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不眠症の4つの症状タイプについて。不眠症のチェックリストも合わせてご紹介

不眠症の4つの症状タイプについて。不眠症のチェックリストも合わせてご紹介

「あなたはよく眠れていますか?」

もしこの質問に少しでもドキッとした方は、ぜひこの記事の「不眠症セルフチェック」で今の状態を確認してみてください。睡眠に関する問題は多くの人が抱えており、眠れない日が続くと仕事や家事がうまくいかないなど、日常生活に悪影響をおよぼしてしまいます。

この記事では、不眠症の簡単なセルフチェックや、不眠症のタイプ、自分でできる不眠の対策法などをご紹介しています。不眠でお困りの方のお役にたてれば幸いです。

不眠症とは

日本人を対象にした調査によれば、5人に1人が「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」と回答しています。

引用:不眠症 – e-ヘルスネット(厚生労働省)

不眠は、厚生労働省からも発表されている通り日本人の5人に1人は悩んでいると言われているほど、他人事ではない問題です。不眠の苦痛は夜間だけでなく、日中にも眠気や倦怠感となってあらわれます。不眠症とは、こうした睡眠問題が1ヶ月以上続いた場合に診断される病気です。不眠が続くと、眠れないことへの緊張や焦りから、不眠恐怖や睡眠のこだわりが強くなり、さらに不眠が悪化する悪循環におちいってしまうため、早めの対策が必要です。

不眠の原因はさまざまですが、身体的・心理的要因、心の病気、睡眠環境や刺激物などによっておこる、「睡眠」と「覚醒」のバランスの乱れが考えられます。不眠症の原因については、「不眠症の5つの原因とは?具体的な原因例から治療法まで解説」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

不眠症の症状は主に4つ

不眠症といっても症状は人それぞれで、主に以下の4つのタイプに分けることができます。

  • 入眠困難
  • 中途覚醒
  • 早期覚醒
  • 熟眠障害

不眠症の症状の4つのタイプ

症状が1つだけのこともあれば、複数あらわれる場合も多く、症状のタイプによって対処法や治療法が異なります。まずは、自分の不眠の症状がどのタイプなのか、知っておくことが大切です。それではそれぞれの症状について見ていきましょう。

入眠困難

不眠症の入眠困難とは、寝床に入ってもなかなか眠ることができず、以下のように寝つきが悪くなっている状態のことです。

  • 「なかなか寝付けない」
  • 「眠ろうとすると目がさえて眠れない」

眠りにつくのに30分~1時間以上かかり、「眠れないこと」に苦痛を感じます。不安や緊張が強いときに起こりやすく、不眠のタイプの中で最も訴えの多い症状です。

中途覚醒

不眠症の中途覚醒とは、睡眠中に何度も目が覚めてしまったり、その後なかなか寝付けない以下のような状態のことです。

  • 「夜中に何度も目が醒める」
  • 「夜中に目が醒めて、その後なかなか寝付けない」

日本人の成人の不眠に多く、中高年や高齢者になると、より多くみられるといわれています。これは、加齢とともに眠りが浅くなったり、目覚めやすくなるためです。

早期覚醒

不眠症の早期覚醒とは、望む時間よりも2時間以上前に目が覚めてしまい、再入眠できない状態のことです。

「朝早く目が醒めて、その後寝付けない」

体内時計のリズムが前にずれやすい高齢者に多くみられます。うつ病の場合にも早朝覚醒は多く見られ、睡眠を誘導する「メラトニン」というホルモンの不足が考えられます。

熟眠障害

不眠症の熟眠障害とは、睡眠時間は十分に取っているにもかかわらず、眠った感覚が得られない状態のことです。

  • 「眠った気がしない」
  • 「眠りが浅い」

睡眠時無呼吸症候群など、睡眠中に症状があらわれる病気が関係している場合は、なかなか本人では気付きにくいケースがあります。

不眠症かどうかをチェックするには

「もしかしたら不眠症かも?」と不安になった時、自分の不眠がどの程度のものなのか、簡単にできるセルフチェックがあります。睡眠に関するさまざまなセルフチェックや診断方法がありますが、ここでは世界保健機関(WHO)による「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した、世界共通の不眠症判定法(アテネ不眠尺度)をご紹介します。

不眠症セルフチェック

睡眠に関する以下の8項目についてお答えください。過去1ヶ月間で少なくとも3回以上経験したものを選択し、点数を合計してください。

□寝付きはどうでしたか?

  • 0点:いつも寝つきはよい
  • 1点:いつもより少し時間がかかった
  • 2点:いつもよりかなり時間がかかった
  • 3点:いつもより非常に時間がかかった、あるいは全く眠れなかった

□夜間、睡眠途中に目が覚めましたか?

  • 0点:問題になるほどではなかった
  • 1点:少し困ることがある
  • 2点:かなり困っている
  • 3点:深刻な状態、あるいは全く眠れなかった

□希望する時間より早く目覚め、それ以上眠れなかったことはありましたか?

  • 0点:そのようなことはなかった
  • 1点:少し早かった
  • 2点:かなり早かった
  • 3点:非常に早かった、あるいは全く眠れなかった

□睡眠時間は足りていましたか?

  • 0点:十分である
  • 1点:少し足りない
  • 2点:かなり足りない
  • 3点:全く足りない、あるいは全く眠れなかった

□全体的な睡眠の質はいかがでしたか?

  • 0点:満足している
  • 1点:少し不満である
  • 2点:かなり不満である
  • 3点:非常に不満である、あるいは全く眠れなかった

□日中の気分はいかがでしたか?

  • 0点:いつもどおり
  • 1点:少し落ち込んだ
  • 2点:かなり落ち込んだ
  • 3点:非常に落ち込んだ

□日中の身体的および精神的な活動状態はいかがでしたか?

  • 0点:いつもどおり
  • 1点:少し低下した
  • 2点:かなり低下した
  • 3点:非常に低下した

□日中の眠気はありましたか?

  • 0点:全くなかった
  • 1点:少しあった
  • 2点:かなりあった
  • 3点:激しかった

不眠症セルフチェックの診断結果

不眠症セルフチェックの診断結果は以下のとおりです。

合計点

  • [1~3点]:不眠症の心配はありません
  • [4~5点]:不眠症の疑いが少しあります
  • [6点以上]:不眠症の可能性が高いです

合計点が[1~3点]の人は、まずまずの睡眠がとれています。

合計点が[4~5点]の人は、不眠症の疑いがあるため注意が必要です。生活習慣や睡眠環境の改善に努めましょう。

合計点が[6点以上]と高い方は、不眠症の可能性があるため専門医の診察を受けることをおすすめします。

セルフチェックの診断結果はあくまでも目安です。何か気になる症状や、不眠によって日常生活に影響がある場合は、適切な診断を受けるために必ず医師の診察を受けましょう。

不眠症の影響と対処法

不眠が続くと、熟睡ができないため疲労が回復せず、日中も倦怠感が続くなど日常生活にも影響が出てきてしまいます。また、日中の眠気による集中力の低下や、神経が過敏になりイライラしやすくなったり頭痛がするなど、心身の不調により生活の質が低下してしまいます。不眠はうつ病や生活習慣病のリスクも高まるため、まずは、自分の不眠のタイプや原因を知り、生活習慣の改善や安眠のための工夫をおこなっていきましょう。

睡眠時間は人によって異なるため、あまりこだわらないようにしましょう。寝室は、眠るためだけの場所にし、眠たくなければ別の部屋で過ごすことも大切です。自分にあったリラックス法を見つけ、良い睡眠習慣を身につけましょう。

<不眠の対処法の例>

  • 決まった時間に起床する
  • 朝、起きたら太陽の光を浴びる
  • 適度な運動をする
  • 規則正しい3度の食事をとる
  • 寝る前のアルコールや刺激物は避ける
  • 快適な寝室環境をつくる
  • 寝る前に自分にあったリラックス法を取り入れる

不眠症以外の代表的な睡眠障害

不眠の症状は、不眠症以外の睡眠障害にもあらわれることがあります。不眠症と、不眠症以外の睡眠障害では治療法が異なるため、不眠症の診断では、以下のような睡眠障害が生じていないかの確認が必要です。不眠でお困りの方の中には、不眠症以外の睡眠障害が隠れているケースもあるため、他にどんな睡眠障害があるのか、代表的なものをご紹介します。

  • 過眠症:睡眠をとっているのにも関わらず、日中起きているのが困難なほど眠気が生じる
  • 概日リズム睡眠障害:体内時計のリズムと望む睡眠時間が合わず、さまざまな不眠症状が生じる
  • 睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に何度も呼吸が止まったり浅くなるため、中途覚醒や日中に眠気や倦怠感などが生じる
  • 周期性四肢運動障害:睡眠中、手足に不随意運動が生じ、何度も目が覚めるため深く眠れない
  • むずむず脚症候群:足にむずむずとした不快感があり、眠ろうとしてもじっとしていられなくなかなか寝付けない

まとめ:まずは自分がどのタイプの不眠症なのかを知ることから始めよう

不眠症の症状には、以下の4つのタイプがあることをご紹介しました。

  • 入眠困難:なかなか眠ることができず、寝つきが悪い
  • 中途覚醒:何度も目が覚めてしまったり、その後なかなか寝付けない
  • 早期覚醒:望む時間よりも2時間以上前に目が覚めてしまい、再入眠できない
  • 熟眠障害:睡眠をとっているのに眠った感覚が得られない

「もしかしたら不眠症かも?」と思ったら、まずはセルフチェックでご自身の不眠度をチェックしてみてください。セルフチェックの診断結果はあくまでも目安です。何か気になる症状や、不眠によって日常生活に影響がある場合は、適切な診断を受けるために必ず医師の診察を受けましょう。不眠が続くと、心身の不調により生活の質が低下するだけでなく、うつ病や生活習慣病のリスクも高まります。不眠症は適切な診断と治療により、改善できる病気です。不眠にお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

関連記事:不眠症の治療とは?薬物療法と非薬物療法から治療の流れまで

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。