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公開日: |更新日: 家族介入

うつ病患者様のご家族への支援の臨床研究に協力

 私達は、「うつ病」患者様のご家族への支援の臨床研究に協力しております。

 うつ病を長く患っていると患者様ご本人はもちろんのこと、ご家族にとってもつらい経験となることが分かっています。
 そのため、当院ではうつ病患者様ご家族への相談会を開催することとなりました。
 この相談会は、名市大心の医療センター「うつ病患者様のご家族へのグループ相談プログラムへの効果」の研究となっております。

 <うつ病の特徴と家族の負担>

  • うつ病の予後については1年後でも約40%の患者様がうつ状態にあったと言う報告があります。
  • 再発も多いことから、家族は長期間にわたり患者様の療養を支える必要があり、相談できる場も少ないため悩みを抱え負担も大きくなります。
  • うつ病については、家族の負担感は、うつ病の重症度によって影響を受け、また、療養期間が長いほど、負担が重かったという報告があります。

<家族心理教育の有効性>

  精神疾患患者家族の負担軽減や、患者の再発予防の方法については、様々な研究が積み重ねられていてきており、その中で、効果のあった方法の一つとして、家族心理教育があります。
 家族心理教育とは、家族に対して配慮した上で疾患や社会資源などの正確な情報を伝え、問題解決技法を使ったグループを行う中で、家族をエンパワメントしていくものです。
 その事で家族の患者への接し方が安定し、それが再発予防に繋がっていきます。
 特に、統合失調症患者の家族心理教育の再発予防効果については多くの研究が積み上げられており、世界的に確立しています。

 現在、統合失調症や双極性気分障害については家族心理教育の研究が多数積み上げられていますが、うつ病の家族心理教育に関する研究は殆どないのが現状です。
 この研究では難治性うつ病患者へ複合的心理教育を行うことで、それを行わない家族と比較して、家族の心理社会的負担が軽減するかどうかを検証することを目的としています。
 また、家族の負担が軽減することで、患者の精神症状、生活の質が改善するかどうかも合わせて検証していきます。

<うつ病の家族心理教育プログラム>

 ワンクール全4回で内容は、前半は情報提供セッション30分、後半は問題解決を目的としたグループワークを行います。

  • 1回目 病気の理解
  • 2回目 治療について
  • 3回目 利用できるサービス
  • 4回目 ご家族の接し方やコミュニケーションについて

 現在、当院で取り組んでいるうつ病の家族心理教育についてご紹介しました。
 なお、このプログラムの参加については当院通院中の方に限らせていただいております。ご理解いただきますようよろしくお願いします。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市からアルコール依存症専門医療機関、日本精神神経学会から専門医のための研修施設などに指定されている。