あらたまこころのクリニック「治療法について」ページ

2020.06.01 その他

心の病気が治るとは?

【目次】
“心の病気が治る”とは?
治療手段の違いによって“心の病気が治る”に違いが生まれるかも!?
“心の病気が治る”に対する誤解と弊害
今回のまとめ

はじめに

ここ20年で、心の病気に対する認識は変わったのではないでしょうか?

厚生労働省は、地域医療の基本方針となる医療計画に従来の4疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞などの心血管疾患、糖尿病)に、精神疾患を加えたことも印象的な出来事と言えるかもしれません。

さて、ここで疑問に思われる方もいるかもしれませんが、心の病気はどうしたら“治った”と判断できるのでしょうか?

今回は“心の病気が治る”について、考えていきたいと思います。

“心の病気が治る”とは?

いろいろな考え方があるかもしれませんが、あらたまこころのクリニックでは、心の病気が治るとは生活上での困りごとが解決した状態と捉えます。

例えば、当院へのお困りごとで多いお困りごとに不安、気持ちの落ち込みが挙げられます。しかし、よく考えてみてください。
今まで生きてきた中で、不安、気持ちの落ち込みは全く感じなかったでしょうか?おそらく多くの方が多かれ少なかれ一度は不安や気持ちの落ち込みを体験したことがあると思います。

では、誰でも体験しうる不安や気持ちの落ち込みと病気と呼ばれる状態とでは何が違うのでしょう?

それは、不安、気分の落ち込みで生活に支障が出ているかどうかと考えることができます。

例えば不安障害の人の中には、人と話すことへの不安(人の目を気にする不安)が強すぎて、人と会話ができずにパーティーや飲み会を避ける方がいらっしゃいます。
一方、不安障害ではない人はその不安を心の片隅に残しつつ、パーティーや飲み会を楽しんでいます。
このような状態を「治っている」と考えます。

そもそも、不安、怒り、喜びなどの基本感情は無駄なものではなく、本来は有用なものです。
たとえば、先ほどの「人の目を気にする不安」。
これがあるから、飲み会で場にそぐわないことを言ってしまったり、余計なカミングアウトをして場を微妙な空気にしないで済むのです。
(アルコールでその「不安のタガ」が外れ、失敗してしまった経験が皆さんにもおありでしょう…)。

つまり、

①過ぎれば心の不調になる不安などの感情にも有用な側面があり、それを完全に消すことはできない。
②程よい程度にまで収めて、それと共に上手に(支障なく)生きていく。

これが、「心の病気が治る」を考えていく際の視点になります。

治療手段によって「心の病気が治る」に違いが生まれるかも!?

精神科・心療内科での治療は大きく分けて
①薬物療法(お薬を用いた治療)
②非薬物療法(心理療法など)に分けることができます。

両者で「心の病気が治る」状態には違いが生じることがあります。

薬物療法

薬物療法では、お薬の力を使い、発作や不安を和らげます。

症状の緩和=心の病気が治る

と捉えることができます。

非薬物療法

一方、非薬物療法では、発作や不安が生じたときの対処方法を身に付けます。

症状が生じても自分の力でなんとか出来る=心の病気が治る

と捉えることができます。

共通する目的

両者に共通するのは、症状による生活への支障が低減させることといえます。

①薬物療法では、症状の緩和によって、②非薬物療法では、症状が生じても自分の力でなんとか出来るようにする事によって、症状による生活への支障を低減させていきます。

あらたまこころのクリニックでは、この二つを並行して行うことで、薬に頼り切らない治療を目指しています。

図 薬物療法と心理療法の治療目標

“心の病気が治る”に対する誤解による弊害

“心の病気が治る”=症状が全く無い(“ゼロ”)状態ではありません。
ストレス社会といわれる現代は、あらゆるところに、症状の引き金が転がっています。苦しみや困難が一切ない人生はあり得ないのです。
症状をゼロにしようとすると、自分から症状を探すようになって、自分で自分を不安に追い込み、症状が起こりそうな場所を避けたり、決まった対処行動パターン(ex頓服)を取らないと不安になったりして、生活が制限されてしまうこともあります。

心の病気が治るとは、症状による生活への支障が低減した状態といえます。ある程度の症状(や、その可能性)を抱えつつも、生活を楽しむことができる状態と言い換えることが出来るでしょう。

ご自身のお困りごと(心の病気)を治療していく際には、「症状が今よりも和らいだら、どんな生活を送りたいか?」「どんな生活が遅れたら幸せか?」をスタッフと一緒に考えることから始めていきましょう。

今回のまとめ

みなさんいかがでしょうか?今回は、“心の病気が治る”ことについて考えていきました。
今回のコラムを踏まえると、お一人お一人の治療のゴールが異なることに気づかれたはずです(お一人お一人の生活や生活での困りごとは異なるからです)。
自分にとって、“心の病気が治る”とはどういう状態か。まずは医師とご相談いただくことをおすすめします。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市からアルコール依存症専門医療機関、日本精神神経学会から専門医のための研修施設などに指定されている。