あらたまこころのクリニック「治療法について」ページ

公開日: |更新日: 認知行動療法

認知療法学会・認知行動療法学会に参加しました 前編

認知療法学会・認知行動療法学会に参加しました 前編

認知療法学会・認知行動療法学会に参加しました ~前編~

 2017年7月21日(金)から23日(日)に、新宿の京王プラザホテルとNSスカイカンファレンスで開催された、「第14回日本うつ病学会総会 第17回日本認知療法学会・認知行動療法学会」(http://www.c-linkage.co.jp/mdct2017/)に参加してきました。

今回の大会は、2つの学会の合同開催で、プログラムも充実しており、1日目、2日目は学会、3日目は研修会と、盛り沢山の内容でした。中でも印象に残った話題の1つである、不安症の子どもを抱える家族のためのCBTプログラム(SPACE:Supportive Parenting for Anxious Childhood Emotions)のお話について、まとめてみたいと思います。

 

不安症の子どもを抱える家族のための認知行動療法プログラム(SPACE

今回の学会では、本トレーニングの開発者の、Eli R. Lebowitz先生(エール大学子ども研究センター)が来日され、お話を聞くことができました。通訳は堀越勝先生(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター センター長)でした。

不安症の子どもがいる家庭では、親が子どもの不安を軽減させてあげようと一生懸命やっているうちに、子どもの不安症状に巻き込まれ、結果、症状が悪化してしまうことが問題となりやすいです。SPACEは、不安症の子どもをもつ親を対象にしたプログラムで、親が子どもに適切な対応をすることで、結果的に子どもの不安症も改善されるという結果が得られています。

お話の中には、

  • 大人の不安障害の半分は10~11才で始まっていること
  • 子どもの中で不安の問題が肥満と同程度に多いこと
  • ほ乳類はたくさんの子を産むことが出来ず、子どもは自分を守ることができない状態で生まれるため、母親は子どもを守ろうとして不安が育つこと

等がありました。また、これらをふまえて、不安症の子どもをもつ親の対応として、「支持を増やし、巻きこまれを減らす」ことが大切だとお話がありました。

心理教育、親の巻き込まれ行動の特定などを経て、巻き込まれ行動を減らし、適切な対応を学んでいくのが、この、SPACEというプログラムです。巻き込まれを減らすために、何をするのか具体的にすることが大切だということでした。

プログラムを振り返って

あらたまこころのクリニックでも、子どもや家族の対応でお困りの方を対象に、グループ療法を行っています。家族の日々の対応に一生懸命だからこそ、悩み、時には悪循環になってしまうことが多いのですが、不安に巻き込まれない対応の工夫を支援していきたいと思います。

学会では、この他にも、簡易型認知行動療法や、うつ病方の休業の必要性と判断、発達障害と気分障害の併存についてなど、様々なテーマについてのお話がありました。

余談ですが

今回の学会は「サイエンスとアートの新たな融合」というテーマを掲げていました。「アート」は、もちろん「芸術」といった意味ももちますが、「専門技術」という意味ももつ言葉と、学会長の先生が懇親会でおっしゃっていました。

患者様に、科学的に実証された治療をしっかりと提供できるよう、専門技術を身につけていきたいと、改めて感じるテーマでした。

23日の研修会では、マインドフルネス認知療法の研修を受けてきたので、また後日、ブログに載せたいと思います。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。