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公開日: |更新日: 社交不安障害専門療法

あがり症・社交不安障害の治療のポイント

あがり症・社交不安障害の治療のポイント

【目次】
はじめに
あがり症、社交不安障害をサラッとまとめさせて頂きます
あがり症、社交不安障害の場面例
あがり症、社交不安障害の背後にあるもの
あがり症、社交不安障害の人の強み
まとめ

はじめに

 ここでは、あがり症・社会不安障害・社会不安障害の治療の下ごしらえ、つまり後半の治療に進むために押さえておきたいポイントをお伝えします。

後半のあがり症・社交不安障害の治療の仕上げ 行動実験に続きます。とても、ややこしい話になるかもしれません。なるべく、わかりやすい文章を心がけてはおりますが、どうしても専門用語を使う方が目標が明確になるので、今回は慣れない言葉が連発で出てきますが、お許しください。入門記事を用意していますので、ご参照ください。

 あがり症、社交不安障害の多くは、慢性的に進行して、対人環境の変化で、再発を繰り返し、結婚、就職,交友など人生に大きな影響を及ぼします。いろんな問題が絡み合って手強い病気ですが、しっかりした治療法があります。

治療は薬物療法と認知行動療法が2本柱になります。

 認知行動療法は、まずは行動実験ができるようになるための練習の段階と、次に実際の生活の中で行動実験を実践する2段階に分かれます。もつれた糸の結び目を手順通りにほどいていくように、少しづつ治療を進めていきましょう。

あがり症、社交不安障害をサラッとまとめさせて頂きます。

 あがり症、社交不安障害は、多くのは人の目に見える「自分のどこかが変だ」という思いがあり、他者から「変な人」「おかしな人」と見られることを怖れています

 また、話が面白くない、雑談下手、退屈なヤツだと思われる、周りの楽しい雰囲気を壊してしまうのではないかなどと考え、周りから相手にされくなることを怖れます

 その怖れが強まる状況で、手の震え・汗・赤面・声が出ない・緊張してぎこちなくなって挙動不審など、体や行動の症状が現れます自己注目、自意識過剰

こういった「変な」所を、人に知られないように,人から見られる場所を避けます回避

 どうしても人前に出なければならない時は、自分の「変な所」が人に気づかれないように工夫して乗り切ろうとします(安全保障行動

 こうしていくと、失敗した悪いイメージが残り、後で「自分の惨めイメージ」が思い出され反すう自分を責め、自信を失い、日常生活がつらくなります

社交不安障害の悪循環

あがり症、社交不安障害の場面例

あがり症、社交不安障害の本質

 あがり症、社交不安障害の人は、人が嫌いと言う訳ではありません。もともとは、人が好きで、相手に認めてもらいたいと思っています。だから人間関係で完璧を求め、「失敗」を怖れるのです。

 また全ての人が苦手という訳ではありません。相手が、見ず知らずの人や関わりのない人なら平気だけど、ちょっと名前くらい知っている程度の人が苦手です。例えば、同僚・同級生・会社の人・ママ友などとの交流です。

 対して重要でない人や場面は割と大丈夫ですが、自分にとって大切になるほど、つらくなって避けてしまいます。その結果、後悔することも多く、自分を責めて抑うつ的になってしまう方もいます。

あがり症、社交不安障害の人の強み

 あがり症、社交不安障害の人の中には、「自分はこんな性格だから」と思い込んで、治療を受けずに、長年「人知れず耐え忍んできた」方が多いです。言い換えれば、根気強い、まじめな方々です。完璧主義ゆえに、自分の「失敗」が許せません。人には優しく、他人の失敗は許せるのに、なぜか自分には、とても厳しく、自分を責める。これが社交不安障害という病気です。

ですから、治療して本来持っている、誠実・まじめ・知人に優しいなどの強みを活かしていけると人生は、ずいぶん変わってきます。闇が深かった分、光も輝きます。

社交不安障害は性格ではなく、治療可能な病気です

他人は自分が考えているほど悪く思っていない」ことの発見を繰り返すことによって治療は進みます。そのためには行動実験が必要です。

しかし、現実は社交不安障害と心療内科やこころのクリニックなどで診断はされてはいるけれども、有効な治療を受けない(=行動実験ができない)まま、問題が続くことが多いのが現状です。行動実験を通常の治療に取り入れるのは、マンパワーや費用の面でも難しいのです。

あらたまこころのクリニックでは、効率的に行動実験を日々の生活で実践、症状に対処できることを目的に、グループ治療というシステムで実施しております。2006年から始まり、500人以上の人が参加されてきました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回はあがり症、社交不安障害について簡単に説明した後で、社交不安障害の裏にある「人が好きで、認められたい気持ち”や“誠実さ、やさしさ、まじめさ」についてお伝えしました。症状を和らげることで、患者さんがそのような強みを生かして人生を送っていけるように、スタッフ一同サポートしていけたらと思っております。
後編(あがり症・社交不安障害の治療の仕上げ)では、社交不安障害治療で一番重要な行動実験について、お伝えしていきます。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。