あらたまこころのクリニック「症状別のよくある質問」ページ

公開日: |更新日: 睡眠障害・不眠症

不眠症の5つの原因とは?具体的な原因例から治療法まで解説

不眠症の5つの原因とは?具体的な原因例から治療法まで解説

睡眠薬の正しい服用方法については、「睡眠薬の正しい服用方法とは?服用の方法から、よくある睡眠薬の質問について」をぜひ読んでみてください。不眠症は、「眠れない」といった夜間の苦痛だけでなく、日中の眠気やだるさ、体の不調など、日常生活にも影響があらわれます。不眠症が続くと、うつ病や生活習慣病のリスクが高まるともいわれているため、あまりよく眠れていない方は注意が必要です。

今回は、そんな不眠症の原因について触れていきます。睡眠に関して気になっている方は、ぜひ参考にしてみてください。

5人に1人が不眠症?

日本人の平均睡眠時間は、6時間以上7時間未満といわれていますが、人によって必要な睡眠時間はさまざまで、個人差があります。しかし、厚生労働省のe-ヘルスネットには、以下のような記述があり、日本人の5人に1人が不眠症の恐れがあります。このことから身近な多くの人が睡眠に関して問題を抱えていることが分かります。

日本人を対象にした調査によれば、5人に1人が「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」と回答しています。

引用元:不眠症 | e-ヘルスネット-厚生労働省

 

不眠症とは、「なかなか寝付けない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」などの不眠の状態が1ヶ月以上続き、倦怠感や頭痛など、日中に心身の不調があらわれるため、日常生活にも影響をおよぼしてしまいます。不眠症状は、大きく以下の4つに分かれており、早期に発見して適切な治療を行うことにより、改善することが可能です。

不眠症状の4つのタイプ 状態
入眠障害 寝床に入ってもなかなか眠ることができず、寝つきが悪い状態
中途覚醒 入眠から起床するまでに、頻繁に目が覚めてしまう状態
早朝覚醒 望む時間よりも前に目が覚めてしまい、再入眠できない状態
熟眠障害 睡眠時間を十分に取っているにもかかわらず、眠った感覚が得られない状態

不眠症の原因は主に5つ

不眠の原因はさまざまですが、眠りたいときに体を「覚醒」させる機能が「睡眠」を誘う機能より上回ってしまう、「睡眠」と「覚醒」のバランスの乱れが考えられ、主に5つに分けることができます。

<不眠症の主な原因>

  • 身体的原因
  • 生理的原因
  • 心理的原因
  • 精神医学的原因
  • 薬理学的原因

不眠症の原因によって対処法も変わるため、不眠の原因の診断がとても大切です。それぞれ以下で原因について詳しく解説していきます。

身体的原因

何らかの病気により、痛みやかゆみ、息苦しさなど、症状が続くことで寝付けないケースです。頻尿による夜間の目覚めも当てはまります。不眠の原因となっている身体的な病気や症状を治療することで、不眠症が改善されることがあります。

<身体的原因の例>

  • 高血圧や心臓病(息苦しさ)
  • 呼吸器疾患(せき、発作)
  • 外傷や関節リウマチ(痛み)
  • 湿疹や蕁麻疹(かゆみ)
  • 腎臓病(頻尿)

生理的原因

睡眠を妨げる環境や、生活習慣に原因があるケースです。交代勤務や海外出張など、体内リズムの乱れによっても不眠を引き起こしやすくなります。眠りやすい寝室の環境づくりや、心と体がリラックスできるような工夫が大切です。

<生理的原因の例>

  • 周囲の騒音
  • 部屋の温度(暑さ・寒さ)
  • 寝具が体に合わない
  • 時差ぼけ
  • 交代勤務

心理的原因

悩みや不安、緊張など、何らかの精神的なストレスが原因で起こるケースです。「眠らなくては」と意気込んでしまい、かえって頭がさえてしまったり、「何時間は寝ないと体に良くない」など、睡眠へのこだわりがかえって寝付きを悪くさせる場合があります。

<心理的原因の例>

  • 悩みやイライラ
  • 精神的ストレス
  • 睡眠に対するこだわり
  • 人生の大きな変化
  • 仕事上の問題

精神医学的原因

うつ病などの精神疾患が原因となるケースです。うつ病や神経症など、多くの精神疾患は不眠を伴うことが少なくありません。ただの不眠だと思っていたら実はうつ病だった、というケースもあるため、憂うつな気分が続いたり、今まで楽しんでいたことが楽しめなくなった場合は、注意が必要です。

<精神医学的原因の例>

  • うつ病
  • 神経症
  • 統合失調症
  • アルコール依存症

薬理学的原因

服用している薬の副作用や、飲酒、喫煙、カフェイン摂取の習慣が原因のケースです。抗がん剤や降圧剤、ステロイド薬などの薬が睡眠を妨げやすく、カフェインやたばこに含まれるニコチンなどは、覚醒作用があり安眠を妨げます。

<薬物学的原因の例>

  • 飲酒(アルコール)
  • コーヒー(カフェイン)
  • 喫煙(ニコチン)
  • 処方薬の副作用(抗がん剤や降圧剤、ステロイド薬など)

不眠症はどのように診断されるの?

適応障害になりやすい人ってどんな人?特徴やよくあるケースまでお伝え

不眠症は、不眠の症状が週2回以上みられ、かつ1ヵ月間以上持続し、社会生活または職業的機能が妨げられた場合に診断されます。また、睡眠障害国際分類第2版(ICSD-Ⅱ)の基準では、日中に下記の様な症状が最低1つ以上見られるとされます。

  • 倦怠感あるいは不定愁訴
  • 集中力、注意、記憶の障害
  • 社会的機能の低下
  • 気分の障害あるいは焦燥感
  • 日中の眠気
  • 動悸、意欲の障害
  • 仕事中、運転中のミスや事故の危険
  • 睡眠不足に伴う緊張、頭痛、消化器症状

まずは、不眠の症状や睡眠の状況、生活習慣などを医師に伝え、不眠の原因を検討します。必要があると判断された場合は、不眠を引き起こす病気の有無の検査や、睡眠障害の検査を専門の医療機関で行うことを薦める場合がありますがあります。

不眠症の治療とは

不眠症の治療には、薬を使わず生活習慣を見直すなどして改善する「非薬物療法」と、薬を使って改善する「薬物療法」があります。まずは、不眠の原因となる生活習慣を改善することからはじめ、必要に応じて症状にあわせて薬を使って治療します。

薬物療法

薬物療法に使われる不眠症治療薬は主に3種類ありますが、患者の症状や不眠症のタイプ、生活環境、薬の特徴などを見極めた上で、適切な処方と投薬量を判断することが重要です。不眠症治療のゴールは、薬に頼らなくても十分な睡眠が取れる習慣をつくることです。そのため、良い睡眠のための生活習慣が定着し、症状が安定した状態が4~8週間ほど続いたら、医師と相談して、薬を減らしていきます。

睡眠薬の正しい服用方法については、「睡眠薬の正しい服用方法とは?服用の方法から、よくある睡眠薬の質問について」をぜひ読んでみてください。

非薬物療法

睡眠環境チェックにより、睡眠環境や生活習慣の見直しを行います。さらに、睡眠に関する正しい知識をつけ、質の良い睡眠が取ることができるよう生活リズムを整えていく「睡眠衛生指導」や、必要に応じて不眠症のための治療プログラムなどの「認知行動療法」によって、睡眠環境や生活習慣を改善していきます。治療を終了しても、良い睡眠のための生活習慣は続けることが大切です。

関連記事:不眠症の治療とは?薬物療法と非薬物療法から治療の流れまで

まとめ

今回の記事では、不眠症の原因について触れてきました。不眠症の主な原因は以下の5つです。

  • 身体的原因:何らかの病気の症状により寝付けないケース
  • 生理的原因:睡眠環境や、生活習慣が原因となるケース
  • 心理的原因:精神的ストレスにより寝付けないケース
  • 精神医学的原因:うつ病などの精神疾患が原因となるケース
  • 薬理学的原因:薬の副作用や、アルコール、カフェインなどの刺激物が原因となるケース

あらたまこころのクリニックでは、「心理的原因」または「精神医学的原因 」を中心に対応しております。「身体的原因 」と「 薬理学的原因」に関しては、体の病気となるため、内科などのかかりつけの病院、または睡眠専門科のある総合病院などを紹介、連携しています。「最近よく眠れていない」と感じた方は、お気軽にご相談ください。

関連記事:不眠症とは?不眠の原因から症状、何科に行くべきなのかまで網羅的に解説

関連記事:不眠症の4つの症状タイプについて。不眠症のチェックリストも合わせてご紹介

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。