名古屋市/心療内科/精神科/うつ病/不安障害/瑞穂区/昭和区/天白区/南区/緑区/熱田区/日進市/中区/パニック障害/摂食障害/あらたまこころのクリニック

心療内科 精神科 医療法人和心会 あらたまこころのクリニック
〒467-0066
名古屋市瑞穂区洲山町1-49
TEL:052-852-8177

できるだけ薬に頼らない治療。あらたまこころのクリニックオフィシャルブログ

7月, 2019年

日本うつ病学会 田光造賞授賞講演&受賞式 in 徳島、スタッフ道中記その②

カテゴリー: おしらせ, ご挨拶, 研修・学会 | 投稿日: 2019-07-29

●四国は、認知療法ゆかりの地

今回の第16回日本うつ病学会が行われた徳島県がある四国は、当院が行っている治療方法でもある認知療法・認知行動療法ゆかりの地でもあります。
精神科医の井上和臣先生(現認知療法研究所所長で内海メンタルクリニック名誉院長)は徳島県のご出身であり、同じく精神科医の大野裕先生(現一般社団法人認知行動療法研修開発センター理事長)は愛媛県のご出身です。そして臨床心理学者の坂野雄二先生(現北海道医療大学教授)も、実は徳島にゆかりがおありだそうです。
この三名の先生方は、日本の認知療法・認知行動療法の普及に多大な貢献をされた先生方であり、この四国の偉大な先生方のお力で、認知療法・認知行動療法は日本に根付き花開いたのです。この度、このゆかりの地で加藤院長が下田光造賞の受賞式を行っていただけたことは、とても光栄なことであり、運命的なものを感じます。

●井上和臣先生をお迎えして

懇親会を終えた我々は、素晴らしいことに偉大な先生のお一人である井上和臣先生をお迎えして、ささやかではありますが当院だけの会食を行わせていただきました。
井上先生は、お忙しいにも関わらずこの度の加藤院長の日本うつ病学会下田光造賞受賞講演にも駆けつけて下さいました。
井上先生、心より感謝申し上げます。


〇井上先生とご一緒に記念撮影。

井上先生は、お優しいことに加藤院長、及びスタッフ全員に徳島の有名な和菓子店のお土産をご用意して下さっていました。
ご一緒にお食事できるだけでも夢のような出来事なのに、お土産までいただき恐縮至極です。
井上先生、とても美味しいお菓子をありがとうございました!!!

井上先生からいただいたお菓子です。


〇柔らかな餅生地の中に翡翠色の餡が入った「泡柚」
とても上品なお味です。


〇「あらたまの」という名のお豆のお菓子。
あらたまこころのクリニックにピッタリです。

会食では、井上先生から貴重なお話をお聞きすることができ、とても充実した楽しい時間を過ごすことができました。井上先生、ご多忙の中お越しくださり、本当にありがとうございました!!

店を出て、井上先生を全員でお見送りし、徳島での長い一日が終わりました。かけがえの無い貴重な経験をさせていただいた一日でした。

●日本うつ病学会 下田光造賞
―SUNOD 研究―

この度、日本うつ病学会下田光造賞を受賞したSUN D研究は、あらたまこころのクリニックだけで行われたものではなく、たくさんの方々が参加して行われた研究です。あらたまこころのクリニックでご協力いただいた患者様が一番多かったという理由で、加藤院長が代表で受賞させていただいたものです。
日本でうつ病に苦しむ多くの患者様を救うことに繋がる偉大な研究に関わらせていただけたことを、スタッフ一同心から誇りに思います。そしてこのような素晴らしい場所に来る機会を与えて下さった、当院にお越し下さる全ての患者様、そして研究に携わった関係者の皆様に、心より御礼を申し上げます。
この経験を糧として、今後とも加藤院長、そしてスタッフ一同、地域医療のさらなる貢献に邁進する所存です。
これからもあらたまこころのクリニックをどうぞよろしくお願い申し上げます。

日本うつ病学会田光造賞授賞講演&受賞式 in徳島、スタッフ道中記その①

カテゴリー: おしらせ, ご挨拶, 研修・学会 | 投稿日: 2019-07-29

前回お知らせさせていただきましたが、加藤正院長が日本うつ病学会下田光造賞を受賞いたしました。
その為、7月に徳島にて行われた日本うつ病学会受賞講演及び授賞式へ、加藤院長とともにスタッフ一同が参加してまいりました。
今回は、スタッフによるご報告をさせていただきたいと思います。

●いざ徳島へ出発!!

7月某日、梅雨真っただ中ではありますが、幸運なことに雨天ではなくちょうどいい感じの晴天です。お天気も加藤院長を祝福してくれているようで、有難いことです。
名古屋駅の新幹線ホームで集合し、まず新神戸に向かいます。いつもの勤務よりも時間が早いので乗り遅れるスタッフがいないかどうか心配でしたが、全員無事に乗車することができ、ひと安心です。

新神戸からは、高速バス阿波エクスプレスにて徳島へ。約2時間のバスの旅です。朝が早いので、みんな寝るかと思いきや、元気元気!加藤院長だけは、日本うつ病学会下田光造賞受賞講演の脳内練習に余念がありませんでしたが(お疲れ様です!)、スタッフ達は自分達のプライベートな話題で盛り上がっていました。

〇明石海峡大橋の上で、バス車内から見る海。

淡路島を通り抜け、あっという間に徳島駅へ到着。移動を考慮し、駅前のホテルに宿泊します。
まずホテルに荷物を預け、すぐ近くに位置する大衆食堂で昼食をいただきました。


〇昼食をいただいた食堂。店内にはたくさんのお客さん。

●下田光造賞講演が行われるうつ病学会へ

昼食後、全員で日本うつ病学会が行われているあわぎんホール(徳島県郷土文化会館)へ向かいます。
あわぎんホールは徳島駅から歩いて、10分程度の所にあります。
あわぎんホール館内の各部屋では色々なシンポジウムやセミナーが行われており、とても勉強になりました。
加藤院長が出演する「学会奨励賞・下田光造賞受賞講演」は、5階の第4会場で行われる為、全員で移動。会場の雰囲気に押され、少々緊張ぎみの学会初参加のスタッフもいましたが、加藤院長の姿を見つけて安堵しました。
学会奨励賞の方々の講演が続き、とうとう加藤院長の発表が始まりました。自分達が普段行っていた業務がこのような素晴らしい研究に繋がっていた事をあらためて認識し、スタッフ一同、胸が熱くなりました。



〇スライドを用いて、参加者に説明します。


〇司会者の質問に答える加藤院長。

●下田光造賞、授賞式へ

下田光造賞受賞記念講演の後は、受賞式が行われる懇親会会場「パークウエストン」へ移動します。ここは結婚式場でもあり、とても綺麗な建物です。徳島の郷土料理がふるまわれ、阿波踊りのパフォーマンスが余興で行われました。
懇親会も中盤にさしかかり、学会奨励賞の方々と共に下田光造賞の授賞式が行われました。
賞状をいただき感無量の加藤院長を見て、私たちスタッフも感動です。
授賞式は滞りなく行われ、懇親会が終わりました。
感動の余韻が覚めぬまま、全員で会場を後にしました。
(日本うつ病学会 下田光造賞授賞講演&受賞式in 徳島、スタッフ道中記その②へ続きます。)


〇学会主催者の先生から賞状をいただきます。


〇受賞記念のスピーチ。


〇懇親会会場にて、みんなで記念撮影。

マイスリーショック

カテゴリー: おしらせ, その他, 研修・学会, 院長のつぶやき | 投稿日: 2019-07-29

【目次】
・マイスリー(ゾルピデム)とルネスタがアメリカFDAの黒枠警告に指定されました
・あらたまこころのクリニックの取り組みでは、「薬に頼らない治療」を求めて、睡眠薬の減薬、休薬を目指しています
・マイスリー(ゾルピデム)、ルネスタのメリットとデメリット

●マイスリー(ゾルピデム)とルネスタがアメリカFDAの黒枠警告に指定されました

アメリカから、びっくりするようなニュースが飛びこんできました。マイスリーとルネスタがアメリカ食品医薬品局(FDA)の黒枠警告の指定になりました(2019.5月)。
このニュースを目にした方は、驚かれたり、怖いと思われたと思います。
黒枠指定とは、「処方箋医薬品のリスクの可能性についてラベルに記載される警告文の1つで,医学的に深刻な副作用などを引き起こすリスクを伴うことを示すもの」を指します。警告の文面が黒枠で囲まれることからこう呼ばれています。他にも禁煙補助薬バレニクリンや糖尿病薬、アクトス、アバンディア血液の流れをさらさらにするプラビックスなども次々と黒枠になっています。実際にこれらの薬を使えないとなれば、とても困ったことになるでしょう。十分に注意して処方しないといけないことは確かです。内容的には、経験ある精神科医であれば、よくご存じなので、もし服薬後に奇異行動などが認められた際には、主治医の先生に相談されると良いと思います。

●あらたまこころのクリニックの取り組みでは、「薬に頼らない治療」を求めて、睡眠薬の減薬、休薬を目指しています

「薬に頼り切らない治療」を求め、睡眠薬の減薬、休薬を目指しています。(これまでのあらたまこころのクリニックの取り組み)
あらたまこころのクリニックは、アルコール依存症と家族などの治療でスタート(今でも、日本嗜癖行動学会の理事、日本アルコール関連問題学会の幹事を務めさせて頂いています)しましたので、薬剤の依存性や依存行動などには、特に注意を払っています。また、名古屋市瑞穂区医師会では、開業医対象に「患者さんを依存にしないために」といった内容の講演会を開き、啓蒙活動をしてきました。
不眠治療に関しても、「薬に頼り切らない治療」を大切にしています。具体的には、不眠の環境チェックや睡眠衛生教育、睡眠生活指導を重視しており、2011年には不眠症の認知行動療法の技法習得のため、国立精神神経医療センターの研修を受け、三島和夫先生(秋田大学大学院教授)から、また短期睡眠行動療法の研修やスーパービジョンを渡辺範雄先生(京都大学大学院准教授)から指導を受けました。当院の患者様の中には、短期睡眠行動療法を頑張って取り組まれ、薬剤なしで完治された方もいらっしゃいます。ただ、短期睡眠行動療法は、患者様にかなりの意欲、時間、そして少しの忍耐が必要なので、受けられる数はごく少数と限られています。現実的には、日本では、多くの人は薬物療法と睡眠衛生教育、簡単な不眠の認知行動療法が主になります。

●マイスリー、ルネスタのメリットとデメリット

従来のベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤では、筋肉の力が脱け転びやすいことや依存の問題がありました。非ベンゾジアゼンピン系睡眠導入剤とされるマイスリー、ルネスタなどの短期型の睡眠薬は、筋肉の力が脱けない、依存にならないとNASAなどが勧めていたこともありました。マイスリー、ルネスタなどの短期型の睡眠薬は、寝つきが良く、不眠恐怖、寝室恐怖の人や軽い不眠の人に使いやすい面があります。その一方で、マイスリー、ルネスタなどの短期型の睡眠薬には、一部の人には「半効き」のような状態になり、夢遊病のような状態(自分は記憶にないけれども朝になって気づくと電話をかけていた、料理を作り食べていたなどの奇異行動)が認められます。その場合は、ただちに他の薬に変更します。今回のアメリカFDAの問題は、服薬後、すぐにベッドに入らず、例えば飲酒や風呂に入って溺れた、車を運転して事故を起こした問題(まれだが、深刻な問題)が起きたからという理由のようです。今頃、なぜ?という疑問と極端な印象を抱きます。「いつまでも、マイスリーなどの短期睡眠薬に頼るな!」というアメリカFDAのメッセージなのでしょう。では、どうしようか?「じゃあ、最近、新しく登場した睡眠導入剤は、ベンゾジアゼピン系とは全く違う作用機序なので、ロゼレムやベルソムラに変えれば良いじゃないか?」と、減薬、変薬にトライしていますが、中々、難渋しています。生活習慣、他の薬との飲み合わせ、不眠のタイプなどによっては、簡単にいきません。
とは言っても、奇異行動や夢遊病状態は危険なので、どうしてもマイスリーやルネスタを使う場合は、メリットとデメリットを十分考慮して判断する、他の薬剤や薬以外の治療方法を検討することは絶対必要です。私としては、まず急場は少量の薬剤と睡眠衛生教育と不眠の認知行動療法の組み合わせがお勧めです。そのうち睡眠薬がなくなり、毎月のレセプト請求点検で「不眠症」の病名が消えていくことが、何よりもうれしいです。

関連リンク

 FDA requires stronger warnings about rare but serious incidents related to certain prescription insomnia medicines: Updated warnings for eszopiclone, zaleplon and zolpidem

2019年下田光造賞受賞のご報告

カテゴリー: ご挨拶 | 投稿日: 2019-07-19

日本うつ病学会下田光造賞とは?

日本うつ病学会では、下田光造(2)賞を、気分障害の医学の進歩に最も貢献した、賞の名にふさわしい研究論文を執筆した筆頭著者に授与します。

テーマ

「大うつ病に対する新規抗うつ剤の最適使用戦略を確立するための大規模無作為割り付け比較試験」(大うつ病の抗うつ薬を、適切に何を、そのタイミングで、使用すれば、安全かつ効果的に大うつ病を治せるか?)という論文(3)にて、日本うつ病学会2019年下田光造賞を受賞致しました事を謹んでご報告申し上げます。
難しいタイトルですが、SUN☺D研究では、中等度以上の大うつ病治療では、最初の投薬は、どの薬を選び、どれくらいの用量を目標とするのか?
1回目の薬剤で治った人は、そのままで良いのですが、実際には、過半数の人は、改善は不十分なので、その時、次の一手をどうするのか?をどうすれば、改善するのか?
を世界3位の大規模研究で、調査しました。

大うつ病の治療に貢献できること

第1日目のうつ病薬(SUN☺D研究では、ジェイゾロフト(セルトライン)の50mg(1日)と100mg(1日)では、効果は、全く同じでした。50mgで効果が無いのに、増やしていくと、効果が無いのに副作用が増えていってしまうということになる訳です。
これまでの国内外の多くの大うつ病治療の治療指針(ガイドライン)では、「症状が重い場合には、薬を低用量から始め、副作用に注意しながら可能な限り速やかに増量する」「十分な最大投与量を投与する」とされてきました。アメリカ精神医学会の治療指針も、「副作用が許す限り、最大限の用量を使う」とあります。ところが、「抗うつ薬が効かないなら量を増やすべきだ」と考えられてきたが、SUN☺D研究では、逆効果だと示されました。量を増やすより別の薬を試すべきで、それも、治療後3週間で切り替える方が、9週間で切り替える方が10%程度、改善しました。「大うつ病の治療指針の見直しが必要ではないか?」と言う結果でした。3回目以降のうつ病薬の切り替えは、効果が、低くなるという他の研究もあります。
うつ病薬の使い方は、2回目までが、とても重要なのです。

世界3位の大規模研究

世界3位の大規模研究ということもあっって、2013年には、アメリカ臨床精神薬理学会(53th NCDEU Meeting)において、SUN☺D studyの研究計画と進捗については、その発表が187の一般演題の中からベストポスターの1つに選ばれました。
SUN☺D studyは、一般臨床で使用されている抗うつ薬の有用性について明確なエビデンスを求め、我が国のうつ病治療の向上に寄与しようとする我が国初の大型多施設共同による実践的臨床試験で、注目はされていました。http://ebmh.med.kyoto-u.ac.jp/sund/
日本うつ病学会下田光造賞を頂き、その賞の重みを考えると身が引き締まる思いをしておりますが、加藤としては、賞の名誉よりも、この研究がクリニックなど一般臨床の場で日々の大うつ病患者様の治療に役立つことが何よりもうれしいです。普及すれば、多くの大うつ病の患者の幸せに繋がるのではないか?と大きな願いを抱いています。当然、これだけの大がかりな研究が私の能力でできるはずもなく、京都大学の古川壽亮教授、名古屋市立大学の明智龍男教授、国立精神・神経医療研究センター国立精神・神経医療研究センター精神薬理研究部部長の山田光彦先生他エキスパートの先生型が立案、進行、指導されました。そして、大うつ病の治療では薬物療法が大きな柱となるので、これまでの国内外のうつ病治療ガイドラインや現状に疑問を抱き「なんとか少しでも適切に治療効果を高められないか?」という熱意で、国内の9つの大学(京都大学、名古屋市立大学、東京大学、北海道大学、東邦大学、高知大学、広島大学、熊本大学、久留米大学)を拠点として、48カ所のうつ病治療に積極的なクリニックや病院で、2010年から2015年の6年間に渡り、2011人の患者様の協力の下に行われた研究です。あらたまこころのクリニックが、たまたま協力して頂いた患者様が多かったという理由だけで、受賞、表彰されました。思いがけず幸運を頂いた次第です。
今やうつ病治療のバイブルとも言えるMANGA研究などを主導されたうつ病研究のトップクラスの研究者の先生やクリニックなどの「同志」と共に勉強できたことが何よりも財産です。

さらにうれしいこと

さらにうれしいことは、うつ病の治療で問題になる途中で中断するケースが少なかったことです。
治療の脱落が少なかったことです。うつ病が治っていて中断するのなら、良いのですが、未改善のまま中断すると、これは困ったことになります。
藤田医科大学の岩田仲生教授の報告では、「最初の1ヶ月間で抗うつ薬治療から脱落、6ヶ月後には30%まで低下する」。中断する患者様の理由は、「抗うつ薬を服薬したくない」が多く、本当にその通り、もっともなことだと思います。
誰でも「効果のない」「副作用の強い」薬は飲みたくないですね。ところが、SUN☺D研究では、開始後9週で95.8%。これは驚異的なことです。25週で94.9%の患者様が協力して下さった。多くの患者様との協働作業に感謝の言葉もありません。

2030年には健康に悪影響を及ぼす病気の1位に

大うつ病は、今後の日本で増加するであろう様々な病気の中で、2030年には健康に悪影響を及ぼす病気の1位になると予測されています。
日本に、仮に100万人の大うつ病患者様がいらっしゃれば、もし、今より10%改善する方法があるなら、1年間で10万人、10年間で100万人の患者様に役立つのではないか?と夢を持っています。
この論文は誰にでもオープンに閲覧、アクセスできます。グーグル翻訳を使うと、日本語に変換されます。



今後、SUN☺D研究の詳しい内容や、適切な薬物療法を進めるための、うつ病の経過、MANGA研究、Star*D研究、MANGA研究などの薬物療法を分かりやすくご説明して、薬物療法の他に、実際に役に立つ「薬に頼り切らない」有効な認知行動療法、対人関係療法、マインドフルネスなどをご紹介していきたいと予定しています。


受賞式

対象論文、資料

(1)SUN☺D研究について
http://ebmh.med.kyoto-u.ac.jp/sund/index.html


(2)下田光造[1885-1978]は、躁うつ病に特有な病前性格を見いだし、これを「執着気質」と名付け、この気質が躁うつ病の発症に関係すると考えました。「執着気質」は、Shimoda’s Shuchaku-KishituあるいはImmobilithymieとして国際的にも未だに引用されているように、下田学説は日本を代表する研究です。また下田は、脳の病理組織学的研究に従事しつつ、森田療法を高く評価するなど、幅広い視野を持つ研究者でした。
下田光造賞は、気分障害の医学の進歩に最も貢献した、賞の名にふさわしい研究論文を執筆した筆頭著者に授与いたします。
審査対象論文は、選考の前年一年間に発表された論文に限り、応募には、日本うつ病学会の会員歴を2年以上有していることが必要です
(日本うつ病学会ホームページより引用)
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/gakkai/gakkaisyo/shimoda.html


(3)対象論文
Optimising first- and second-line treatment strategies for untreated major depressive disorder — the SUN☺D study: a pragmatic, multi-centre, assessor-blinded randomised controlled trial(BMC Medicine, 2018年、16巻、第1号、103頁 Tadashi Kato,Toshi A. FurukawaEmail author,et al
https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916 018 1096 5



(以下のホームページにお祝いを掲載していただきました)


京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 健康増進・行動学分野
http://ebmh.med.kyoto u.ac.jp/
Dr Tadashi Kato (Aratama Kokorono Clinic) was awarded the prestigious Shimoda Mitsuzo Prize for the primary paper from the SUN(^_^)D trial, published last year in BMC Medicine.



国立精神神経医療研究センター のホームページ 2019年 7月 5日
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakuri/
【受賞】 徳島で開催された第16回日本うつ病学会総会で、BMC Medicine誌に掲載されたSUN☺D studyの主論文が下田光造賞を受賞し、筆頭著者の加藤正先生(あらたまこころのクリニック)が受賞講演を行いました。
加藤先生、おめでとうございます!

日本うつ病学会から表彰、下田光造賞のお祝い多くの患者様からお祝いとお花を頂きました!!

カテゴリー: うつ病と躁うつ病, 研修・学会, 院長のつぶやき | 投稿日: 2019-07-04


写真:加藤正院長先生とスタッフ一同

この度、小生、あらたまこころのクリニックの院長の加藤正が、日本うつ病学会から下田光造賞を受賞することになりました。7月5日(金)の日本うつ病学会総会(下田光造賞受賞講演ならびに表彰式)に参加するため、あらたまこころのクリニックの診療は勝手ながら休診となります。そのことを、通院されている患者様にお伝えしたところ、大勢の患者様からたくさんのお祝いのお言葉やお花を賜りました。面映ゆいやら照れるやら、恥ずかしいやらですが、ご厚意に甘え、いただいたお花をスタッフ一同で囲み記念写真を撮らせていただきました。受賞もさることながら患者様からお祝いをして頂いたことが、何よりもうれしいです。

このような機会に際し、今回行った研究の概要(簡易的な概要)や研究と通ずる当院の治療理念を勝手ながらご紹介させていただきます。なお、学会、研究内容と難しい内容になってしまい、読みづらいこともあるかと存じます。何卒、ご容赦いただけますと幸いです。

 

日本うつ病学会ならびに下田光造賞とは?

 詳しくは、下記のURLよりご確認ください。

日本うつ病学会ホームページ

下田光造賞

 

今回の研究について(SUND研究)

 今回行った研究は“SUND研究(サンディー研究)”というものです(SUND研究について)。京都大学大学院医学研究科健康増進行動学分野教室のホームページにオープンで公開されています)。うつ病治療において、うつ病治療ガイドラインというものがあります。中等度以上の大うつ病治療において、特に急性期にはうつ病に対する薬物治療が治療の大きな柱となりますが、このガイドラインでは“うつ病の薬物療法は副作用に注意しながら最大量まで増量すること”が推奨されています(日本だけではなく、アメリカ、イギリス、カナダなどでも)。

しかし、実際の臨床現場にてガイドライン通りに増量したとしても、患者さんの立場からすると【薬剤は増えるばっかりで改善しない】【副作用も出ることがあるし、つらいことが多い】という印象を持たれ、うつ病治療から脱落してしまうことがあります。特に、急性期に脱落すると、患者様へのご負担はより大きいものとなります。

 こうした問題を日頃から疑問に思っていた「同志」がいました。そこで、京都大学の古川教授を中心に、東京大学、東邦大学、北海道大学、名古屋市立大学、広島大学、高知大学、久留米大学、熊本大学の9つの大学を拠点として、その周辺でうつ病治療に積極的に取り組んでいるクリニックと病院48カ所で、2010年から2015年の6年間に渡り、この問題を少しでも改善すべく調査を行いました。

6年間で、延べ2011人(世界第3位の大規模調査となりました)の患者様にご協力いただきました。また、投薬開始25週間後に、現状を教えて頂いた患者様が94.9%にも上りました。大うつ病治療においては、6ヶ月間は治療を続けることが大事です。これだけ多くの患者様とうつ病治療という協働作業を25週に渡って続けられたことは、当然、治療効果も良くなるので、うれしい限りです。このこと自体が、大うつ病治療のモデルになるのではないか?と期待しています。

 そして調査結果から考えられる結論は、「うつ病の薬(セルトラリン)最大量の量とその半分の量とでは、効果に差はない、つまり、半分量で効果がないなら、やみくもに増量しないで次の一手に移った方が良い」というものです(世界3位の大規模調査かつ25週の追跡率から、統計的にも、かなり重要な結論であると考えます)。

 

SUND研究と当院の治療理念

あらたまこころのクリニックは、「薬に頼りきらない治療」を進めています。「薬に頼り切らない治療」とは、どうしても薬を使わないといけない場合には、最低限の量で適切にうつ病(中等度以上の大うつ病など)の治療に効果的なやり方で、戦略的な薬物療法で乗り切り、改善まで行って、後には認知行動療法などで、慢性化や再発予防を防ぎ、「薬に頼らず」暮らしていくということを目標とする治療です。「薬に頼り切らない」というポリシーは、まさにこの度のSUND研究の目的や結論と一貫して通じるものがあると考えます。あらたまこころのクリニックはこの治療理念のもと、さまざまな活動をこれまでも行ってまいりました。

日本うつ病学会でも、2011年に「認知行動療法に基づく復職支援プログラム(リワーク)の取り組み―個人の課題に合わせたプログラム作り―」を発表。お仕着せのワンパターン化されたリワークプログラムではなく、うつ病で休職されている人が本当に必要とする役立つスキルを高めて、うつ病の改善と復職、再発予防、就労継続を図るというものです。

2014年には、名古屋市瑞穂区医師会休日診療所で、加藤が名古屋市の開業医向けに、「メンタルな病気と抗不安薬・睡眠薬との関係~何故ベンゾジアゼピン系の薬剤を手放せないのか?~」を講演しました。パニック障害や社交不安障害、不眠症の方が、安定剤や睡眠薬の依存になりやすいので、その予防と薬以外の認知行動療法など対策の啓蒙活動をしております。

2018年には、愛知精神医療フォーラム(日本精神神経学会や愛知県内の重鎮の先生も出席される)で、「うつ病、社交不安障害などを持続、増悪させる考え込み(反すう)を改善するチーム医療-「薬に頼りきらない」治療をもとめて」というテーマで講演させて頂きました。

これからも「薬に頼りきらない治療」を治療理念とし、患者様と一緒に治療を進めていきたいと思います。

今後の注目点 ~次の一手を考える、
セカンドライン(切り替え)を上手く工夫する~

 現実には、中等度の大うつ病の人の場合には、役に立つと思われる薬を適正に服用していても治らない患者様もいらっしゃいます。例えばジェイゾロフト、レクサプロ、イフェクサーなどがあげられます。その時々の流行がありますし、確かに役に立つ薬だとは思いますが、それだけ服用していれば治るというわけでもないようです。例えば、アメリカのNIMHが30億円かけて実施したSTARD研究では、最初の薬(ファーストライン)で寛解(うつ病症状の半分改善した状態)するのは、多くても半分と言われてきました。このような場合、次の一手(切り替え、セカンドライン)が必要になってきます。しかし、薬剤を増量するのか?他の薬剤に変薬、または増強するのか?そのタイミングはいつが良いのか?といった疑問が残ります。これらの点は大うつ病治療戦略では、極めて重要です。それは、大うつ病治療において、急性期の治療が後々とても重要になるからです。この点に関しては、また今後お話させていただきたいと思います。

 

まとめ

・MANGA(マンガ)研究で、2010年当時、有効性と忍容性のバランスで最適のうつ病薬とされたジェイゾロフト(セルトラリン)で1日50mgと100mg使用しても、治療効果に差はない。50mgが適正量である。

・最初のジェイゾロフト(セルトラリン)が効果不十分である場合、3週間でミルタザピン(レメロン、リフレックス)に増強又は変薬すると、効果が10%改善する。ミルタザピンもMANGA研究で、有効性は最も高いとされているが、忍容性にやや劣る。

・切り替えは9週よりも3週の方が、治療効果は高い。切り替えは早い時期の方が良いかもしれない。

 

大うつ病の治療における薬物療法において、うつ病の治療ガイドラインよりも低用量で高用量と同等の効果が実証され、改善されない場合には、薬剤を増量するのではなく、切り替え(セカンドライン)を工夫することが副作用を減らし治療効果を高めることが実証されました。これらは、一貫した「薬に頼りきらない」治療戦略を支えるに研究となりました。

 

                                     院長:加藤 正