あらたまこころのクリニック「症状別のよくある質問」ページ

症状別のよくある質問 DISEASE FAQ

睡眠障害・不眠症

INSOMNIA

不眠症はどのように良くなっていくのですか?

行動療法で良くなられた症例をご紹介します。

Aさん 40代男性 SE

システムエンジニアのAさんは、大きなプロジェクトを抱え、昼夜逆転した不規則な生活が続いていました。プロジェクトが一段落して、元の規則正しい生活に戻りましたが、布団に入ってもなかなか寝付けず、何度も目が冷め、十分に寝た感じが感じられない日が続くようになりました。11時には布団に入って寝るようにしましたが一向に眠れず、疲労感や抑うつ感が現れ、精神科を受診しました。

①不眠のメカニズムの把握
Aさんにはまず、不眠の行動モデルについて説明しました。もともと几帳面な性格(準備因子)のAさんは、プロジェクトの際の不規則な生活のせいで一時的に眠れなくなってしまいました(誘発因子)。「このまま眠れなくなったらまずい」と不安になり、布団に入ってもその考えから抜け出せず、余計に眠れなくなる日が続きました(維持因子)。11時に布団に入るようにしたことで、布団の中に入っても起きている癖がついてしまった(維持因子)のも災いしました。もとの生活リズムに戻ることで、無くなるはずだった不眠が、このようなメカニズムで維持されてしまうのです。

<Aさんの不眠のメカニズム>

  • 几帳面な性格(準備因子)
  • 昼夜逆転した不規則な生活(誘発因子)
  • 眠れなくなる不安が頭から離れない状態。布団の中で起きていることが習慣化(維持因子)

②睡眠日誌・睡眠衛生教育

さらに、睡眠日記をつけて、現在の状況を確認。
睡眠衛生のポイントと良い睡眠の為の心得をお伝えし、睡眠衛生を改善する取り組みの中からできそうなものを探しました。

<睡眠衛生のポイント>

  • 週に3回以上運動をしている
  • 朝日が登っても部屋の中が暗い
  • 夜間、寝室は静かである
  • 暖房の音や足音によって起きることはない
  • ペットが寝付くのを邪魔したり、起こしたりしない
  • 一緒に寝室にいる人の動きで自分の睡眠が妨げら得ることはない
  • 子供が夜やっていることで、自分の睡眠が妨げられることはない
  • 自宅は安全で、夜間は快適に過ごせる
  • 布団や枕にこだわりがある
  • 空きっ腹で寝たり、お腹いっぱいで寝たりしない
  • カフェインを夜に摂らない
  • 夕食後や寝る前にお酒を飲む習慣はない
  • 夕食後や寝る前にタバコを吸う習慣はない
  • 寝室で考え事をしない
  • 夜間に起きても時計を見ない

<良い睡眠の為の心得>

  • 睡眠時間は人それぞれ、翌日に眠気で困らなければ良い
  • 定期的に運動しよう
  • 寝室を快適にして、光や音が入らないように
  • 寝ている間は、寝室を快適な温度に保とう
  • 空きっ腹で寝ない。寝る前に水分を取りすぎない。
  • カフェインを午後3時以降に摂らないように
  • 寝る2時間前や夜中にアルコールは摂らない
  • 寝る二時間目や夜中に喫煙を避ける
  • 昼間の悩みを寝床に持ち込まない
  • 眠ろうと頑張らない。夜中に時計は見ない。

③「布団に入る行為」と「睡眠」を結びつける訓練

今の睡眠の状況がわかったら、睡眠スケジュールを設定し、布団に入る行為と睡眠が結びつくように訓練していきました。

<訓練内容>

  1. 総睡眠時間に30分足して「寝床の中で過ごす時間」を決める
  2. 「起床時間」を決める
  3. 「起床時間」から「寝床の中で過ごすべき時間」を引いて「寝床に入る時間」を決める
  4. 「寝床に入る時間」より前に寝床に入ってはいけない
  5. 「寝床に入る時間」になったらいったん寝床に入る。
  6. 寝床では寝る以外のことはしない。寝室は暗く静かにする。
  7. 15分ほど立っても眠れなければ、起きて隣の部屋に行く。そこでリラックスできることをして、眠気がやって来たら寝床に戻る。
  8. 眠れなかったり、起きてしまったりしたら、⑥と⑦を繰り返す
  9. 一日の平均睡眠効率が85%を超えたら、次の週は寝床に入る時間を30分早める。
  10. 毎日「起床時間」には寝床を離れる。夜間は時計を一切見ない。
  11. 昼寝はしない
  12. この決まりは平日休日問わず行う。

このような方法を根気よく続け、1ヶ月した頃にはAさんは、十分に眠れている感覚を得られるようになっていきました。

 

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。