠けと血圧が下がる(もともと高血圧として開発された)ので、少量から始め、慣れてきたら増量して適量を探します。不安症などの併存症があっても使いやすい。「ピタッとはまる」ととても、役に立つのですが、ジェネリックがなく、薬価が高いので、医療費の助成制度をおすすめします。

ADHD治療薬の処方までの流れ

アプローチ

「ADHD(発達障害)かもしれない」と来院される方の困りごとは様々です。具体的には、以下のような症状などで相談される方が多いです。

  • 時間マネジメントができない・うっかりミス
  • 思い込み、聴き間違いが多い
  • 指示通りできない、同じミスを繰り返す
  • 人間関係が上手くいかない
  • 整理整頓ができない

一見、ADHDの症状に見える不適応行動ですが、実はすべてがADHD由来とは限らないため、安易にADHD治療薬を処方することはできません。例えば、視野の狭さが「衝動的に反応」した結果ならADHDですが、「細部にひどくこだわる」ようなら自閉スペクトラム症(ASD)の認知特性になります。そのため、しっかりと話を聞き、ASDや精神疾患による症状などと見分けていく必要があります。

ADHDの治療薬の処方は、下記の手順で決めています。

  1. お話を聞く(困りごとの聴取)
  2. ADHDのタイプを分類する
  3. 処方(複数あるお薬の選択)

お話を聞く(困りごとの聴取)

お話を聞く際は、”どんな状況”で、“何がきっかけ”で、“似た行動は他にどんな時に起きているか”を、聞いていくことが大切です。そうすることで、困り行動の法則性や流れが理解でき、症状の見分けや治療方針の策定に繋がります。

ADHDのタイプを分類する

ADHDには「不注意」と「多動・衝動性」の症状がありますが、大人になると“主体的に考え行動すること”が求められるようになるため、多動・衝動性に比べて不注意の症状が出やすいです。そのためADHD治療薬の選択は、「どんな」不注意かに注目します。不注意は、その成り立ちから下記の4つに分けることができます。

  1. 覚醒度の低さ:ボーっとして、見落としが多く、何かを始めるのにも時間がかかる。
  2. 興味がないことに注意が払えない:白昼夢にふけったり、つい他のことを考える。
  3. 多集中:目の前の多くのことに注意が向き、一つのことに集中できない。
  4. 過集中:一つのことに集中しすぎて周りが見えない状態。

処方(複数あるお薬の選択)

最後は分類したタイプごとにお薬の処方です。ADHDの不注意のタイプにあわせた処方例をご紹介します。ここで大切なことは、3つ使ってみて、効果が得られなかった時は薬物療法の中止も検討する、ということです。1つだけでは、効果がみられなかった場合は、感情調整薬(気分の波を穏やかにする)や、抗精神病薬(脳の興奮を抑える)といった薬の使用も検討し、併用することも考えます。

1)覚醒度の低さ

注意集中や実行計画をつかさどる脳の部位が上手く働いていない可能性があるため、この場合、覚醒度を上げるコンサータを使用することがあります。

2)興味がないことに注意が払えない

ADHDの特性として不注意が現れる場合が多いです。この場合、注意を向けることによるメリットを伝えて、本人の指向性を引き出します。

3)多集中

必要なものに集中できるようにするために、インチュニブが有効なこともあります。イライラが落ち着いている方の場合はコンサータを使用する場合もありますが、イライラが強い場合はインチュニブを使用します。インチュニブには、イライラや敏感さを穏やかにする効果もあります。

4)過集中

視野を広げるために、アトモキセチン(ストラテラ)を使用します。

ADHD治療薬の注意点と、上手なつき合い方

ADHDの治療薬は、その効果によって症状を抑えることができますが、一時的なもので障害自体を治すものではありません。そのため、治療薬との上手なつき合い方が大切になります。長く飲み続けることで依存性や耐性がついてくることもあるため、薬の作用や服用回数・時間、副作用の影響など、ご自身の症状や状況にあった薬を選択するためにも、医師と相談し、納得したうえで薬物治療をはじめましょう。

飲み忘れや薬を中断したい場合も、ご自身の判断でまとめて飲んだり中断することによって症状が悪化する場合がありますので、必ず医師の判断をあおぐようにしてください。

まとめ

今回は、不注意型ADHD患者さんに対する治療薬の選び方についてお伝えしました。

どのお薬も、ADHD症状に効果があると言われていますが、それぞれに特徴があり、患者さんの状態や求めるものに合わせて使い分けが必要です。この際に重要になるのは、患者さんからの説明が治療の方針を決定づけるため、患者さんのお話をしっかりと聞いて「どんな」不注意かを見分ける事です。

これは、治療者と患者さんの共同作業となります。あらたまこころのクリニックでは、スタッフ一同、患者さんがお話をしやすいような雰囲気づくり、関係づくりに日々励みながら、治療を進めていきたいと思っております。ADHDの薬物療法が気になる方は、一度、ご相談いただければと思います。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市からアルコール依存症専門医療機関、日本精神神経学会から専門医のための研修施設などに指定されている。