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公開日: |更新日: 認知行動療法

第18回あらたまCBTを学ぶ会を開催しました

あらたまこころのクリニックでは、認知行動療法の理論と実践についての学びをさらに深めることを目的に、「あらたまCBTを学ぶ会」を平成25年5月より開催してきました。
平成26年10月14日には、第18回目となるあらたまCBTを学ぶ会を開催しました。
今回は、「アメリカ心理学会新療法ビデオ・シリーズ パニック障害に対する認知療法」を使い、David. M. Clark Ph.D.(デイビット・クラーク教授)の実際のセッションから治療法を学びました。
パニック障害の特徴の1つに、本来は命の危険のない軽微な身体感覚を破局的なものと解釈する(例:動悸→「心臓発作の兆候だ!このままだと死んでしまう!」)、というものがあります。その解釈がさらに不安を強め、結果的にパニック発作に繋がり、ますます身体感覚を「恐ろしい結末になる」という想像してしまう(=破局的な解釈)、という悪循環があります。
不安はよく火災報知器に例えられます。火災報知器は、本来は火事を知らせるアラームです。しかし、機能が敏感すぎて、タバコの煙や風呂場の湯気など「火事ではないもの」にまで反応していてはアラームに振り回されてしまいます。しかし、火災報知器を全く動かなくしてしまうと、いざ火事の時に逃げ遅れてしまいます。つまり、適切な場面にそのアラームが鳴るように、調節する必要があります。
不安も同じで、本来は生物が生命を維持していくために備わっているとても大切な感情です。しかし、不安になる必要がないことに不安になると、それ振り回されて生活に支障が生じることがあります。かといって、不安をゼロにしてしまっては、自分にとって危険な状況を察知できず、それに対処することができなくなってしまいます。パニック障害の治療では、身体感覚への解釈をターゲットにし、不安を支障がない程度までにまで下げることを目指します。

ビデオでは、この身体感覚の解釈にアプローチする具体的な方法を学びました。その身体感覚は本当に破局的なものなのか、それとも解釈が不安を強めた結果生じているものなのか、いろいろな技法で検証を試みていました。紹介された技法はもちろん勉強になりましたが、治療者の押しつけではなく患者様と共に考え、現実を実験的に検討する、協働作業的な姿勢がとても印象的でした。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。