疾患について DISEASE
カテゴリ
ADHD治療薬について
【目次】
お薬を使う基準と薬物療法の位置づけ
こんな手順でお薬を決めています
ADHD治療薬は4つ
4つのお薬の使い分け
おわりに
はじめに
ADHDは①多動性/衝動性と②不注意を症状とする発達障害の1つです。
①が優位な多動/衝動型、②が優位な不注意型、さらに両方がみられる混合型の3つに分けられます。
原因はまだ明確にはわかっていないのですが、脳のなかの細胞と細胞の伝達を助けるお薬を使用することで症状が軽減することが分かっています。
今回は、ADHDの治療に使用されるお薬について、お伝え致します。
お薬を使う基準と薬物療法の位置づけ
お薬を使うかどうかの基準
ADHDの症状が見られたからといって、すぐに薬を使うのではなく、日常生活を暮らす上で、本当に薬が必要かどうかを慎重に見極めねばなりません。そこで、
お薬を使うかどうかの1つの基準として、GAF(機能の全体評定)尺度があります。日常生活がどれくらいのレベルなのか?を点数で表します。
この尺度で60以下となる場合、つまり、不適応の状態が中等度(例:友達が少ない、仲間や仕事の同僚との葛藤)場合に、薬物療法が検討されます。
ADHD治療における薬物療法の位置づけ
上の図をご覧ください。これは、ADHD治療の全体像を示しています。
これを見ればわかる通り、薬物療法は治療全体の中のごく一部です。
左側の環境への働きかけや行動療法的アプローチといった、心理/社会的治療が薬物療法に優先して検討されることもあります。これらの取り組みだけでは、生活が改善しない場合、薬物療法を行っていくとされています。
こんな手順でお薬を決めています
上の図が、お薬を決める手順となります。
ここで大切なことは
①ADHD治療薬は4種類ありますが、まずは、安全な薬物から試してみることから始める。当院では、多くの場合、ストラテラ(アトモキセチン)、インチュニブ、コンサータ3つの薬の中から選びます。
②3つ使ってみて、効果が得られなかった時は薬物療法の中止も検討する。
③1つだけでは、効果がみられなかった場合は、感情調整薬(気分の波を穏やかにする)や抗精神病薬(脳の興奮を抑える)といった薬の使用も検討し、併用することも考える。
ということです。
ADHD治療薬は4つ
ここからが、この記事の本番。ADHD治療薬について、お話していきます。
お薬は4種類あります。
- コンサータ
- ストラテラ(アトモキセチン)
- インチュニブ
- ビバンセ
です。当院では主にコンサータ・ストラテラ・インチュニブを使用しています。それらについてご説明します。
コンサータ
脳内のドーパミンという物質を増やすことで、脳の覚醒度を上げ、ADHDの症状を改善します。特に不注意や頭の中の雑音に効果があると言われています。
ストラテラ、アトモキセチン
脳内のノルアドレナリンという物質を増やすことで、症状を改善します。特に、過集中に対して、視野を広げる効果があると言われています。
インチュニブ
α2Aアドレナリン受容体を刺激することで、症状を改善します。多動性や衝動性や多集中に効果があると言われています。
そのほか、3つのお薬の特徴を比較した図を掲載します。興味のある方はご確認ください。
3つのお薬の使い分け
どれも、ADHDの症状を改善するという点で共通ですが、若干の違いがあり、使い分けが必要です。
コンサータは、不注意に強い効果を発揮しますが、脳の興奮を高めるため、不安を強めたり、躁状態を導いたり可能性があり、双極性障害や不安障害がある場合には、使用しないのが無難でしょう。
逆に、ストラテラ、アトモキセチンは不安症状を軽減する効果ありとする研究があったり、双極性障害やうつ病を併存する患者さんに使用しても、ADHD症状への効果ありとする研究があったりして、併存疾患がある患者さんに対しても使用することができます。
インチュニブは、前頭葉の働きをよくするだけでなく、情動を安定させる働きもします。イライラ・癇癪・衝動性・ルールが守れないなどが強い場合には優先される選択肢でしょう。つい、余計な一言を言って人間関係、夫婦関係でトラブルが起きる様なときに効果があることもあります。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、ADHDのお薬についてお伝えしました。
どのお薬も、ADHD症状に効果があると言われていますが、それぞれに特徴があり、患者さんの状態や求めるものに合わせて使い分けが必要でしょう。
ADHDの薬物療法に興味がおありの方は、医師に一度ご相談頂ければと思います。