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公開日: |更新日: 働く人の発達障害

大人のADHDへの取り組み

大人のADHDへの取り組み

■ ADHDとは?

 ADHDとは、「注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorders)」のことです。落ち着きがない、授業中に座っていられないなどのイメージがあるかもしれませんが、大人のADHDでは、仕事でのミスが多い、時間管理が苦手といった症状が目立つことが多いです。
過去の記事でも詳しくお話ししていますので、参考にしてみてください

当院は、児童の発達障害の専門ではありませんが、職場などで見られる困り事に対し、アプローチを行っていきます。

■ ADHDの可能性が考えられるときは

 最近では、ADHDと診断された患者様には早い段階でアトモキセチン、ストラテラやコンサータ(どちらもADHDの症状を和らげる効果があるお薬です)を処方する傾向がありますが、当院では患者様にどんなサポートが必要かを幅広く考えていきます

○当院では、アトモキセチン(ストラテラ)やコンサータなどのお薬を処方する前に、しっかりとアセスメントを行なっていきます

 当院では医師の診察、臨床心理士による面接、ウェクスラー式成人知能検査(WAIS:ウェイスと読みます)、その他質問紙検査などを組み合わせて診断を行っていきます。

○それぞれの患者様に合った治療方針を立てます

 ADHDの治療は、すぐにコンサータやストラテラのようなお薬を使うことではありません。もちろんお薬で症状を和らげることも大切ですので、必要な患者様には治療初期からお薬を服用してもらうこともあります。
 しかし、依存性などのことを考え、薬だけに頼らず、基本的にはまず患者様の特徴を知り、生活の工夫や環境の調整を行って困りごとに対処することを目標とします。

■ WAISとは

 先ほど診断のお話のところでご紹介したWAISは、患者様の特徴を知るために必要不可欠な検査です。今回はそのWAISについて詳しくご紹介していきます。

WAISとはよく使われる心理検査のひとつで、その人の知能指数(IQ)を算出することができます。知能指数と聞くと「頭の良し悪しを見られるのかな?」と嫌な印象を抱かれる方もいるかもしれません。
しかし実際には、IQの算出はもちろん、その他にもっと細かく分類した能力の指数を測ることができます。たとえば、「状況を読み取る力はある反面、言葉で説明することが苦手」「知識はたくさんある一方、非常に忘れっぽい」など、その患者様の特徴を細かく、具体的に知るためにWAISを行うのです。

■ WAISを行うメリット

 WAISを実施する一番のメリットは、患者様の得手・不得手が具体的に分かることです。日常生活や社会生活をおくる中で困難を感じているけども、なぜそうなっているのか分からず、解決法が見出せないまま苦しんでおられる方がたくさんおられます。
その中には能力的なアンバランスさが隠れている人も多いのが実際です。当院ではそのアンバランスさを分析し、患者様に合った援助法を考えます。患者様に自分の苦手なところを受け入れてもらい、得意なことを活かすための道具としてWAISは役立ちます。

■ WAISで分かること・分からないこと

 WAISの結果からその人の様々な情報を得られることは事実ですが、全て分かるわけではありません。WAISで分かること、分からないことを簡単にまとめてみました。

分かること

  • どんなことが得意でどんなことが苦手か
  • ADHD傾向や他の障害の傾向が見られるかどうか
  • コミュニケーションの特徴や問題への対処の仕方

分からないこと

  • ADHDかどうか
    →WAISだけで確定はできません
  • なぜその領域が苦手なのか理由を断定すること
    →あることが苦手なのがADHDによるものなのか、違う原因によるものなのか、WAISだけでは分かりません

当院では、職場などで見られる困り事について、WAISの結果を含めたさまざまな情報を踏まえて判断し、その方にあったサポートができるようつとめています。
次の記事で、具体的な例を挙げてみたいと思いますので、関心のある方は、ぜひ読んでみてください。

(心理士・円増、関口)

関連記事:ADHD(注意欠如・多動症)とは?具体的な症状や特徴、診断の流れなど網羅的にご紹介

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。