名古屋市瑞穂区の心療内科ならあらたまこころのクリニック「症状別のよくある質問」ページ

疾患について DISEASE

2020.09.23 働く人の発達障害

大人の発達障害シリーズ① アスペルガー障害がなくなった

大人の発達障害シリーズ① アスペルガー障害がなくなった

【目次】
診断基準が変わっても、患者様の困りごとがなくなるわけではない
アスペルガー症候群という病名がなくなって、どうなったの?
スペクトラムという考え方
自閉症スペクトラムとは?
神経発達障害という分類
おわりに

はじめに

 アスペルガー症候群という言葉は、一般にも認知され、今ではかなり普及している言葉だと思います。ちなみに、amazonでアスペルガー症候群で検索すると1000冊以上の本がヒットします。しかし、最近、精神医学の世界では、アスペルガー症候群という名前はあまり使われなくなり、ASD、自閉症スペクトラム障害という言葉で統一されつつあります。

 精神疾患の診断分類として世界的に広く利用されている診断基準が2つあります。DSM-5(アメリカ精神医学会の診断統計マニュアル第5版)とWHO(世界保健機構)が使っているICD-11、国際疾病分類です。

 DSM-5は、2013年にDSM-Ⅳ(ローマ数字の4)から、ICD-11は、2019年に、ICD-10から改訂されました。

それにより、患者様の支援に何か影響があるのでしょうか?

いったい何が変わったのでしょうか?

今回はその点について見ていきましょう。

診断基準が変わっても、患者様の困りごとがなくなるわけではない

アスペルガー症候群診断の病名がなくなったことで、驚かれる人も多いかと思います。あらたまこころのクリニックでも、多くの発達障害の患者様が、精神保健福祉手帳や障害年金を使っておられ、アスペルガー症候群という病名がなくなり、診断書の記載が変わることで、「手帳や年金を次からはもらえなくなるのでは?」と驚かれたり、不安になったりする方もいらっしゃいますが…。

大丈夫です。

診断の方法(基準)が変わっただけで、その人の困りごとがなくなったわけではありませんから。その困りごとを、新しい診断名に変えるだけです。ご心配ありません。

アスペルガー症候群という病名がなくなって、どうなったの?

DSM-Ⅳ→DMS-5

現在、最も広く使われているDSM(アメリカ精神医学会の診断統計マニュアル)が、DSM-5として2013年に改訂されました。

以前のDSM-Ⅳで、自閉症・アスペルガー症候群・特定不能の発達障害は、「広汎性発達障害」というカテゴリーにまとめられていました。

DSM-5では、これを全部、自閉症スペクトラム障害(ASD)という1つの病気のカテゴリーに入れたのです。

ですから、DSM-5では、アスペルガー症候群という病名が使われなくなりました。

スペクトラムという考え方

 スペクトラムとは連続体という意味です。連続したひとつのまとまりの中に、自閉症やアスペルガー症候群などがあるというイメージです。実際、「この人は自閉症」「この人はアスペルガー」と、明確に境界線をきっちり引けない症例(発達障害のグレーゾーン)が多いのです。大人の発達障害ではグレーゾーンが問題となり、成人するまで特徴が目立たなかった症例では特にそうです。

加えて、定型発達(知的障害も発達障害もない「健常者」)の人と自閉症スペクトラム障害までは続いていて、どこかで線を引けるものではないと言う考え方でもあります。誰でも、どこかしらに多少の発達の偏りがあるかもしれません。その濃淡や、社会的に困っているかいないかの違いです。

 ある先生は「塩水」のたとえを使われます。スペクトラムを「塩水」だとすると、薄い塩味、濃い塩味など、それぞれ1人ひとり、違う個性を持っていますが、「塩水」と言う点は共通しているのです。

 ですので、同じASD(自閉スペクトラム障害)と一括りで診断されても、その人の個性、困りごとや発症した状況は、一人ひとり、違うので丁寧に見ていくことが支援では、ますます大事になってきます。

自閉症スペクトラムとは?

それでは、自閉症スペクトラム障害に共通する特徴とは何でしょうか?

DSM-5では、

  1. 社会的コミュニケーションと対人交流の質的障害
  2. 著しい興味の限局やパターン化された行動様式

の大きく2つが定義されています。

ちなみに、自閉症スペクトラム障害という考え方を提唱した、イギリスのローナ・ウイングという研究者は、「自閉症の3つ組+感覚過敏または鈍麻」の4つ(下図参照)を特徴として定義していますが、①②にこの4つの特徴が含まれています(詳しくは後のブログでお伝えします)。

神経発達障害という分類

DSM-5でもICD-11でも、神経発達障害という、新しいグループが作られ、そこにASD(自閉スペクトラム障害)やADHDを入れました。

DSM-5では、「幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害」の一部から、「神経発達障害」が取り出されました(下図)。

ICD-11では、「神経発達障害」に、ADHDやASD(自閉症やアスペルガー症候群など)や学習障害LDといった障害がまとめられました(下図)。

ASDとADHDの合併が認められた 

 もう一つ大事なことは、実際には、多く見られるADHDとASDの合併が、やっとDSM-5で認められ、ICD-11では、「とてもありふれた」(common)とされ、いう扱いになりました。(詳しくは、後のブログで取り上げていく予定です)

 実は、診察場面ではASDとADHDの両方の特性が見られるケースは多いのですが、これまではASDとADHDのどっちか1つしか、病名がつけられなかったのです。これで実際の診察場面に近づき、かなり、すっきりした感じです。

 では、この「神経発達障害」とはどういう概念なのでしょうか?DSM-5では、発達期に特性が明らかになり、対人交流や学習、職業などの場面で何らかの障壁になる障害を総称したものとして定義されています。

「①生来性の脳機能障害を基盤に持ち、②幼少期から現在まで、一貫して存在する発達の特性」

と言えるでしょう。

大人の発達障害、特の女性の大人の発達障害、重ね着症候群などが、注目されている。

 今回は、DSMとICDという二つの世界的な診断基準が大幅に改訂し、どちらもアスペルガー症候群やその他の発達障害が「神経発達障害」にまとめられていった流れを見ていきました。

神経発達障害がほかの精神疾患と違っている点は、「①生来性の脳機能障害を基盤に持ち、②幼少期から現在まで、一貫して存在する発達の特性である」という点です。ゆえに、発達障害の診察では、生まれてから現在までの育ちの過程(生育歴)を大変重視するのです。

 ある時から突然、症状が現れるのではなく、「そういえば、昔からこんなとこあったな」と言えるようなものであるということです。

大人の発達障害、特に女性、重ね着症候群などについても、注目されています。(詳しくは後のブログで解説する予定です)

「自分は発達障害かも」とお悩みの際は、専門家に相談しましょう。