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職場の人間関係に疲れたら要注意!人間関係のストレスが引き起こす病気とは?

職場の人間関係に疲れたら要注意!人間関係のストレスが引き起こす病気とは?

「職場の雰囲気に馴染めない」

「上司との相性が悪い」

職場で感じるストレスは人によってさまざまですが、人間関係で悩みを抱えている人は少なくありません。一日の大半を過ごす職場で苦手な人がいたり、業務上避けることができない相手との相性が合わない場合は、本人にとって大きなストレスの原因となるでしょう。ストレスは蓄積すると病気を引き起こすこともあるため注意が必要です。

今回の記事では人間関係に疲れた人のために、職場の人間関係で疲れやストレスを溜めないためのコツや、人間関係のストレスが引き起こす病気について解説します。

約3人に1人は職場の人間関係で疲れやストレスを抱えている?

職場の人間関係で悩みを抱えている人はどのくらいいるのでしょうか。日本労働調査組合が2021年に調査したアンケートによると、全体で約3割の人が職場の人間関係に悩みやストレスを抱えていることが分かりました。年代別でみると、20代よりも30代・40代と年齢が上がるにつれ、人間関係に問題を感じている傾向がみられます。

引用元:【日労公式】職場の人間関係を良好と感じているのは全体で約3割。職場の人間関係に関するアンケート調査

職場の人間関係は仕事のモチベーションにも大きく影響するだけでなく、ストレスとなって心身に不調をもたらす恐れがあります。「人間関係に疲れた・・・」と感じたら、そのまま放置せずにストレスへの対策が必要です。

関連記事:【日労公式】職場の人間関係を良好と感じているのは全体で約3割。職場の人間関係に関するアンケート調査

職場の人間関係で疲れやストレスを感じる原因とは

職場の人間関係のストレスを改善するためには、どんな原因によって疲れやストレスを感じるのかを知っておくことが大切です。職場の人間関係で疲れやストレスを感じる原因は下記の4つが考えられます。

  • 一緒に仕事をする人を選べない
  • コミュニケーションが十分に取れない
  • モチベーションに差がある
  • 人と比べてしまう

一緒に仕事をする人を選べない

職場ではさまざまな価値観の人が集まっています。そのため一緒に仕事をする人の中に合わない人がいるとストレスを感じる原因になります。職場では上司、同僚、部下など立場も異なるため、立場の違いによる悩みや上司と部下の間で板挟みになるなどのストレスも生まれやすくなります。

苦手な人であってもたまに関わるくらいであれば大きなストレスを感じず付き合えるかもしれません。しかし、職場では苦手な人とも密に関わる必要があったり、長時間一緒に仕事をしなくてはならないなど業務上避けられないケースがあるため、疲れやストレスが溜まりやすくなります。

コミュニケーションが十分に取れない

業務を円滑に進めるためには一緒に仕事をする人とのコミュニケーションがとても重要です。しかし、「会話が噛み合わない」「指示があいまい」など言動のすれ違いや意思疎通がうまくいかないと、業務に支障が出るだけではなく相手への不信感につながりストレスを感じる原因になります。

さらに相手の態度や言動が厳しいと感じるケースは、より心的負担が大きくなるためスムーズなコミュニケーションを取ることが難しくなります。コミュニケーションでのつまずきは、相手へのネガティブな感情となってすべての言動をネガティブに捉えてしまう負のループを引き起こし、人間関係をこじらせてしまうことがあるため注意が必要です。

モチベーションに差がある

部署や課の目標達成や、プロジェクトを進める際にメンバー間でモチベーションの差があるとストレスを感じる原因となります。職場はさまざまな価値観が集まっているため、大なり小なり温度差は生まれるのは当然のことです。しかし、熱量が高い人は熱量が低い人にストレスを感じ、熱量が低い人は熱量が高い人にストレスを感じるなど、温度差によって双方にストレスが生まれやすくなります。温度差によるストレスが高くなると、チームとして生産的に仕事を進めることが難しくなるなど仕事にも悪影響をおよぼします。

人と比べてしまう

自分に自信がない人やプライドが高い人に多くみられるのが、人と比べてしまうことで起こる人間関係のストレスです。他人と自分を比べることでモチベーションになり良い方向に向くこともありますが、ネガティブな感情に向いてしまうとストレスを抱えるだけでなくさまざまな悪影響がでます。「同期が自分より出世している」「営業成績で自分だけが遅れを取っている」など、嫉妬心や自己嫌悪によって心が穏やかでなくなるため相手との関係にも影響します。

職場の人間関係で疲れやストレスを溜めないためのコツとは

職場での人間関係は避けては通れません。では、職場の人間関係で疲れやストレスを溜めないためにはどうしたら良いのでしょうか。既に悩みを抱えている人が少しでも職場を過ごしやすくするために、今すぐできる職場の人間関係で疲れやストレスを溜めないためのコツを5つご紹介します。

  • 「みんなと仲良くやろう」と考えない
  • 仕事は仕事と割り切る
  • 相手に期待するのではなく自分の行動を変える
  • 人と比べない
  • 人間関係を見直してみる

「みんなと仲良くやろう」と考えない

さまざまな立場や価値観の人が集まるのが職場です。そのため苦手な人がいたり、価値観が合わない人がいるのは当然のこと。みんなと仲良くやろうとすればするほど、思うようにいかなかった時に理想とのギャップにストレスを感じてしまいます。ある程度は仕方がないものと受け入れて、業務に支障のない範囲で適度な距離を保つことが大切です。「この人には好かれなくて良い」と認識するだけでも気持ちが楽になります。

仕事は仕事と割り切る

仕事上のコミュニケーションはとても重要です。人間関係が面倒であっても「仕事は仕事」と割り切って、業務を円滑に進めることに集中しましょう。コミュニケーションを取る上で嫌な思いをすることがあっても、深く考えずにそれは仕事の時間だけのことと考えましょう。会社は仕事をする場であり人間関係も仕事のひとつです。仕事は仕事と割り切ることで余計な感情に振り回されることがなくなるため、ストレスを軽減することができます。

相手に期待するのではなく自分の行動を変える

相手への期待が大きいと、期待通りにいかない時にストレスを感じてしまいます。他人を変えることは難しいですが、自分の行動を変えることで人間関係がうまくいくようになるケースがあります。

  • 日頃からあいさつやお礼は積極的にする
  • 相手の長所に目を向ける
  • 相手が大切にしている価値観を把握する

など、自分からも歩み寄る努力をしてみましょう。苦手な相手であればあるほど抵抗があるかもしれませんが、自分のための行動でもあるのです。相手を理解しようと視点や行動を変えてみると、お互いの誤解や勘違いに気付けることもあります。

人と比べない

他人と自分との比較は、自己否定や嫉妬心が生まれやすくなります。こうしたネガティブな感情は仕事にも悪影響をおよぼすため人と比べることはやめましょう。人と比べることが習慣化してしまいネガティブな感情に囚われてしまう場合は、他人との比較ではなく「過去の自分」と比較する時間に使いましょう。過去の自分と比べることで、気づいていなかった成長を感じることができたり、進歩が感じられなくても次の目標設定ができるなど、ポジティブな視点でプラスの効果を得ることができます。

人間関係を見直してみる

対人関係の悪循環

対人関係の悪循環

人間関係に疲れを感じたら、職場の人間関係について振り返ってみることをオススメします。

  • どんな言動に傷ついたのか
  • どんなことに不満を感じるのか
  • 自分を犠牲にして我慢していることはないか

対人関係で抱えている悩みを振り返ることから初め、ストレスに感じている部分を探してみましょう。

そして、それらのストレスは「アサーション」というコミュニケーション方法を取り入れることで解決につながる可能性があります。

相手を変えることは難しいですが、自分自身の考え方や振る舞いで緩和させることはできます。アサーションについては「アサーション~自分も相手も大切にするコミュニケーション法」を参考にしてみてください。

関連記事:アサーション~自分も相手も大切にするコミュニケーション法~

職場の人間関係による疲れやストレスが病気を引き起こす?気をつけたい病気とは

ストレスは目に見えないため職場の人間関係に悩みを抱えた状態が続くと、知らず知らずのうちに心身に不調をきたすことがあります。特に気をつけたい病気には以下のものがありますが、症状が似ているため自己判断で診断してしまうことは危険です。

  • うつ病
  • 自律神経失調症
  • 適応障害

万が一疾患を抱えている場合は、なるべく早く対処することで回復も早く軽症ですむ可能性があります。気になる症状があれば心療内科や精神科の受診しましょう。

うつ病

憂うつ気分や不安感、何をしても楽しめない状態が2週間以上続く場合はうつ病の可能性があります。うつ病は日常生活に支障をきたすほどの気分の落ち込みや、意欲の低下が続く病気です。心の症状以外にも食欲の低下、睡眠障害、頭痛や腹痛、肩こりなどの身体症状にもあらわれることがあります。うつ病は重症化すると、日常生活や社会生活、他人とのコミュニケーションが困難になるなどさまざまな影響があるため、早期発見がとても大切です。

うつ病に関する記事は「うつ病 カテゴリ記事」からご覧いただけます。

 

自律神経失調症

自律神経失調症になると、ストレスによって自律神経のバランスが崩れ心身にさまざまな症状があらわれます。慢性的な体のだるさや偏頭痛、めまい、不安感や集中力の低下など症状は人によって異なりますが、症状があるのに検査で異常がみられない時に自律神経失調症と診断がつくことが一般的です。ストレスだけでなく、生活習慣の乱れも自律神経のバランスが崩れる原因になるため、食生活や睡眠、運動習慣を見直すだけでも症状が改善することがあります。

自律神経失調症に関する記事は「自律神経失調症 カテゴリ」からご覧いただけます。

適応障害

適応障害の症状はうつ病と似ていますが、よりストレスが強く影響しているため原因となるストレスから離れると、症状が改善するのが特徴です。しかし、環境調整によってストレス因を除去し症状が改善しても、本人の適応力によってはよくなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性化することがあります。適応障害の症状が慢性化すると、うつ病に転換されるケースもあるため注意が必要です。

適応障害に関する記事は「適応障害 カテゴリ」からご覧いただけます。

コミュニケーションが苦手で仕事がうまくいかない・・・もしかしたらADHD(注意欠如・多動症)かも?

「人間関係が続かない」

「仲がいいと思っていた人とも気づくと距離ができている」

コミュニケーションが苦手で人間関係が続かないケースは、ADHD(注意欠如・多動症)の可能性も考えられます。ADHDは発達障害のひとつで、生まれつき脳機能に偏りがあることであらわれる特性です。一般的には2〜3歳ごろから特性が目立ちはじめますが、大人になってから気づくケースも少なくありません。

ADHDの特徴は「不注意」と「多動・衝動性」です。

  • うっかりミスが多い
  • 気が散りやすい
  • 遅刻が多い
  • 落ち着きがない
  • 一方的なおしゃべりをする

こうした特性によってコミュニケーションがうまくいかず、人間関係に影響が出ることがあります。ADHDは自分の特性をよく理解し、困りごとに対処する工夫や力を身につけることが大切です。ADHDについては下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

関連記事:ADHD(注意欠如・多動症)とは?具体的な症状や特徴、診断の流れなど網羅的にご紹介

まとめ

今回の記事では人間関係に疲れた人のために、職場の人間関係で疲れやストレスを溜めないためのコツや、人間関係のストレスが引き起こす病気について解説しました。気持ちを楽にして、少しでも過ごしやすい職場環境にするためにも、まずは下記のことを試してみましょう。

<職場の人間関係で疲れやストレスを溜めないためのコツ>

  • 「みんなと仲良くやろう」と考えない
  • 仕事は仕事と割り切る
  • 相手に期待するのではなく自分の行動を変える
  • 人と比べない
  • 人間関係を見直してみる

ストレスは目に見えないため、知らず知らずのうちに心身に不調をきたすことがあるため注意が必要です。特に気をつけたい病気には以下のものがあります。

  • うつ病
  • 自律神経失調症
  • 適応障害

それぞれ似た症状があるため自己判断で診断してしまうことは危険です。気になる症状があれば心療内科や精神科の受診しましょう。万が一疾患を抱えている場合は早めの対処が早期回復のかぎです。お気軽にご相談ください。

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。