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疾患について DISEASE

2020.10.10 働く人の発達障害

シリーズ発達障害② 発達障害は生活の障害

【目次】
発達障害=発達特性+生活の障害
早期発見するだけでなく、特性を把握する
まとめ

はじめに

 前回は、DSMやICDといった診断分類の改定によって、発達障害が精神疾患の中で、どのような位置づけになっていたか。従来のアスペルガー症候群などの概念がどのように整理されていったかを見ていきました。

 また、発達障害が「生まれ持った特性」であり、その特性は「今後も一貫して残っていく事」をお伝えしました。

 今回はそのうえで、①発達障害が特性と環境との相互作用によって生じる“生活障害”であること、②発達障害の治療・援助では環境調整が重要であること、③子供の段階で発達特性が見つかった際に大切なこと、についてお伝えします。

発達障害=発達特性+生活の障害

前回お伝えした通り、発達障害とは「①生来性の脳機能障害を基板に持ち、②幼少期から現在まで、一貫して存在する発達の特性」です。つまり、発達特性をお薬やトレーニングで「完全に無くす」ことは出来ないと考えられています。

つまり、発達特性を変えていくというよりは、環境を調整すること・環境を選ぶことのほうが重要です。

通常の疾患ならば、同じ診断名で重症度が同程度であれば、同じような症状を呈すると考えられます。しかし、発達障害は(=生活上の障害)は、本人の発達特性と環境との関係やかかわりで生じるため、同じ程度の発達特性でも、“ある子は問題とならず、ある子は問題となる”と言うことが起こります。

(例えば、ASD的な“興味の限局”“こだわり”“一つのことを突き詰める”ことが研究職には必要な“特性”であるように、特性と環境のマッチングがあってさえいれば、発達特性であり、発達“障害”にはならないのです。)

これが、発達障害が“生活の障害”たるゆえんです。

環境調整を治療の軸として、そこに薬物療法を追加する場合がありますが、薬物療法だけで発達障害の治療は出来ません。その子らしく、生活の中で自身の持ち味を活かしながら生きていくためのお手伝いをすることが発達障害の診療・支援になります。

早期発見するだけでなく、特性を把握する

発達障害を発見する上では、3歳児検診などが重要な機会になります。

とはいえ、単純に早期発見すればいいか、というとそうでもありません。

重要なことは、“発見後にいかに介入するのか”です。介入の方向性は、①生活障害の予防、②得意なところを伸ばす。の2点にあります。

①生活障害の予防

発達特性をより早期に知ることができれば、上手く行きにくい部分の予想がつき、困りごとが生じる前に対応できます。単に“診断名”を伝えるのではなく、“発達特性に対応できる技術を身につけることの重要性”を伝えたほうがより治療的です。

②得意なところを伸ばす

発達障害の診断は、その子のだめなところをできないところを見つけて集めていく作業という側面もあります。しかし、だめなところばかりに目を向けて、だめなところをなくしたら、その子に何もなくなってしまう結末は誰も望んでいません。

発達特性は短所と捉えられがちですが、長所の裏返しでもあるのです(たとえば、ASDの“感覚の過敏さ”はその人にしかわからない繊細な感覚として、職人の世界で重宝されることもあるでしょう。“こだわり”はミスなく作業することを求められる職場で重宝されます。)。

苦手なことと同じくらいに得意なところにも目を向けてその両面を公平に知ろうとすることが大切です。

まとめ

現在、発達特性をお薬やトレーニングで「完全に無くす」ことは出来ないと考えられており、発達障害の治療では、発達特性を変えていくというよりは、環境を調整すること・環境を選ぶことのほうが重要。

“発達障害における生活障害”とは、発達上の癖がなかなか理解されず、適切な援助や練習の工夫が、うまくなされないことで、社会生活上の困難が、本人やその周囲に起きている状態。

単に発達特性を発見するだけではなく、明らかになった特性の情報を基に、子育て支援を充実させ、生活障害の予防策がとられる中で生きる力を育てることが大切。

「治すべき疾患」ではなく、「育てるべき特性」と発達障害をとらえて、当事者に寄り添える職種環境が広がっていくことを願っています。