名古屋市瑞穂区の心療内科ならあらたまこころのクリニック「症状別のよくある質問」ページ

疾患について DISEASE

2020.07.14 アルコール依存症

お酒を減らしたい悩み 適量ってあるの?

お酒を減らしたい悩み 適量ってあるの?

は、【目次】
お酒好きを止めたくて苦労した偉人
お酒の適量は
アルコールの量を計算する
アルコール依存症の治療
まとめ

はじめに

皆様はお酒はお好きですか?夏はふろ上がりによく冷えたビールを、寒い冬には熱燗で一杯、週末には仲間で集まって酒と肴で会話も弾みます。

しかし、飲みすぎれば次の日に支障が出るし、身体や頭は重いし、酔っていい気分の反動で気持ちが暗ーく沈むなんて方も…。

お酒は、楽しいのものでもあるし、怖いものでもあるのです。

では、程よいお酒との付き合い方は??お酒の量は、何を目安にしたら良いでしょう??

偉人でも、やはりお酒はやめられない

実は、お酒をどれだけに抑えたら良いのか?と言う悩みは昔からありました。

今から800年前、鎌倉時代に、お酒を減らしたいと誓いを立てた偉い僧侶がいます。2022年のNHK大河ドラマに、「鎌倉どのの13人」が三谷幸喜脚本で決まりました。とても楽しいそうです。北条義時が主人公で、そのライバルが後鳥羽上皇ですが、そのブレーンを務めた人を義父に持つ人で、尊勝院宗性(1201-1278)という東大寺の僧侶です。学僧として名高く、朝廷行事まで務めるほど優秀で、様々な記録を後世に残しています。そんな偉くて優秀な人でも、お酒好きは止められなくて、苦労されたようです。
彼は34歳の時、禁酒の誓いを立てました。
「飲酒は諸仏が禁じているから、今日から1000日酒を止める」と決意を書き残しています。けれども、「酒は薬でもあるので、1日に3合は飲んでも良い」とも書いていて、アレ?どこが禁酒なの?。
当人もまずいと思ったのか、42歳の時には、「私は12才の夏から41歳の冬まで酒を愛して多飲し,酔っては暴れてきた。恥ずかしい限りだった。これからは、きっぱりとやめる。二度と飲まない」と再び、禁酒の誓いを立てた記録が残っています(日本中世史の核心、本郷和人、朝日出版社より抜粋)。
その後、お酒を止めたかどうかは怪しいけれども、減酒または禁酒をして、活躍され歴史に名前を残す程の大きな業績を残し、800年前の時代に、78才もの長寿を全うされたのは事実です。とても大切なポイントです。

お酒の適量は?

お酒に「適量」はなく、飲んだ分だけ害になるという怖い研究もあります。生まれつきの肝臓のアルコール代謝酵素の違いで、少しのお酒で顔が赤くなって気持ちが悪くなるタイプ、いわゆる下戸(ゲコ)と呼ばれる人です。
もう一方は、顔が赤くならず、たくさん飲めば頭がさえテンションが上がっていくタイプです。
アルコールパッチテストという方法で、自分がどっちの体質かを知ることができます。国内外の調査で、多く飲めば飲む程、200種以上の病気が増え、アルコール依存症にもなりやすい。顔が赤くなるタイプの人は、ノドなどのガンが多くなるという調査があります。お酒を減らすほど、死亡率が低くなるということが分かっています。

認知症とも関係が深く、フランスの研究では、慢性的なアルコール有害使用は、認知症の発症を3.3倍に高め、特に65才以下の早期認知症がでは、半分以上がアルコール依存症関連でした。日本では、40才から69才までの一般住民を調べた研究で、1週間の合計が150g以上の男性が、週に1,2回の休肝日を作ると、がんや脳血管疾患などの死亡率が低いことが分かりました。少なくすれば、健康の害を減らすことができます。

お酒が増え、ある線を超えてしまうと、戻れなくなります。コントロールを失って、飲酒が生活のすべてを塗りつぶしてしまう状態になります。アルコール依存症です。一線を越えないために気をつけたいものです。

では、どうやってコントロールしたら良いでしょう?

アルコールの量を計算する

ダイエットをする時は、糖質のグラムやカロリーをチェックしますね。同じようにお酒を、グラム単位で計算して目安にします。
以下の図を参考にしてみてください。

厚労省は、第一次健康日本21において、男性では1日20g以下、女性と高齢者では10gを「節度ある適度な飲酒」と規定しています。これとは別に、休肝日を週に2日以上作ることも推奨しています。ビール500ml(ロング缶)1本なら20gです。

つまり、男性の場合、ビール500ml(ロング缶)1本以下を週に5日以下飲む人なら、ギリギリ「害の少ない飲酒」ですこれが、男性の健康的な飲酒の限度かもしれません。きびしいなあと思われたかもしれません。
(ただし、厚労省の基準(健康日本21)では、一日にビール1000ml(女性と高齢者は半分)でも、ガンや高血圧、脳出血、心臓病、糖尿病など生活習慣病のリスクが高まると言われています。飲酒に関連する多くの健康問題の危険性は、1日平均飲酒量とともにほぼ直線的に上昇するのです。約1036万人(日本人の10人に1人)が該当します。)
なお、あらゆる疾患の危険性が上昇する飲酒量は、1日当たりの純アルコール摂取量が男性44g以上、女性22g以上であり、「健康日本21(第二次)」で、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」を、1日当たりの純アルコール摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上と定義しています

アルコール依存症の治療

アルコール依存症の治療には2種類あります。原則は断酒ですが、減酒治療も広がっています。
以前は、アルコール依存症の治療といえば、断酒一択でした。
2020年3月に、飲酒量低減薬セリンクロ(ナルメフェン)が発売され、減酒治療という選択肢が増えました。
(ただし、セリンクロによる減酒治療が適用される方とされない方があり、医師の医学的見地のもとで判断されます。詳しくはこちらをご参照ください。)

糖尿病や家族や社会的な問題がある時は、断酒を目標にした方が良いでしょう。

減酒治療は、お酒を飲まない「休肝日」を設定するなどして、個々の患者のペースに合わせて目標を設定できるのが魅力です。

先ほど、「飲酒を止める、止めない」で悩んだ尊勝院宗性師の逸話をご紹介しましたが、現代では本人の「変わりたい」という気持ちがあれば、アルコール依存症は治療が可能です。

依存症になるのは本人の自己責任ではなくて、病気です治療で改善できます。自身や家族の飲酒による問題行動に気付いたら、かかりつけの心療内科、こころのクリニック、精神科に相談してください。

まとめ

飲酒は、ガン・高血圧・脳出血・心臓病・糖尿病など生活習慣病、認知症などのリスクを高めます。
理想的には、男性では1日平均20g、女性では平均14~10g以下の飲酒が目安になるとされています。上記の図を参考にしてください。
飲酒がある一定の量を超えると、脳の機能や構造が変わり、アルコール依存症となります。アルコール依存症は、飲酒が生活のすべてになってしまう恐ろしい病気です。
依存症になるのは本人の自己責任ではなくて、病気です治療で改善できます。自身や家族の飲酒による問題行動に気付いたら、かかりつけの病院か精神科に相談してください。

 

::::::::::::::::::::

<アルコール依存症についての記事はこちら>

アルコール治療案内

::::::::::::::::::::

関連する情報

監修

加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長/名古屋市立大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医
所属学会 / 日本精神神経学会、日本うつ病学会、日本嗜癖行動学会理事、厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
クリニック/名古屋市からアルコール依存症専門医療機関、日本精神神経学会から専門医のための研修施設などに指定されている。