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疾患について DISEASE

2020.09.16 睡眠障害・不眠症

眠る力を引き出す治療と邪魔しない薬物療法 不眠症の講演を行いました

【目次】
不眠症の治療  患者さんの眠る力を引き出す治療と邪魔しない薬
不眠症への薬物療法にはリスクもある
不眠症について
原発性不眠への短期睡眠行動療法
おわりに

はじめに

9月7日(月)“会場”にて、あらたまこころのクリニック院長の加藤が、“参加者の職業など”の方々に向けて、睡眠障害のセミナーを行いました。

今回は、その内容の一部を皆様にご紹介したいと思います。

不眠症の治療

不眠症の治療は

①薬物療法

②非薬物療法(睡眠衛生治療教育、環境調節、睡眠短期行動療法など)

に分けられます。

薬物療法にはリスクもあり、不眠症の治療では、薬物療法に非薬物療法を一部取り入れながら、行っていきます。以下で詳しくお伝えしますが、医師が適切と判断した患者様には、短期睡眠行動療法という治療プログラムをお勧めすることもあります

不眠症への薬物療法にはリスクもある

睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)は漫然と処方されやすい

不眠症に対して、よく処方される睡眠薬はベンゾジアゼピン系と呼ばれる系列のお薬です。飲めばたちどころに不安や緊張や不眠などが解消され、「切れ味が良い」「魔法の薬」と称され、患者様にも喜ばれます。また、安全性の高く、大量服薬しても致死量になりにくく医師にも好まれます。

それ故に、検査所見で異常のない身体症状や不定愁訴、診断がハッキリしない場合「とりあえず、処方してから様子を見よう」と処方され、その使い勝手の良さと、効果の即効性から、医師・患者様両方に好まれ、以後も、長期にわたって漫然と処方されることがあります。

睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)の副作用

かといって、ベンゾジアゼピン系薬剤に副作用がないわけではありません。

時に、認知機能の低下、日中の眠気、一過性の健忘、せん妄などが起こりますし、長期的には依存などのリスクがあります。ここが、ベンゾジアゼピン系の怖いところです。

依存が起こると…

依存が起こると以下のような問題が生じます。

  • 耐性:同じ要領では効果が得られなくなります。
  • 離脱症状:薬が切れた反動で、薬を飲まないと、強い不安や心身の苦痛を感じるようになります。
  • 常用量反跳性不安:通常容量でも、軽い離脱症状が起こり、それに対してさらに処方を増やし、薬の量や種類が増える悪循環が起こることがあります。

上の図をご覧ください。ベンゾジアゼピン系薬剤のなかでも、一時的にかつ強く作用する薬は、薬を飲んだ直後は不安や緊張が治まりますが、薬の効果が切れてきたころにその反動で、不安や緊張がぶり返します。このようなプロセスを繰り返す中で、お薬が手放せなくなってしまいます(常用量反跳性不安・依存の形成)。つまり、常用量反跳性不安を起こさないような処方の工夫が必要になり、医師の正しい処方とそれを守った正しい服薬が大切なことがわかります。

なお、当院院長の加藤正は睡眠薬などの依存を防止する啓蒙活動を行い、名古屋市医師会において、患者様が薬を手放すための医師向け講演や論文執筆を行なっています。

不眠症について

不眠症の定義

不眠症は、

睡眠が、質や量において十分でなく、昼間も眠気が残って仕事などに支障が出る状態

と定義されます。具体的には、寝つきが悪い・夜中に目が覚める・朝早くに目が覚める・眠れたけどぐっすり眠れた感じがしない・昼間も疲れが取れず、眠気が残る・集中力や注意力、記憶力が落ちる・昼間イライラする・眠れないことに不安になる、といった形で現れます。

また、①眠るまでに時間がかかるタイプ②途中で目が覚めるタイプ③朝早くに目が覚めるタイプ④ぐっすり眠れた感じがしないタイプの4つに分けられ、

日本人の成人の3人に1人は、少なくとも時々は不眠になり、そのうち10-15%は慢性的な不眠と言われています。

不眠の背後にある心理的要因

上の図をご覧ください。ほかの精神疾患と同じように、不眠症にも生物・心理・社会的な要因があります。その中でも、心理的要因では“考え込み”による悪循環が形成され、それが不眠症の慢性化を引き起こしていることが多く、あらたまこころのクリニックでは、主治医に加えて、心理師や看護師によるチーム医療で、この悪循環を解消していく事を重視しています。(詳しくはこちら)

不眠が慢性化すると…

長く続く不眠症は、うつ病(2倍)・高血圧(2倍)・糖尿病(2-3倍)などのリスクが高まるという報告があります。

このように長く続く不眠症で、かつ、精神疾患や身体疾患が原因にないものは、原発性不眠といわれます。
昼夜逆転の生活、徹夜続きの生活、環境の変化などで起こった一時的な不眠が、その原因が取り除かれても継続している状態(=眠れない状態が習慣化してしまっている状態)です。

このような不眠に対する、薬を使わない治療法に短期睡眠行動療法があります。

原発性不眠への短期睡眠行動療法

短期睡眠行動療法

原発性不眠には渡辺範雄先生が開発された睡眠短期行動療法がおこなわれます。

この治療では、「眠れない癖(維持因子)」を「ぐっすり眠る癖」に変えていくために、①睡眠日誌をつけ、②睡眠環境や生活習慣を整え、③寝床と「睡眠」を条件付け、④睡眠力(ぐっすり寝る力)を高める取り組みを行います。詳しくはこちら()のブログに譲るとして、今回は不眠の方に関わらず、皆さんにお役に立つ、質の良い睡眠のコツについてお伝えしていきましょう。

光、音、体温への対応が重要

質の良い睡眠には、光、体温、音への対応が重要です。ひとつずつ見ていきましょう。

光や音

睡眠中の光や音は、質の良い睡眠を妨げます。睡眠中は意識がないので気が付きませんが、睡眠中の刺激に対して、脳はしっかり反応しています。特に光は、覚醒を促す刺激であり、朝日で必要以上に早く目が覚めてしまうことは皆さん経験されたことがあると思います。

なので、寝室の音や光はシャットアウトするほうがいいでしょう。朝日が昇ってからも部屋を暗くするために、遮光カーテンを引いたり、アイマスクを使うのも良いでしょう。睡眠中に隣家や道路から音が聞こえてくるようなら、二重窓にしたり、耳栓を使うのもいいかもしれません。

もちろん、寝る前にスマホなどのブルーライトを浴びるのも控えたほうが良いです。

体温

上の図をご覧ください。この図で分かることは、深部体温が下がり始めて、3-4時間ほどたった23時ごろに眠気がピークに達するということです。つまり、23時ごろに熱いお風呂に入ったり、運動したりするなどして体温を上げてはいけません。この時間に体温が上がることで“体温と眠気のリズム”が崩れてしまいます。お風呂に入るのであればぬるめのお湯にして、布団に入ってからスムーズに体温が下がるようにしましょう。

睡眠環境チェックリスト

先ほどお伝えしたことを具体的にまとめたのが、睡眠環境チェックリストになります。当院で実際に使っている用紙をアップしました。睡眠短期行動療法でも利用される子のチェックリストを通して、自分の生活習慣や睡眠環境を見直し、すぐにできそうなところから少しずつ改善していきましょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

今回は、院長の加藤が行った不眠症セミナーの中から、①不眠症に対する薬物療法のリスクについて②不眠症について③原発性不眠症(背景に精神疾患や身体疾患などがない“眠れない癖”がついてしまった不眠症)に対する短期睡眠行動療法について④質の良い睡眠のための工夫(睡眠衛生教育)についてお伝えしました。

あらたまこころのクリニックでも、薬に頼り切らない治療の一環として、医師が適切と判断した患者様に対して、短期睡眠行動療法を実施しております

興味のある方は、一度医師にご相談ください。